サクラ
ん……

サクラ
あれ……寝てた……?

??
おはよう

サクラ
!?

サクラ
えっ……なんで

??
そんな反応するのも、無理はないね

サクラ
なんで……えっ……

サクラ
【ハク】……なの?

ハク
そうだよ、お姉ちゃん

氷瓢ハク
サクラと仲が良かった軍部に保護された元奴隷
サクラ
なんで……ハクは……亡くなったんじゃ……

ハク
まぁ……驚くのも無理はない

ハク
お姉ちゃんの記憶は間違ってないよ

ハク
僕は死んだ、確実に

ハク
あの日にね

サクラ
なら……なんで

ハク
ここはお姉ちゃんの気持ちからできた場所なの

サクラ
私の気持ち……

サクラ
なら、なんでこんなにも周囲が暗いの?

ハク
1番、わかってるでしょ?お姉ちゃん

サクラ
それは……

ハク
ねぇ、なんでお姉ちゃんはあんな奴らに縋るの?

ハク
お姉ちゃんを追い詰めた奴らだよ

ハク
お姉ちゃんの事を、信じなかった奴らだよ?

ハク
それなのに、なんでお姉ちゃんは……

ハク
奴らに救いを求めて、憧れるの?

サクラ
……

ハク
(答える訳ないか、昔からそうだったね。お姉ちゃん)

ハク
(奴らは特有の力があった)

ハク
(各自の秀でた能力があった……お姉ちゃんには無かった)

ハク
(その力に憧れて、欲しがってたのは僕もよく知ってるし)

サクラ
憧れちゃ……ダメだったの?

ハク
えっ

サクラ
彼らみたいな力を持って、彼らの為に命を投げ出してもいいって、思っちゃいけなかったの

サクラ
私の命を捨てるだけで、彼らが生きられるならそれで良いだなんて、思っちゃダメだったの?

サクラ
私は、ハクを亡くしたあの日から何も変わらなかった

サクラ
結構……頑張ってたんだよ

サクラ
ハクは知らないかも知れないけど

ハク
(知ってるよ、全部)

ハク
(僕が死んだのを、一番に悲しんだのはお姉ちゃんだった)

ハク
(僕の事を、優しく丁寧に撫でてくれたのはお姉ちゃんだけだった)

ハク
(だからこそ、僕なんかの為に頑張らなくてよかったんだよ)

ハク
(だから、彼奴らなんかの為に頑張って欲しくなかったんだよ)

ハク
(後悔するって、僕は思ったから)

サクラ
ハクが、彼らの事をどう思ってたかなんて知らないけど、私は彼らが大切だったの

サクラ
大好きだったの

サクラ
本家に科せられた【呪い】で歳を取らない私を、拒んでは来なかったから

サクラ
見た目が一切変わらない私を、幹部様達も気味悪がらずに置いてくれた

サクラ
そんな人達に、恩返しがしたいって思っちゃダメだったの?

ハク
そ、それは……

サクラ
ねぇ教えてよ、ハク

サクラ
そこまで、私の行動を否定するなら!

サクラ
何が正解だったか!どれが正しかったか!

サクラ
ハクならわかるんでしょ!?

先代総統の死亡を聞いた時から彼女から【笑顔】以外の表情は消えていた
ましてや、生前のハクに対して一度も怒った事が無いのだ
いくら、仲が良いとはいえ立場が圧倒的に違っていたサクラにハクが無礼を働いたとしても、彼女は笑って許していた
ハク
あ、えっと、あの……

サクラ
ねぇ、ハク

ハク
その、えっと、ご、ごめっ

サクラ
もし、ハクならどうしたの

サクラ
ハクなら……どう動いてたの

サクラ
あれだけの……偽造された証拠を突き出されて、どうやって切り抜けるの……

サクラ
恩師が、皆様を騙していた事実があって、私が知らずとはいえ加担していた事実があって……

サクラ
聞き入れられない状況で……どうやって解決するの?

ハク
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい

ハク
ごめっ、本当に、ごめんなさい!

ハク
許して、ごめんなさい、本当に、ごめんなさい!

ハク
だから、だから許して!お姉ちゃん!

今まで好きで好きで堪らなかった血の繋がりのない姉に
ハク
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい

ハク
わざとじゃないの!

ハク
だって、だって、奴らが、お姉ちゃんを苦しめたのに、認めないから

ハク
彼奴らのせいなのに、自分に非がないって態度だったし!

ハク
僕はっ、お姉ちゃんの為を思って!

サクラ
誰が頼んだの

ハク
あ、えっと

サクラ
私はもう……誰かに守られたくないの

ハク
ごめんなさい……だから、許して

サクラ
……

サクラ
ごめんね、ハク

サクラ
言い過ぎだったね

ハク
僕が悪いから、ごめんなさい

サクラ
……でもハク、ありがとう

サクラ
ここにまだ居てもいい?

ハク
もちろんだよ……お姉ちゃん

サクラ
(あぁ、私もう)

ハク
あの、お姉ちゃん

サクラ
ん?どうしたの?

ハク
お願いがあるんだけど……

サクラ
お願い?

ハク
僕が良いって言うまで……ここにいて

ハク
理由は聞かないでくれたら嬉しいし、助かる

サクラ
……わかった

ハク
ありがとう……だからゆっくりやすんで

サクラ
(ああ、本当に……)

サクラ
(ここは……すごく……落ち着く)

ハク
……

ハク
ごめんなさい、お姉ちゃん

ハク
僕は……お姉ちゃんのお願いは聴けないんだ
