元カレ
別れよう
そう言われたのは、高校生2年の夏。
何度目かの恋でようやく出来た、優しくて、頼もしい理想の彼氏だった。
「待って、何がいけなかったの?」
そう心は叫んでいたが、声が出せず、そのまま彼は去っていってしまった。
足がすくんでしまって、一歩も動けず、ただ小さくなっていく彼の背中を見守るだけ。
小山 奈月
(こんなに苦しいのなら、恋なんてしたくない)
私はその場で、泣き崩れてしまった。
そんな私をひっそりと見てしまっていた人がいたなんて、今は知るよしもしなかった。
それから、数日経ったとある日の朝、
湯本 梓
ねぇ、奈月
小山 奈月
ん?なぁに?
湯本 梓
今日から転校生が来るって知ってた?
小山 奈月
えっ、そうなの?
湯本 梓
うん、逆にクラス委員長の奈月の方が詳しいと思ったんだけどなぁ
湯本 梓
情報が足りなくて残念!あーあ、イケメンだったらいいなぁ……
小山 奈月
え、男の子なの?
湯本 梓
……ほんとに何も知らないんだね笑
小山 奈月
うん、もしかして、名前も知ってるとか?
湯本 梓
いやいや、そこまでは知らないけど
湯本 梓
友達が一昨日の夕方、「見知らぬ男の子が職員室に入っていったのを見た」って聞いたからさ
小山 奈月
(一昨日、といえば)
小山 奈月
(彼に別れ話を切り出されて……)
担任の教師
はい、皆さん席について!
ガラリと引き扉が空いて、担任の女性教師がいつもの様に入ってくる。
しかし、そんないつもの光景と唯一違ったのは、その後に入ってきた見知らぬ男の子。
担任の教師
今日から転校してきた、四宮君です
担任の教師
じゃあ、みんなに一言
四宮 貴之
四宮です、よろしく
彼は一言だけ挨拶をして、軽くお辞儀をする。
湯本 梓
ねねっ、格好良くない?
小山 奈月
そうだね
湯本 梓
あれ?奈月はあんまり興味無い感じ?
小山 奈月
うーん、そうじゃないんだけど……
小山 奈月
(どことなく、別れた彼に雰囲気が似ていて、)
小山 奈月
ちょっと、複雑なんだよなぁ……
湯本 梓
何が?
小山 奈月
ううん、何でもないよ
担任の教師
じゃあ、四宮君はあそこの一番後ろ……小山さんの後ろね
担任が私の後ろの席を指すと、彼はこちらに向かって歩いてくる。
席についたのを確認して、一言挨拶をしようと後ろを振り返ろうとしたら、
四宮 貴之
ねぇ、
小山 奈月
っ!!
耳元に彼の吐息がかかり、びくっと身体を震わせてしまった。
四宮 貴之
一昨日、泣いていたのは、
四宮 貴之
君?
小山 奈月
え……
小山 奈月
(嘘……、あれ、見られてたの……?)
恥ずかしい思いをしながらも、やっとの思いで後ろを振り返ってみると、彼は意地悪そうに笑って、
四宮 貴之
これから色々と宜しくね、小山さん?
恋はまだ、始まったばかり。
to be continue...







