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神様をお話に登場させるなんて、素敵すぎです!!夏が来なくなった理由に驚きです。
え……。じゃあ、夏が来なくなった原因はハナカイドウ様のせいじゃ……。で、でも、キンモクセイ様がやったことは許されることじゃないもんね…… なんか、切なくて悲しい……(´;ω;`)
この世界には。
春はある。
秋もある。
冬だってある。
だけど…。
「夏」は、この世界に 存在しない。
そう、夏だけが…。
この世界から、消えた。
僕は、あの日。
この世界を、大きく 変えてしまったのだから_。
時は、一年前に遡る。
この世界には、 四季の神様がいた。
四季の神様は、元々は 樹木や草花などの植物だった。
かつて、樹木や草花達を誰よりも愛していた神様がいた。
その神の名を「四季」と言う。
四季様はこの世界をそれぞれ、四つの季節に分けて、
春、夏、秋、冬が出来た。
しかし_
その翌年、力を使い過ぎた 四季様は、
亡くなった。
そしてその後。
四季様が特に愛した 四つの植物に
命が宿り、四季の神様と 名付けられた。
春の神、「ハナカイドウ」様。
夏の神、 「アオツヅラフジ」様。
冬の神、「ウメ」様。
そして俺、秋の神、 「キンモクセイ」。
この「四季の神様」、と 呼ばれた俺たちは
四季の変化に合わせて、 それぞれの仕事をした。
そんな毎日を過ごして いつしか、俺は
夏の神、アオツヅラフジ様に 恋心を抱くようになった。
口に出さずに、心の中で
彼女に一蓮托生を誓った。
とはいえ、神様どうしの 恋愛は禁止となっていた為
この恋は、「禁断の恋」 そのものだった。
勿論、叶うはずがないに 決まってるけれど…。
アオツヅラフジ様は美しく、 慈悲深い神様だった。
俺は、彼女のそんな一面に 惹かれて、恋をした。
そんな毎日が一億年ほど経ったある春の事だった。
樹木達の花が散り、鮮やかな緑のドレスをつける_。
そんな、春から夏へと変化する
夏のうち、最も忙しいとも 言える時期だった。
だから当然、
アオツヅラフジ様はいつも以上にストレスを溜め込んでいた。
しかしその年は、それに加えて
夏の魔法が効かない、という 危険な事態が発生した。
そして、会議が開かれた その日、俺は
この世界を大きく 変えてしまう事になる_。
そして、彼女に密かに 誓っていた「一蓮托生」は
まるで割れたガラスのように 粉々になる事となる_。
3月31日、
光の森に四季の神様が集まり、 会議が始まった。
この時俺たちはトラブルの事をまだ何も知らなかった。
重苦しい雰囲気の中、
一番初めにその雰囲気を 打ち破ったのは、
冬の神、ウメ様だった。
冬の神ーウメ様
冬の神ーウメ様
冬の神ーウメ様
夏の神ーアオツヅラフジ様
夏の神ーアオツヅラフジ様
ウメ様の優しさに感謝しつつも
困ったような弱々しい 微笑みを浮かべる彼女に、
俺は居ても立っても居られず、口を開いた。
秋の神ーキンモクセイ
秋の神ーキンモクセイ
秋の神ーキンモクセイ
秋の神ーキンモクセイ
秋の神ーキンモクセイ
夏の神ーアオツヅラフジ様
夏の神ーアオツヅラフジ様
そこで、一旦会話が途切れた。
繊細な心の持ち主である アオツヅラフジ様の事だ。
きっとその時、ゆっくりと 呼吸を整えて
自分の気持ちを落ち着かせて いたように、俺には思えた。
そして彼女は気持ちを ゆっくりと落ち着けて、
俺達、四季の神様に 衝撃的な事実を告げた。
夏の神ーアオツヅラフジ様
夏の神ーアオツヅラフジ様
夏の神ーアオツヅラフジ様
夏の神ーアオツヅラフジ様
その言葉に、少なくとも俺は 物凄い衝撃を受けた。
魔法が効かない。
それは、俺達 四季の神様にとって
まさに緊急事態そのもの だったからだ…。
夏の魔法が効かない、と いう事はつまり、
夏が無くなる、という恐ろしい事態に繋がりかねないからだ。
これにはいつも冷静を 装っている俺も
驚きを隠せなかった。
秋の神ーキンモクセイ
秋の神ーキンモクセイ
秋の神ーキンモクセイ
冬の神ーウメ様
冬の神ーウメ様
冬の神ーウメ様
夏の神ーアオツヅラフジ様
夏の神ーアオツヅラフジ様
そう言うアオツヅラフジ様の 瞳からは、今にも
夕立が降ってしまいそうな…。
そんな潤んだ瞳だった。
春の神ーハナカイドウ様
春の神ーハナカイドウ様
春の神ーハナカイドウ様
春の神ーハナカイドウ様
春の神ーハナカイドウ様
ハナカイドウ様の その一言で、
光の森は一瞬にして凍りつく。
春の神ーハナカイドウ様
冬の神ーウメ様
冬の神ーウメ様
冬の神ーウメ様
そんな風に慌てて アオツヅラフジ様の事を
庇おうとしたウメ様の言葉を、ハナカイドウ様は遮る。
そして、ウメ様のその言動は ハナカイドウ様の心の火に
油を注ぐような結末に なってしまった。
春の神ーハナカイドウ様
春の神ーハナカイドウ様
春の神ーハナカイドウ様
夏の神ーアオツヅラフジ様
アオツヅラフジ様の 言葉や声からは、
ハナカイドウ様の事を大切に 思っている、と言うことが
手に取るように分かる。
俺は、そんな彼女を
このまま放っておくことは 出来なかった。
そして、気がつけば口から 次々と言葉が出てきた。
秋の神ーキンモクセイ
秋の神ーキンモクセイ
秋の神ーキンモクセイ
秋の神ーキンモクセイ
秋の神ーキンモクセイ
秋の神ーキンモクセイ
春の神ーハナカイドウ様
春の神ーハナカイドウ様
春の神ーハナカイドウ様
春の神ーハナカイドウ様
春の神ーハナカイドウ様
夏の神ーアオツヅラフジ様
夏の神ーアオツヅラフジ様
夏の神ーアオツヅラフジ様
春の神ーハナカイドウ様
春の神ーハナカイドウ様
春の神ーハナカイドウ様
春の神ーハナカイドウ様
春の神ーハナカイドウ様
春の神ーハナカイドウ様
秋の神ーキンモクセイ
秋の神ーキンモクセイ
秋の神ーキンモクセイ
秋の神ーキンモクセイ
秋の神ーキンモクセイ
春の神ーハナカイドウ様
春の神ーハナカイドウ様
春の神ーハナカイドウ様
春の神ーハナカイドウ様
春の神ーハナカイドウ様
春の神ーハナカイドウ様
冬の神ーウメ様
冬の神ーウメ様
ハナカイドウ様は ウメ様の言葉に応じる事なく
足早に走り去って行く。
…と、ハナカイドウ様を追う事を諦めた俺は、ふと
すぐ隣のアオツヅラフジ様の 姿を見て、はっと我に帰る。
ああ。
どうして、俺は 気づけなかったんだ…。
彼女の、アオツヅラフジ様の 頰は、既に
大粒の雨で濡れていた、 だなんて…。
アオツヅラフジ様は、本当は。
きっと、凄く凄く 辛かったんだ。
一人で必死に苦しみを 堪えていたんだ。
その事に気付いた俺は、 ハナカイドウ様への
この気持ちに、 やっと気付いた。
『殺意』
ってね。
そして、俺はその夜、
行動に移す事にした。
林の茂みの中から密かに、
俺は一つの影を見つけた。
…見つけた。
きっと、あの人影は
ハナカイドウ様_。
そして、そう思い込んだ俺は
切れ味の良いナイフを片手に、
一気に背後から襲いかかる。
そして。
此処に、一つの悲鳴が こだまする。
その時、その一つの人影が 振り向いて
月夜に照らされるのは…。
真っ赤な血の色に染まった、 美しい彼女の顔_
その美しく神々しい 彼女の横顔に、
俺は思わず絶句する。
信じられなかった。
信じたくもなかった。
まさか、俺が。
守ろうとした、彼女を
自らの手で、殺めてしまった… だなんて…。
夏の神ーアオツヅラフジ様
夏の神ーアオツヅラフジ様
彼女は、苦しそうにしながらも
俺の瞳に、最期の最期に 問いかけて_。
そのまま、眠ったように 動かなくなった。
…というよりも、
そのまま、永遠の 眠りについた_。
彼女の死から、 今日で100年が経った。
夏の神が居ない今、
今年も、夏は来ない。
きっと。
…いや、
この世界にはもう、 二度と夏は来ない。
人々が汗をびっしょりと かきながら
かき氷を食べる事も。
ミーンミンと、蝉が大声で
泣き叫ぶ声も。
もう二度と、 見ることは出来ない。
もし仮に、この世界にもう一度
夏が来たとしても。
俺の、大切な夏は。
…いや、
俺の大切なアオツヅラフジ様はもう二度と戻ってこない。
もう二度と、会えやしない。
そして。
今年も、来年も。
彼女の居ない、
つまらない、色褪せた一年を 過ごして行くんだ。