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2006/11/30 From: eto igarashi Re: 二次元の世界へ
眠りの浅いなかで
うちはいつもと同じ悪夢を見ているような気がする。
クラスメイト
クラスメイト
クスクスと悪口を含んだ笑い声が耳に浸透して
はっと目が覚める。
また居眠りをしていた。
いつも深夜まで漫画を描いているせいで
授業中は眠たくて仕方がない。
といっても漫画家を目指しているとかではない。
いつかコミケに出展することくらいは夢見てるが
多分それも無理だろう。
唯一のオタク仲間と言える大川からいつもからかわれるのだが
うちには絶望的に絵のセンスはなかった。
ネットに発表すれば
大型掲示板にスレッドが立ち
釣りサイトか否かの祭りが始まるレベルの
常に登場人物が複雑骨折を起こしている 酷い画力だった。
それでも漫画を描いている時間が 好きだった。
物語に没頭している間だけは
自分ではない
主人公に選ばれた
たったひとりの特別な誰かになれた。
物語だけがうちの生きる希望だった。
まどろみの中
机から顔を上げる。
顔に不快な冷たさを感じて
口の橋から涎がたれていることに気づいた。
制服のシャツの袖でいそいで拭き取る。
背後から
クラスメイト
という実況と
何人かの嘲笑が聞こえてきた
確かに
否定することはできないくらい
今のうちはデブだった。
この間の身体測定で
身長は一六〇センチ
体重はここ二年で面白いくらいに増えて
七十五キロもある。
でもこの身体が太っていくことを
自分ではもう止められない。
だってダイエットなどする権利など
うちにはないのだから
クラスメイト
クラスメイト
クラスメイト
授業が終わった途端
一二〇センチのルーズソックを履いたギャル集団のひとりに肩をたたかれた。
部活は元々休むつもりだった。
ギャル集団たちとカラオケに行くためではない。
今日は『DEATH NOTE』の最新刊を買いに
新京極のアニメイトへ行く予定を立てていたからだ。
クラスメイト
クラスメイト
クラスメイト
躊躇していると
すぐに圧力がかかった。
ギャルたちの目から生えている睫毛は
見上げると
虫の足のように見えた。
クラスメイト
クラスメイト
歪な笑顔と共に詮方無く頷いたけれど
さっきまでうちのこと嘲笑ってたギャル達が
本気で自分のことを誘っているのではないことぐらいわかっている。
手っ取り早く
遊ぶお金が欲しいだけだ。
カラオケ
プリクラ
サイゼリア
それが彼女たちの
お決まりコース。
体の奥からこぼれそうになるため息をどうにか飲み込む。
別にお金が惜しいわけじゃない。
自分の外見は
お嬢様という風貌とはかけ離れているが
家は裕福で
パパからは普通の高校生ではありえない額のお小遣いをもらっているという自覚もあった。
だけど
カラオケでは自分の順番が回ってくることは永遠にないし
プリクラには映れない
家に帰ったら絶対にママのご飯を食べなければならず
サイゼリアではドリンクバーしか 頼めないし
会話に寄せてもらえることもない。
ステージルームで歌いたいと連れられた 三条河原町のジャンカラで
浜崎あゆみの微妙なモノマネを聞きながら
紫がかった薄い唇をかみしめる
はっきり言って
拷問のような時間だ。
うちはなんで
ここにいるんだろう。
この地獄から一刻も早く逃げ出して
アニメイトまで駆けていきたい。
ベットに横たわりながら新刊を読み耽りたい。
いっそお金だけ置いて退出すればいい。
そう思うのにうちの足は動かない。
断る勇気もなければ帰る勇気もない。
これ以上
教室での扱いが悪くなるのが怖いからだ。
ギャルたちの芸術的なほどにきれいに巻かれた髪を下品に照らすライトのなかで
そっと目をつぶる
二次元の世界に生きたい
背景ではない
選ばれた特別な誰かになりたい。
死ぬまで完結することのない現実の中で
うちはいつだって本気で
そう願っていた。