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白鳥〇〇
片手でお腹を抑えながら、言われた通りの道へ進む。
白鳥〇〇
白鳥〇〇
扉の前で、時間が止まったように感じる。
その静けさの中で、 喉が鳴る音だけがやけに大きかった。
私は小さく息を吸い、扉を開けた。
扉の向こうには、黒い服の男がいた。 背を向けたまま、部屋の奥を見つめている。
足音を立てても、扉が開く音がしても、 それでも彼は振り返らない。
その背中に、声をかけようとする。
けれど、喉が動かない。
息だけが浅く、胸の奥で絡まったまま、 言葉にならなかった。
もう一度、口を開く。 それでも、音は出ない。
無意識に唾を飲み込む。 その小さな動作に、覚悟を押し込めて────
白鳥〇〇
掠れた声が、ようやく零れた。
白鳥〇〇
白鳥〇〇
白鳥〇〇
白鳥〇〇
少しずつ発せられる言葉を逃さず聞く後ろ姿の男は どこか頼り甲斐があった。
白鳥〇〇
白鳥〇〇
白鳥〇〇
?
?
白鳥〇〇
男はようやく一歩踏み出す。
黒い服が静かに揺れ、背中が遠ざかっていく。
扉が閉まる音だけが、あとに残った。
男が完全に消え去った。その瞬間だった。
張り詰めていた緊張が、糸を切られたようにほどける。
それと同時に――忘れていたはずの痛みが、腹の奥から一気に押し寄せた。
声にならない息が漏れる。
今まで無理やり押さえ込んでいた傷が、 存在を思い出したかのように主張してくる。
足に力が入らない。 膝が折れ、そのまま床に崩れ落ちた。
冷たい床に手をつき、腹を押さえてうずくまる。
呼吸をしようとするたび、 痛みが波のように重なって視界を滲ませた。
だいじょうぶ、まだ――。
そう思ったはずなのに、意識が追いつかない。
耳鳴りが遠くなり、 世界が、ゆっくりと暗く沈んでいく。
最後に感じたのは、床の冷たさだけだった。
それから先のことは、何も覚えていない。