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朝早い時間に電話が鳴り響いた
剣持
はい、もしもし
剣持
…え！？
剣持
僕もすぐそっちに行きます
伏見
どうしたんすか？
昨日はガッくんの家に遊びに行って そのまま泊まっていた
ガッくんも知っておいて もらった方がいいだろうな
剣持
月夜くんが昨日から行方不明らしいです
伏見
え！？
剣持
昼前に散歩に行ってそこから帰ってきてないらしくて
剣持
携帯の電源も切ってるみたいで
剣持
ガッくん月夜くんの家まで車出してもらってもいいですか
伏見
そりゃもちろん！！
伏見
俺も探すゼ！！
伏見
急いで準備してでなきゃな！
剣持
そうですね
剣持
また電話？
でも、今度は非通知から
剣持
もしもし
剣持
（何も喋らない…間違い、イタズラか？）
剣持
もしもーし？
よくよく耳を澄ますと 聞こえてくるのはーー
？？
ごめん ﾎﾞｿｯ
剣持
えっ、まっ
剣持
切れた
伏見
刀也さん、準備できたか？
剣持
ガッくん、向かって欲しい場所があるのでそっちに行ってください
伏見
へ？月夜くん家に行くんじゃーー
剣持
いいからお願いします
伏見
分かったっすけど…
剣持
みんなには連絡しときます
月夜くんが 見つかったかもしれないって
そろそろ冬ということもあり この場所に来ると少し肌寒い
夏であれば人が多いが 今の時期来る人はいない
そんな静かな場所にここからでは 少し遠いが佇む人影が1つ
長い髪が風に弄ばれて
塩の、海独特の匂いがする
剣持
月夜くん
今にも消えそうなほど儚げな表情
剣持
みんな探してますよ
剣持
特に星夜くんが1番心配してます
月夜
……何も言ってませんからね
剣持
何かありました？
剣持
話ぐらいなら聞きますよ
長い沈黙の後、月夜くんは口を開き
月夜
剣持さんは
剣持
はい
月夜
人の記憶について、どうお考えですか
剣持
と、言うと？
月夜
仕方がないことですか？
月夜
元の記憶すら、欠片も無いほど忘れ去られてしまうのは
剣持
あ………
月夜
私には、分かっていても実際には耐え難いものでした
月夜
幼馴染が、星夜が"あの日"のことを忘れてしまうことは
月夜
それだけが私を繋ぐ、1つの出来事でしたのに
剣持
あの日の、出来事…？
月夜
……遠い遠い、昔の話です
そう言って曖昧に笑う
その笑顔はもう、作り物だと分かる
剣持
聞かせてくださいよ
みんなが来るまでには 時間はまだかかりそうだ
月夜
構いませんが、大して面白くもありませんよ
月夜
私だけが知る、もう信じる人のいない御伽話
電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
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