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ジョングク
冷たい風が吹き抜ける。
僕は今、橋の上にいる。
『肌寒い秋の夜にはねぇ、ランニングがぴったりだよ』
そう言って笑った、あの人の笑顔を見たのもここだった。
あのときと変わらない夜景、あのときと変わらない匂い。
『ここはねぇ、海が近いから、塩の匂いがするんだよ。 こんなに高いのにねぇ...。』
あのとき、貴方はそう言った。 今と変わらない、冷たい風を受け止めながら。
変わったのは、この場所ではない。あの人でもない。 強くなりたかったのに弱くなって。変わったのは僕だった。
僕らの関係が世間にバレると、すぐに批判されることばかりだった。
そんな中でも、変わらず強く生きる貴方。
それに対して、日に日に弱くなっていく僕。
それでも、懸命にもがき続けて、貴方についていったはずなのに。
いつの間にか突き放されて、置いていかれて。 気付いてしまうともうだめだった。
もがく力はどんどん弱くなって。 貴方と出会う、前のように。僕はたちまち一人になって。 積み上げた努力は、呆気なく崩れていく。
耐えられなくなった僕は、今ここにいる。
僕の頬を濡らした雫が、橋の下へと消えていく。
消えてくれるのかな、ここから落ちれば。
僕の苦い思い出も、決して諦められない、恋心も。 全部、全部。
僕という存在が消えてくれるのなら。
ジョングクはこの日、消えた雫となった。
ー END ー
コメント
1件
悲しいけどめっちゃ好きです ... 🥹 フォロー失礼します( . .)"