冴内蒼空
授業中も休み時間も 一人で服のことを考える、 蒼空にとっていつもの毎日。
ただ、今までとは違うところがある。
この前遅刻してきたクラスメイトの存在を 中心に作る服を考えることだ。
昼休み、 弁当片手に教室を出るシエルを 視線だけで追った。
蒼空の席は窓際のひとつ隣。
日当たりも良くて暖かい。
食事をするには最適の環境なので 移動なんてせず 朝握ってきたおにぎりを机に出す。
アルミホイルを剥いておにぎりを頬張る。
食べながら考えるのはやはり シエルに着せたい服のことだった。
冴内蒼空
冴内蒼空
冴内蒼空
冴内蒼空
ごくん、と最後の一口を 飲み込みながら青ざめる。
慌てて頭を左右に振って 考えていたイメージを振り払う。
???
ポンっと誰かが後ろから 蒼空の背中を叩いた。
冴内蒼空
その誰かは 蒼空がクラスで会話することある 唯一かもしれない生徒だった。
最上 勝(もがみ すぐる)
サッカー部のエースストライカーで クラスでもしっかりと持ち前の リーダーシップを発揮している男だ。
蒼空とは一年の時から同じクラスで 何かと世話を焼いてくれている。
蒼空が学校で完全に孤立していないのは 最上のおかげと言って良いだろう。
最上勝
冴内蒼空
最上勝
最上は軽快に笑いながら 蒼空の前の席に腰掛けた。
冴内蒼空
流石、人たらしの人気者は 観察力が良いのか感が良いのか…。
とにかく 蒼空にはついていけないテンポで 会話が進んでいく。
最上勝
冴内蒼空
シエルに気をとられ遮るように生返事した。
席に戻るシエルを 目の前の最上に気付かれないように 蒼空なりのポーカーフェイスで 眼球を駆使して追いかける。
冴内蒼空
冴内蒼空
シエルに見とれる蒼空を ニカッと爽やかな笑みで見た最上は 口を開く。
最上勝
冴内蒼空
最上勝
冴内蒼空
最上は蒼空が止める間もなく シエルに声をかけた。
席につこうとしていたシエルは その場で立ち止まったまま最上を見る。
最上勝
シエルの顔が訝しげに歪む。
冴内蒼空
蒼空は二人の間で冷汗をかきながら 何とか最上を止めようと声をあげた。
そんな蒼空をシエルが見る。
初めて蒼空とシエル、 二人の視線が交わった。
冴内蒼空
冴内蒼空
冴内蒼空
冴内蒼空
誰ともか関わらず、 孤高の美少女とも呼ばれているシエルが 男子と何か話している…。
教室内で密かに注目され出しているが それに気付ける蒼空ではない。
様子を伺う視線の中から動いた人間が居た。
???
最上の肩に手を乗せて 甘い声で声をかけた、その人物は。
安里 知夜子(あざと ちよこ)
男子の間では可愛い女子で有名。
女子の間ではぶりっこでウザいと有名。
極端な評価をされがちなあざとい女だ。
シエルとは一年の時から同じクラスだが 友達が居ない者同士、 体育のペアを組む程度の仲だった。
そんな仲だがシエルにとっては 高校で一番関わりのある生徒に違いなく…
助けを求めるように首をかしげて 安里を見つめた。
あわよくば この場をどうにかさせよう という魂胆だった。
安里知夜子
シエルの思惑通り、 安里はその場を仕切り出す。
しかし蒼空が突然、ガタンと音をたてて 立ち上がると安里は口を閉ざした。
急に立ち上がった蒼空に視線が集まる。
意を決した蒼空は 大きく息を吸い込み一息に話し始める。
冴内蒼空
首まで真っ赤に染め、 自分でも訳が解らないまま がむしゃらに言葉を吐き出した。
同じ教室に居ても、
クラスメイトでも、
今を逃せば話せないような距離が 二人の間にはあったのだ。
だから蒼空はこの機会を逃したくなかった。
そして蒼空の渾身の発言に 場は一瞬静まり返り…
安里知夜子
可愛シエル
最上勝
サッカー部の部員
最上が話している途中で 同じ部活の生徒がドアの外から声をかけた。
最上勝
最上は立ち上がると そのまま自分の席に戻ってしまう。
安里知夜子
最上が居なくなるとすぐ、 安里はその場を去ろうとする。
現在フリーの安里は 最上に狙いを定めているらしい。
最上の去ったこの場に用はないのだろう。
可愛シエル
蒼空と二人、取り残されそうになった シエルは安里の言葉に思わず声をあげる。
キーンコーンカーンコーン
シエルを助けるタイミングで チャイムが鳴った。
安里知夜子
パタパタと安里が席に戻ったのを切っ掛けに シエルもそそくさと席に戻った。
可愛シエル
席につく前、 チャイムに紛れて呟いたシエルの声は 誰の耳にも届くことは無かった。
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