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樫村奈七は、冬の匂いが好きだった。
駅前のカフェまで歩くとき、鼻先が少し冷えるあの感覚。
それが、もうすぐクリスマスが来ることを教えてくれる。
今年もきっと、小田野美咲と一緒にケーキを食べながら
「来年こそはお互い彼氏つくろ〜」なんて笑って過ごすのだと思っていた。
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 その“はず”だった。
カフェの席に着いてすぐ、美咲はカップを両手で包みながらさらりと言った。
小田野美咲(おだのみさき)
樫村奈七(かしむらなな)
湯気の立つカフェラテの香りが、一瞬で遠ざかった気がした。
奈七は口をぱくぱくさせながら、スプーンを持ったまま固まった。
樫村奈七(かしむらなな)
声が裏返る。
美咲は少し気まずそうに笑った。
小田野美咲(おだのみさき)
奈七は慌てて手を振った。
樫村奈七(かしむらなな)
そう言いながら、胸の奥がキュッと痛んだ。
お祝いの気持ちは本物だ。
でも、どこか“置いていかれた”ような寂しさも同時に込み上げてくる。
美咲はまっすぐ奈七を見る。
小田野美咲(おだのみさき)
樫村奈七(かしむらなな)
言われる前から分かっていたはずなのに、言葉にされると、現実がぐっと重くなる。
樫村奈七(かしむらなな)
奈七はストローをいじりながら、心の中で考える。
毎年の恒例行事が、突然ぽっかり抜け落ちたような感覚。
その時、美咲がふっと笑った。
小田野美咲(おだのみさき)
その言葉が、奈七の胸に強く刺さった。
美咲は責めているわけじゃない。
ただ本気で心配してくれているのだ。
奈七は息を吸い、勇気を振り絞って言った。
樫村奈七(かしむらなな)
美咲は驚いたように目を丸くした。
小田野美咲(おだのみさき)
樫村奈七(かしむらなな)
天然でおっちょこちょいで、恋愛経験も多くない奈七が、
そんなことを言ったのは初めてだった。
美咲はふっと笑って、奈七の手を軽く掴んだ。
小田野美咲(おだのみさき)
小田野美咲(おだのみさき)
樫村奈七(かしむらなな)
と言いながら、内心少し不安になる奈七。
カフェを出ると、外の風はさらに冷たくなっていた。
街のイルミネーションは光を増し、恋人たちの笑い声が遠くに聞こえてくる。
奈七はマフラーをぎゅっと握りしめた。
樫村奈七(かしむらなな)
その決意は小さな炎のように胸で灯った。
まだ弱くて、風が吹けば消えてしまいそうなくらい頼りない。
だけどその火は、確かに奈七の心を暖め始めていた。
こうして 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
奈七の“クリスマスまでに彼氏を作る大作戦”が幕を開けた。
しかし、この時の奈七はまだ知らない。
このあと出会うのは、驚くほどの“クズ男”たちばかりで 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
その先に待っているのは、いつも怒ってばかりの上司・峰田恭也との、
予想外の冬物語だということを。