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ジョングクの登場により俺の靴は無事だったのだけれど

グク

ちょっと来て。

ジミンの待つ個室に戻るのかと思いきや、直前でそのルートを外れた。 肩に置かれた手はそのままで、とりあえずジョングクのその力に従うしかなかった。

思いの外、広い店内だった様で他の客がいるテーブルを何席か通り過ぎて来た 誰もいないテラス席に。

なんでこんな場所知ってるんだろう、なんて疑問を抱く前にジョングクの手が肩から離れて

グク

ホソギヒョン見る目なさすぎ。

"呆れ"を思いっきり表した溜息と一緒に言った。

グク

あんな底辺なことしか言えないやつにヤらせてたとか、
ほんとありえないから。

ホソク

そんなの、
わざわざ言われなくてもわかってるんだけど。

俺だって店長がまさかここまでのクズだったとは知らなかった。 だから分かってるって言ったのは言い訳でしかない。

でも、今ここでジョングクにそれを説教されても、既にあいつとの事は過去の事。 今さっき何かを言われたとしてもただ怒りになるだけで、恋愛感情の欠片も残ってない。 悲しくもなんともない。 ゼロじゃなくマイナスの存在。

夜の風が冷たく通り過ぎて肩を摩った。

グク

ほんと、呆れる。

ボソッと独り言のように明後日の方を向いてるジョングクが呟いた。

呆れるって、俺に?か。

そんなの言わなくたってジョングクの表情を見れば分かる。 さっきから溜息を何度も吐いて、目を細めたり眉を顰めたり。 呆れさせてすみませんね、と思いながら少し冷えた自分の肩をまた摩る。

グク

自分に呆れてる。

ジョングクの匂いが俺の肩を覆った。 ジャケットだ、ジョングクの。

それからその理解不能な発言。 俺じゃなくて、自分に? 徐にジョングクの顔を見上げると"男"の目が俺を見下ろしていた。

ジョングクの黒い髪と俺の黒い髪が風に少し靡いた。 その風のせいでジョングクの目が見えなくなったと思ったのだけれど、違った

グク

ヒョンのことが本気で好きな自分に呆れてる。

ジョングクが俺を抱き締めたから見えなくなったのだ。

今のこの状況もジョングクのいつもの悪い冗談か悪戯なのだろうか。 じゃなければ困る。 だって相手がジョングクだから。

俺の相手関連に対して散々嫌味を言ってた理由はこれのせいだった? だとしたら自惚れでも何でも納得がいく。 ジミンといるのに突然訳の分からない連絡をしてきたり、しきりに何かを確かめようとしたり。

俺のことを好きだと言っても、きっと出会った時からじゃないはず。 "いつの間にか"なんだろう。

俺がジミンを"いつの間にか"好きなように。 でもなんで。 なんでこうなっちゃったんだろう。

グク

ヒョン。

ジミン

起きそうにないね。

グク

俺運ぶからヒョンは帰って。

ジミン

じゃあカバンだけ持ってくよ。

意識の片隅でそんな会話が聞こえた。 それから身体がゆっくりと揺れて'意外と重'とか聞こえた気がして、失礼で嫌な夢だ。

ふわふわと揺れるのが心地良くて余計にずるずると引き摺られるように深い眠りに落ちていく。 中途半端だった意識が遠のいて行く感覚が気持ちが良い。

ホソク

…好き。

温かい、暖かい。 俺の好きなジミンの手みたい。

ホソク

寒っ…

身震いする寒さに目を開けた。 それから酷い頭痛。 状況がよく分からない。

眩しいからとりあえず朝なのだろう。

ホソク

クシュンっ

数分ぼーっとして、先に出たのは昨日からの記憶を辿る事よりも盛大なくしゃみだった。

ホソク

…風邪だ。

異常な寒さにくしゃみに頭痛。 間違いない。

パーカーを脱ぎ捨てて上下真冬素材の部屋着に着替えて靴下まで履いた。 それから髪を適当に括り怠い身体を何とか動かしてリビングへ。

グク

何その格好、今日18℃まで気温上がるよ?

先に起きていたジョングクがソファにいて怪訝な表情で言った。 コーヒーを飲んでいるのか良い香りがしたけれど、ジョングクの言葉もコーヒーの良い香りも無視した。

ホソク

風邪ひいたから寒いの、ほっといて。

この足で冷蔵庫に向かって、水と薬を持ってすぐ部屋に戻ってまた寝ようという考えだ。

力の入らない手で水を手にするとそれが冷たくてまた悪寒が走る。 これは熱が上がりそうな予感。

冷蔵庫を閉めて振り返るとジョングクが立っていて気配を感じなかったから驚いて、咄嗟に肩が竦んだ。

グク

ごめん、俺のせいだ。

"何を言ってるんだろう"

ジョングクが悲しそうな顔でそんな事を言うから"何を言ってるんだろう"って一番最初にそれしか思い浮かばなかった。 熱で頭が回ってない。

グク

昨日外で話してたから、
多分それのせい。

でもジョングクがそう続けた事で、回ってない頭でも昨日の出来事が思い出されて急に気まずくなる。

"ヒョンの事を本気で好きな自分に呆れてる"

こんな時に思い出すようなものじゃないのに。 迂闊に思い出してしまった、ジョングクの言葉をきっかけにして

ホソク

違うから、ただ俺の体調管理の問題。

頭からそれを取り払う様にジョングクの言葉を否定した。 どの言葉を"違う"と言ったのかはジョングクには伝わっていないはず。 それに、兎に角今は一刻も早く休みたい。

グク

俺、今から仕事なんだけど、
1人で平気?

俺がふらつきそうになるとジョングクの手がそれを支えようと機敏に動く。

ホソク

平気、別に寝てるだけだから、
あとほんとに気にしないで。

別に避けてるわけじゃない。 気まずさはあるが、そんな事でジョングクの事を避ける様な事は出来ない。 どんな感情であれ、俺の中でジョングクの存在が重要なのは変わらない。

リビングにジョングクを残して自室に来て即風邪薬を流し込む。 空きっ腹に良くないなんてこの際言ってられない。

その後はただ勢いよく布団に倒れ込んで顎まで布団を被って丸くなった。 頭が痛い、寒い、寝たい。

ジミンに会いたい。

グク

ヒョン、これ。

ジョングクの声が聞こえて目を開けるとベッドサイドの水の横にスポーツ飲料が置かれた。

グク

汗かいたらこれ飲んで、あとなんかあったら連絡して?
欲しいものとか買ってくるから。

見下ろすんじゃない。 わざわざベッドに浅く腰掛けてまで甲斐甲斐しいったら。 可愛いらしいジョングクは久しぶりで、手を布団から出して見慣れたタトゥーの入った右手を握った。

ホソク

優しいじゃん、いつもと違って。

グク

いや、いつも優しいし。

ジョングクが手を握り返してきて、小さく笑ったから俺もそれに合わせて笑った。

冗談な言い合いにホッとしたのか、薬の副作用なのか。 ジョングクの手を握ったまま眠りに落ちた。 次に目が覚めた時は風邪が治ってます様に、なんて事も考えられないくらい落ちるように。

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