校舎裏の思い出

解散後 ，階段を降りて　．

と ，幼馴染の発言を 何度も脳内再生すれば　．

力んだ体を落ち着かせる為に ， 階段の手すりに身を寄せる　．

俺は ，幼馴染のあんな目付きを 初めて見た　．

普段なら丸っこい大きな瞳だが ．

あの時だけは ， 自分の意思を通すという思いが その瞳に現れていた　．

…… 不安だ　．物凄く心細い　．

一度苦しい思いをしたからなのか　．

【　ライバル　】が出来たと改めて 感じたら ，手足が震えてくる　．

そんな事を言いながら目を瞑り　．

ゆっくりと ，君と出会った時から 最近の出来事までを再生した　．

初めて出会った時　，緊張しながら 自己紹介をした天然な君　．

普段は凛としてるのに　， 飯を食う時は小動物みたいな君　．

たまに見せてくれる　， 温かみの笑顔をしてくれた君　．

…… 少し揶揄っただけで 耳まで真っ赤になる可愛い君も ， よく印象に残っている　．

『《　最善な選択　》は ，何だろ ．』

俺の名前はたっつん　．

この学校に通っている ，高校三年生 ．

…… んで ，よく校舎裏で話す奴が 居らんから ，少し困惑している ．

別に約束して来ている訳ではない　．

俺が自主的に来ているのだ　．

…… だからなのか　， こ - ゆ - 不在の時でも来てしまう　．

俺は ，ソイツと話すと 何故か心がよく落ち着く　．

だから喋れる機会を 多くしたいんやけど ，

相手側はそれをあまり好まない　．

俺は昔から ，他より顔が良かった　．

街中を出歩けば　……

…　とまぁ ，すれ違う人達を 振り返らせる程に　．

中学の時　， それで俺はつい浮かれていた　．

今と大して変わらず能天気な俺は ， そんなくだらない事を考えて　．

周りの視線を集めれるから　， 出掛けるのが好きになっていた　．

そんなある日 ，俺は無我夢中で歩き ， 一度だけ迷子になった時があった　．

そこは路地裏　．

昔から人通りの少ない所は行くなと 両親が言うので ，足を踏み入れた事は 無い道　．

…… だが ， こん時の俺は思春期真っ只中 ．

非常に好奇心旺盛な時期だ　．

親の言いつけよりも　， 目の前の＂ダンジョン＂を見れば　， 行きたくなるのは世の情け　．

そう言い聞かせれば ， 俺は路地裏の中を進んだ　．

奥に進めば進む程　， その道には太陽光が届かない　．

流石に気味が悪いと感じたのか　． こん時の俺は戻ろうと振り返った　．

____ だが ，そこでふと　， 人の声がする事に気が付いた　．

辺りを見渡しても人の気配は無い　．

けど声は何処かから聞こえてくる　．

… 気になり始めた俺を止めれる人は 当然ながら居るはずがない　．

先程の不気味さがあって不安だと思う 気持ちは何処かに行ってしまった　．

声のする音が大きくなって来た時　．

俺の中の何かが　， その声に聞き覚えを持っていた　．

日常的によく聞く声　．一体 ， 話しているのは誰なのだろうか ．

俺は　，そこに顔を覗かせた　．

…… 俺は ，言葉を失った　．

隣にいるブレザ - の服を着ている者は 恐らく高校生だろうか　．

そして　，その隣に居た学ランは　___

____ 俺が　， 《 親友だと思っていた奴 》だった　．

心臓の音が聞こえ ，呼吸も荒く　．

アイツの親友の中で　， 眼帯を付けているのは恐らく俺だ　．

油断していた　．身内なら　， 全員安全な人だと錯覚していた　．

…… 裏切られたのだ ，俺は　．

悍ましさで吐き気がする　．

俺はこの場に居ちゃ駄目と判断し　， すぐさま来た道を戻った　．

あの後俺は　， ソイツとは距離を置いた　．

たまに遊びの誘いが来たが　， アレを見れば前と同じ様な接し方は 出来なくなる　．

俺は断り続け　， 気付けば関係は途絶えていた　．

以降　，俺は周りを警戒していた　．

一時期は家族にすら疑いの眼差しを 掛けていた時もあった　．

この高校に入学したばかりの頃　．

『　誘うなら ，よそでやれ ．　』

『　ハッキリと言えれば　．　』

…… お前はきっと　， あの時の事は覚えてないやろ ．

せやけど　．

その一連の流れが　， 積極的な今の俺を作ってくれた　．

… まぁ ，まだ全員に対して 心が開いた訳ちゃうけどな　．

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