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ガタッ。
咲菜子
物音に目を覚まして時計を見ると、午前二時を指していた。
咲菜子
咲菜子
この家に住んでいるのは私とお父さんの二人だけだ。
お母さんは、一年前に出ていってしまったから……。
両親の間に何があったか私は知らない。
「咲菜子はお父さんと一緒にいた方がいい」
そんな納得いかない説明、ある?
私は、お父さんにもお母さんにも腹を立てていた。
咲菜子
咲菜子
咲菜子
咲菜子
咲菜子
部屋を出ると、二階の廊下は真っ暗だった。
咲菜子
住み慣れた我が家なので、電気をつけなくても躓かず一階まで行ける。
そろりそろりと、音を立てないように階段を下りた。
咲菜子
一階のリビングルームに灯りがついているのが見えた。
咲菜子
いるはずのない人物の姿に私は固まってしまった。
咲菜子
咲弥子
咲弥子
咲菜子
咲菜子
咲弥子
咲弥子
咲弥子
咲菜子
お母さんが家にいる。 喜ぶべきことなのに、私は恐怖を感じていた。
──この人、お母さんじゃない。
咲菜子
咲菜子
咲菜子
咲菜子
咲菜子
咲菜子
困惑する私をよそに、 お母さんの顔をした女の人は 鼻歌を口ずさみながらホットミルクを出してくれた。
そして、幸せそうにコーヒーを啜った。
咲弥子
咲菜子
咲菜子
咲菜子
咲菜子
そうだ、私はずっと寂しかった。
お母さんに会いたかったんだ。
帰ってきてくれたんだよね?
また一緒に暮らせるんだよね…?
咲菜子
リビングにいたはずなのに、気がつくと私は自分の部屋のベッドに寝ていた。
窓から差し込む朝日が眩しい。時計は朝の七時を少し回ったところだ。
咲菜子
咲菜子
ドタバタと家中捜したけれど、 お母さんの姿はどこにもなかった。
家の固定電話には留守録が一件録音されていて、 お父さんからだった。
急な出張が入ったため、明後日まで戻れない。 私のスマホがつながらないので家電にかけた……という内容だった。
咲菜子
私はスマートフォンの〝探す〟アプリを開いた。
相手を登録しておくと、今どこにいるのかを知ることができる便利なアプリ──両親が別居する前から使っているものだ。
お母さんの現在地は、九州の温泉地になっていた。
この家を出て、温泉旅館で働いているのだ。
咲菜子
咲菜子
お母さんは車の運転はしない人だ。 仮に、この一年の間に免許を取って車を持っていたとしても ……やっぱり時間的に無理がある。
咲菜子
咲菜子
そう考えるのが普通だろう。 とても虚しくなってしまった。 一日中引きこもってゴロゴロしたい気分だけど、今日は学校だ。
とりあえず何か食べようとキッチンに向かった私は、 あるはずのないものをみつけた。
キッチンのシンクに、マグカップが二つ置いてある。
昨晩、お母さんはコーヒーを、私はホットミルクを飲んだ。 その時の使ったカップだ。
咲菜子
使った後のフィルターやドリッパーもある。 抽出後のコーヒーはまだ湿っていて、昨日の出来事がリアルだったことを示している。
お母さんは、たしかに数時間前にここにいたんだ。
だけどスマホは九州にある。 今の時代、スマホを持たずに関東と九州を行き来するなんて考えられない。 忘れてしまった可能性はあるけれど……。
それでも、やっぱりおかしい。
咲菜子
そう確信していた。
二時間後、私は博多行きの新幹線に乗っていた。
咲菜子
咲菜子
あの後、一旦落ち着こうとスマホで〝同じ顔の人間が二人いる〟〝同じ顔の別人〟と検索して、私はさらなる不安に襲われた。
①ドッペルゲンガー ドイツの民間伝承で、不吉な予兆とされる。 自分と同じ顔の人間に会うと、その人には死が訪れる。
咲菜子
②幻覚 脳の機能障害や強いストレスによって引き起こされる症状。 この場合、見た私に問題がある。
咲菜子
咲菜子
咲菜子