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侑李

雫ちゃん、帰ろ!

チャイムが完全に鳴り止む前に 侑李が私に必ず声を掛けてくる。

これがいつからかの日課だった。

おっけー

毎日この瞬間、 こぼれ出しそうな笑顔を必死で隠して 侑李の顔も見ずただの相槌の如く応える。

それが“友達”だから。

財布と携帯と ほんの少しのノートだけ入った 軽い鞄を肩に掛けて 侑李の前を歩いて一緒に教室から出る。

交わす会話に中身なんて無いけど それでも私の脳内はキラキラと輝いて うるさいくらいだった。

本当は侑李の後ろを歩いて、 その後ろ姿を見つめていたい。

だけど、出来るだけ自然に、 出来るだけ“友達としての自分”を 客観的に想像しては 自分の行動を決めるようにしていた。

靴箱まで来ると自分の靴を手に取って 地面に軽く落とすように指から離した。

男子

あの…

地面に着地した靴を見ていた視線は 聞き慣れない声の方向へ反射的に向く。

そこには“同じ学年”以上の情報を 持ち合わせていない男子が立っていた。

はい?

なんとも間抜けな声で応えてしまう。

男子

皆川(みなかわ)さん、
今ちょっと良いですか?

えっと…
これから友達と帰るから…

そう言いながら侑李を見ると ただ静かに私の前にいる男子を見ていた。

侑李

男子

あ、そっか。明日は…どうかな?

明日?明日も…

そう言い掛けた瞬間

侑李

今日は先帰るから、
話しておいで!

私の言葉を遮るように、 笑顔で侑李が言った。

え、でも…

侑李

大丈夫だから!
私たちは、ほら、
いつだって帰れるし。
じゃあ、また明日ね!

そう言うと、 サラサラと髪の毛が鳴るように背を向けて 侑李は私から離れていく。

侑李をただ見つめたまま、 届いたか分からないほどの声で

じゃあね…

と呟いた。

出ようとした校舎だったはずなのに、 出した靴を靴箱に戻し 名前も知らない男子の後ろを 無言で歩くこと数分。

気がつくと誰もいない教室に 辿り着いていた。

その教室を見て、 目の前にいる男子が 隣のクラスの生徒なのだということに 初めて気がついた。

男子

ごめん。

突然の謝罪に反応して、目を見つめる。

…?

男子

いや、友達と帰ろうとしてたのに
悪かったなって…。

あー!いいよいいよ!全然大丈夫。

それ以外に 何か気の利いた返しが出来れば良かったが、その一言が限界だった。

男子

この空気に名前があるなら なんて付けるだろう。

身体の中がギュウッと締め付けられるような、ゾワゾワする緊張感が教室に流れ

窓の外から 微かに聞こえてくる遠くの笑い声が、 この場の静けさを、より際立たせていた。

男子

あのさ…

うん…

男子

あの…

男子

俺のこと知ってる?

………。
あー…。

男子

あー…(笑)

ごめん…名前が…

男子

だよね(笑)大丈夫!
話したことないしな(笑)

本当ごめんね。

男子

いや、良いんだよ!
本当に気にしないで!(笑)

そう笑顔で話す名前も知らない男子は よく見ると清潔感のある整った顔立ちで 笑顔は可愛らしかった。

男子

あー!なんか、あれだな、
時間ばっか取っても仕方ないな!

そう言って、意を決した様に 勢いよく私に一歩近づいてきて、

彼の足にぶつかった机が ガタッと音を鳴らした。

男子

俺。皆川さんのこと…
好きなんだ。

…!

あぁ、またこの感覚だ。

とにかく肺の辺りが、 ギュウっと締め付けられて息苦しい。

教室内の酸素がさっきよりも薄く感じた。

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