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桜の花もとっくに散ってしまった 中庭の大きな木には青々と葉が茂り 暖かな空気が流れていた。
冴内蒼空
蒼空は大きなあくびをした。
昨日もまた夜遅くまで服作りに 没頭して寝不足だったのだ。
周りでは「おはよう」と 挨拶が飛びかっているが 蒼空には関係ない。
誰にも声をかけないし、 かけられもしない。
いつもの朝だった。
冴内蒼空
教室についても蒼空は誰とも口をきかない。
楽しげなクラスメイト達の話し声を BGMにして物思いにふける。
冴内蒼空
蒼空の頭の中は服作りのことで いっぱいだった。
キーンコーンカーンコーン
好きなことを考えていると あっという間に時間が過ぎるのも いつものこと。
チャイムの音と共に教室に入ってきた担任は 淡々と生徒を席につくよう促した。
担任
ガラ…
静かになったばかりの室内には ドアが開く音がやけに大きく響く。
クラス中の視線が音のした方に集まった。
蒼空も思わず顔を上げて たった今教室に入ってきた人物を見る。
冴内蒼空
そこに立っていたのは小柄な少女だった。
蒼空はその少女の姿に衝撃を受ける。
クラスメイト達の視線を一身に浴びながらも 彼女は平然としていた。
担任
可愛シエル
遅刻してきた少女は悪びれもせず 担任に背を向け気だるげに扉を閉めた。
少女が歩くと 腰まで伸びたウェーブがかった銀髪が ふわりと揺れる。
担任
可愛シエル
担任の釘を指すような言葉に足を止めると 気の無い返事をしながら そちらに顔を向けた。
すると下を向いていた視線が上がり、 綺麗な空色の瞳が露になった。
冴内蒼空
担任
そう言われた少女はスッと担任から 視線を外して席に向かう。
段々と近付いてくる少女に 蒼空の背中に緊張が走る。
冴内蒼空
つい目が離せず見つめて居ると 少女は窓際の一番後ろの席に座った。
つまり…
冴内蒼空
ということだった。
クラスの空気が何となく凍りついている中、 少女は飄々と窓の外を眺め始めた。
冴内蒼空
冴内蒼空
いつの間にか 蒼空の頭の中は服のことではなく 謎の美少女のことでいっぱいだった。
どのくらいいっぱいだったかと言うと、
出席を取る担任の
担任
の呼び掛けにも暫く気付かず 慌ててしまったほどである。