テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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LINE１２７４

第1話 - あ

2023年10月30日

#スカッと

タナカトシキ

ハル

なあ、トモヤ

ハル

お願いがあるんだけどさ

トモヤ

何？

ハル

昨日の残業で俺が終えれなかった書類、完成するの手伝ってほしいんだ

トモヤ

は？なんで？

トモヤ

無理に決まってるだろ

トモヤ

こっちだって自分の仕事残ってるんだよ

トモヤ

自分のことで精いっぱいだっつーの

ハル

頼む、って

ハル

全部やってくれとは言わないから、少し手伝ってくれるだけでいいんだよ

トモヤ

何で、俺に頼むわけ？

トモヤ

俺、今日高校の時の友達と飲みに行く約束してんだよ

トモヤ

他にもやってくれる人は、いるんじゃないの？

ハル

トモヤがプロジェクトメンバーの中で一番、俺がやってる業務に詳しいじゃん

ハル

だから、今やってる内容を一番分かってくれると思ったんだよ

トモヤ

俺は、残業なんてしない主義だから

トモヤ

残業したくないから、効率よく仕事進める工夫してるんだろ

トモヤ

それくらい読み取れよ

ハル

読み取れなくてわるかったな

ハル

頼む相手を間違えたわ

トモヤ

そうだな

トモヤ

だいたい、正社員続けながらパン屋の開業なんて、無理に決まってるだろ

トモヤ

いつまでもそんな馬鹿らしい夢見るのやめろよ

ハル

俺は、バカらしい夢なんて思ってない

ハル

本気で、やり切りたいと思ってるんだよ

トモヤ

でも、実際のところやり切れてないじゃん

トモヤ

しまいには、本業の方の仕事を間に合わせれないから、

トモヤ

同僚の俺の力を借りようとしてる、ってことだろ？

ハル

それは...そうだけど

ハル

仕事仲間なんだし、たまには、助けてくれたっていいじゃないか

トモヤ

助けるとか...嫌いなんだよ

トモヤ

そういうの

トモヤ

だるいし、自分のことは自分でやりたいし

トモヤ

あんまり人の仕事に介入して、面倒なことに巻き込まれたくないんだ

トモヤ

だって、納期に間に合わなかったら俺の責任にもされるじゃん

ハル

もともとの仕事は俺のものなんだから、遅れてもお前のせいにはしないよ

ハル

絶対に、約束するから

トモヤ

そうだとしても、無理だ

トモヤ

自分の本業に専念できねーんだったら、パン屋なんか諦めろよ

トモヤ

中途半端にするのが、一番いけねーだろ

ハル

でも、せっかくここまで積み上げてきたんだ

ハル

ここであきらめるわけには行かないんだよ

トモヤ

婚約者に逃げられたから、それで見返してやろうとでも思ってんだろ？

ハル

は？別にそんなんじゃねーよ

トモヤ

でも、借金した、って言ったら3年も付き合ってた彼女に逃げられて、

トモヤ

相当落ち込んでたじゃん

トモヤ

まあ、さすがに1000万の借金は、いきなり言われたら受け入れられねーよ

トモヤ

お前も酷いこと言うよな～信頼できるパートナーにさ

ハル

俺も、あの時のことは本当に反省してるよ

ハル

でも、パン屋開業にはどうしても必要な資金だったんだ

ハル

ローンを組んで、あと知り合いのつても借りて援助してもらって...

ハル

必要なものは設備は安くしてもらって...

ハル

俺なりに費用抑えて、それでいきなり伝えたからびっくりしても仕方ない

ハル

呆れられたのは、俺も納得してるから今頃掘り返すな

トモヤ

納得してるんだ（笑）

トモヤ

それなら、よかったわ

トモヤ

自分のポンコツなミスに気づけてないようだったら、教えてやんねーとな、と思ったからさ

ハル

やっぱり...お前に頼むのは間違いだったわ

ハル

自分でやるから、俺が言ったこと忘れて

トモヤ

最初から、そのつもりだから安心しろよ

トモヤ

じゃあな

～1か月後～

トモヤ

なあ、ハル

トモヤ

今度の会社の飲み会、お前も行くだろ？

ハル

いや、俺は行けない、って断ってあるよ

トモヤ

え？なんで来ねーの？

ハル

2週間後に、週末のマルシェで見せだすんだ

ハル

そこの売り上げで今後の店の開業のリサーチしたいから、今はその準備で追われてる

トモヤ

へーマルシェなんて出すんだ

トモヤ

どうすんの？全然売れなかったら？（笑）

トモヤ

お客さんほぼ来ないんだったら、俺が行ってやろーか？（笑）

ハル

余計なお世話だよ

ハル

気にしなくていいから

トモヤ

またそういうこと言って、強がってさ～

トモヤ

内心、ビビってんだろ

ハル

ビビってねーよ

トモヤ

婚約者にも逃げられて、特に才能があったわけでもなく、趣味から始めたパン屋だろ？

トモヤ

正社員しながら継続できるわけねーんだから

ハル

俺は、絶対に成功して見せるから

トモヤ

まあ、当日がどうなるか...楽しみだな

ハル

2日間あるんだ

ハル

そこで結果出なかったら、俺もさすがに今後のこと考えるよ

～マルシェ1日目の夜～

トモヤ

なあ、今日の売り上げ、いくらだったの？

トモヤ

会場着いた時は、マジでビビったよ

トモヤ

あんなガラガラな様子だったら、全然儲かってないだろ？（笑）

ハル

今日は、あんまり売れ行きは良くなかったけど

ハル

まだ初日だし、明日もあるんだ

ハル

チャンスはまだあるから

トモヤ

ほぼ望みはないって思った方がいいんじゃないの？

トモヤ

やっぱり、飲食店の経営は才能とか技術がない素人には難しいんだよ

トモヤ

諦めろ

ハル

挑戦も苦労もしてないやつに、俺の人生のこと決める権利はないだろ

トモヤ

アドバイスしてやってるんだろ

トモヤ

ありがたく受け取れよ

トモヤ

親にも反対されて、恋人にも逃げられて...

トモヤ

後ろ指さされた奴に、夢は追いかけられないって

ハル

それでも、俺は絶対に成功する、って信じてる

ハル

とにかく、明日があるから

~マルシェ2日目～

トモヤ

おーい、ハル

トモヤ

どうだった？

トモヤ

人生の分岐点となる2日目のマルシェは？

ハル

昨日とほとんど変わらなかった

トモヤ

やっぱり！

トモヤ

俺が言ったとおりになっただろ～？

トモヤ

お前には無理だったんだって

ハル

でも、俺なりに努力はしたし、2日間しっかりやりきれたと思うよ

ハル

だから、別に後悔はしてない

ハル

俺、挑戦できてよかった、って思ってるよ

トモヤ

まあ、いい人生経験にはなったんじゃね？

トモヤ

会社の奴らには恥しかさらさねーと思うけどな

トモヤ

まあ、そこらへんは覚悟しとけよ？

～2週間後～

トモヤ

おい、ハル

トモヤ

部長から聞いたけど、お前今月で会社辞める、って本当かよ？

ハル

うん、本当だよ

トモヤ

は！？何でだよ！？

トモヤ

急すぎるだろ

トモヤ

こんな繁忙期に辞職届出すとか、まじでありえねーわ

トモヤ

少しは空気読めよ！

ハル

俺、この前のマルシェで俺のパン屋開業を手伝ってくれる、って言ってくれる人と会ったんだ

トモヤ

え？

トモヤ

でも、1日目も2日目も、ほぼ収穫はなかった、って言ってたじゃん

トモヤ

どういうことだよ？

ハル

実は、1日目も2日目も連続で来てくれたお客さんが1人だけいてさ

ハル

俺が焼いた食パン食べてくれて、その時アドバイスくれたんだ

ハル

それで、1週間前に、店の経営の援助をするから、

ハル

まずはうちで働いてみないか？って言ってもらえたんだよ

トモヤ

そんな話されたなんて、聞いてないんだけど？

ハル

トモヤに話しても、どうせまた「ウソだろ？」

ハル

とか言って信じないと思ったから

ハル

そんなモチベ下げるような言葉しか言えねー奴に、俺がやろうとしてること言わねーよ

トモヤ

そんな強がってさ、どうせその援助してくれる人もプロでも何でもないアマチュアだろ？

ハル

いや、結構有名な人だよ

ハル

コンテストで優秀賞を受賞したことがある人なんだ

トモヤ

え！？マジで？

ハル

マジだよ

ハル

その人は、食パンを専門にしてる人で、すごいこだわりがある人なんだ

ハル

それで、「修業したあとに、新店舗開拓に協力するよ」って言われてさ

ハル

迷わず、その誘いを受けた、ってわけ

トモヤ

お前の才能のどこがすごいと思ったのか...その人本当に職人なのかよ

ハル

その人は、俺の焼いた食パンを食べてくれて、

ハル

もう少し発酵をしっかりして、資源にこだわったら良いものができるよ、って言ってくれたんだ

ハル

俺の焼いたパンをしっかり味見して言ってくれたことだし、信用してるよ

トモヤ

そんな夢持たせるようなこと言っておいて...実は詐欺だったりして？

トモヤ

もしそうだとしたら、1000万の借金に加えてまた騙されることになるな

ハル

ちゃんとその人の店にも行ったから、詐欺ではないよ

トモヤ

え？もうそんなとこまで進んでんの？

ハル

5日前くらいに、その人が経営する店舗に行ってみたら、朝からすごい行列でさ

ハル

地方のパン屋なんだけど、地元からは結構人気があるんだって

ハル

都内からその人のパンを買うためだけに来る人も、結構いるみたいだよ

トモヤ

へ～そうなんだ

トモヤ

まあ、ハルにはそこまで行くのに、10年はかかるだろ

トモヤ

職人になっても、その才能を本当に使えるようになるにはそれくらいかかるんだから

トモヤ

そしたら、ハルの場合は倍の15年とか、20年とかになるかもしれないな（笑）

ハル

絶対に、俺は5年で店を出して見せるし、地元でも有名なパン屋の店を作ってみせる

ハル

来月から早速動き出すから、もう引っ越しの準備も進めてるし

ハル

忙しいから、あんまり連絡してくるなよ

トモヤ

俺は、お前のパン屋なんて絶対に売れないと思うけどな

トモヤ

まあ、せいぜい無駄な努力、応援してるよ

～1か月後～

ハル

トモヤ

ハル

今朝のニュース、見てくれた？

トモヤ

え？何のニュース？

ハル

俺さ、この前出たパン職人のコンテストで、優勝したんだ

トモヤ

は！？

トモヤ

おい、さすがにそんなウソ通用しねーからやめろよ

ハル

本当だよ

ハル

ネットにも流れてるから

トモヤ

え...本当にマジじゃん

ハル

だから、言ったじゃん

ハル

それで、パン屋開業資金の4000万をもらうことになってるんだ

ハル

これで、やっと夢が叶いそうだよ

トモヤ

いや...ちょっと待てよ

トモヤ

いくら何でも、話が進みすぎだろ

トモヤ

だって、まだ弟子入りして1年しか経ってないんだろ？

トモヤ

そんなんで開業なんて、どうかしてるって

ハル

俺は、みんなが週末にどこかに出かけている間も、

ハル

しっかりと将来のこと考えて、パンを作る練習をしてたんだ

ハル

遊べなかったし、休む暇もなかったけど、

ハル

自分の夢を叶えるために、精いっぱい努力してきたつもりだから

ハル

それが、今回実になった、ってことだろ

トモヤ

どうせ、お前が開いた店なんてすぐにつぶれるに決まってるだろ

トモヤ

自分の店を持つことがどんなに大変なのか...甘く見るんじゃねーよ

ハル

自分の店を持ったことがないくせに、なんでそんな断言できるんだよ？

ハル

そんな根拠、どこにあんの？

トモヤ

それは...なんとなくだよ

ハル

じゃあ、そのなんとなくの頼りのないトモヤ予測、俺が裏切って見せるから

ハル

俺、衝動的に動いちゃうクセはあるけど、決めたらもう突っ走るから

ハル

そういうことできないチキンなトモヤと一緒にしないでくれよ

トモヤ

いきなり店の開業までできるから、って...随分偉そうな口叩くじゃねーか

ハル

今までの仕返し？ってことで

ハル

俺も、お前に散々なこと言われたしね

ハル

まあ、もう覚えてないのかもしれないけど

ハル

じゃあ、トモヤは会社頑張れよ

～後日談～

ハル

その後、俺が開業したパン屋は地元でも有名なパン屋になり、

ハル

都内から俺のパンを買うためだけに、わざわざ来てくれるお客さんが大勢できました

ハル

また、修業時代に俺の夢をずっと応援してくれていた店員の女性と付き合い始め、

ハル

新しいパートナーにも出会えて、仕事も恋も順調に進んでいます

ハル

これからも、自分の店をより大きくしていくために努力していきたいです

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タナカトシキ

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