テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

期限付きの恋心

一覧ページ

「期限付きの恋心」のメインビジュアル

期限付きの恋心

7 - 第7話『今日だけの、ふたりの文化祭』『からかい返し』

♥

203

2025年08月02日

シェアするシェアする
報告する

🎪『今日だけの、ふたりの文化祭』🌷

🍫

今日、病院イベントあるんだって

えとさんがそんなことを言ったのは、朝のことだった。

廊下には、小さなポスター。 看護師さんたちが作った、手作りの“ちいさな文化祭”

射的にぬりえに、ジュースくじ。 どれも子供向けっぽいけど、えとさんが楽しそうにしてる顔を見たら、 僕もついて行くしかなかった。

🍫

プラネタリウムもあるって。ね、行こ!

そんなふうに袖を引かれたら、断れないだろ。

最初はジュースくじ。 小さなボックスに手を入れて、缶のプルタブを引く

🍫

うわ、ピーチソーダだ。…懐かしい

えとさんはそう言って、ストローをさして僕に差し出した。

🍫

ひと口、飲んでみて

🌷

僕だけ?…いいの?

🍫

いいよ。っていくか、私も飲むけどね

🌷

…あぁ、なるほど

僕はその意味に気づくまで、ほんの数秒かかった。

🌷

それって、間接キスってやつじゃないの?

🍫

うん。気づくの、ちょっと遅かったね

そう言ってえとさんは目をそらす。 頬が少し赤い。

僕はそっと缶を受け取った、何気ないふうを装ってひと口飲んだ。 口の中に、ほんのり甘い桃の炭酸が広がる。

🌷

えとさんの気配がする

🍫

なにそれ、バカっぽいw

🌷

褒め言葉として受け取っとくね

えとさんはむすっとした顔で缶を取り返したけど、 その目は、どこか楽しそうだった。

塗り絵をしたり、風船をもらったり、お互いの似顔絵を描いて大笑いしたり。 ほんのささいなことなのに、ずっと心に残りそうだった。

そして最後は、プラネタリウム。 部屋の天井に投影された星たちは、手が届きそうなくらい近くて。

🍫

……このまま、時間がとまったらいいのに

えとさんの言葉に、胸の奥がじんとした。

🌷

それ、僕のセリフなんだけどな

🍫

え、先に言っちゃった

🌷

ま、今日は譲っとくよ

🍫

ふふっ、やさしいじゃん

🌷

だろ?

えとさんは静かに笑ったあと、そっと僕の手を握ってきた。 ちょっとだけ、指が震えてた。 けど、僕は何も言わなかった。

ただ、その手を握り返しただけ。

帰り道、えとさんがぽつんとつぶやいた。

🍫

ねぇ…また来年も、文化祭いけるかな

🌷

行けるさ。僕たちなら

🍫

ほんとに?根拠あるの?

🌷

根拠?うーん…

🌷

間接キスした仲だから、たぶん運命

🍫

それ、根拠って言わない

🌷

でも、ちょっとだけ嬉しそうにしてるよね?

🍫

してないし

えとさんはふいっと顔を背けたけど、耳まで赤くなってた。

今日だけの、ささやかな文化祭。ただそれだけなのに、 僕にとっては、たぶん、これからもずっと忘れられない一日になる

🎈『からかい返し』🌷

🍫

今日楽しかったね

えとさんがぽつんと呟く

🌷

うん。えとさんが笑ってるの、たくさん見れた

僕はそう答えた。本当の気持ちだった

🍫

ふふ。なおきりさんって、ほんと素直

🌷

え?それ今、からかってる?

🍫

まさか。…ちょっとだけ

僕は苦笑して、軽く頭をかいた。 こうして隣を歩く時間が、こんなにも心地いいなんて、昔は思いもしなかった。

それなのにーー

🍫

じゃあ、仕返ししなきゃだね

🌷

え?

言葉の意味を聞き返すよりはやく、えとさんが僕の腕をそっと掴んだ

🍫

なおきりさん、目つぶって

🌷

え、なんで?

🍫

いいから、ちょっとだけ。お願い

まっすぐ見つめられると、断れない。 僕は静かに目を閉じた。

そしてーー

ふわっと、頬にあたたかい感触が落ちた。 ……え?

次の瞬間、えとさんの顔がすぐそばにあった。

🍫

……からかいの、仕返し。ね

そう言って、ふわっと笑う。 僕の頭は真っ白だった。 顔が、じわじわと熱くなるのがわかる。

🌷

え、ちょ……それ、ずるいでしょ……

🍫

え?なおきりさん、顔、赤い

🌷

いや、これは、あの……

🍫

ふふ、かわいい

完全に、やられた。 いつもは僕が調子に乗ってからかってるのに、 まさか自分がやり返されて、こんなにまともに照れるとは。

🌷

……えとさん

🍫

ん?

🌷

ずっとずっと、僕のこと、からかってくれていいよ

🍫

……ふふ。じゃあ、覚悟してて

帰り道の夕焼けのなか、 えとさんの笑顔は、少しだけ泣きそうに見えたけど、 僕はそれをそっと心にしまった。

この作品はいかがでしたか?

203

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚