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第1話 - あ

2023年09月16日

#スカッと

タナカトシキ

ウイ

寝たきりの病人が家にいるとさー、辛気臭いし物理的にも臭いし嫌になっちゃうんだよね

ウイ

血の繋がりもないんだしさっさと出てってくれない？迷惑なのよ

アズサ

酷いよお姉ちゃん…病気のお母さんの世話、ずっと私とお父さんがしてるのに

アズサ

お姉ちゃんはちっとも介護手伝わないで遊んでばっかりじゃない！

ウイ

当然でしょ。なんで私が血の繋がりのない他人の世話しなきゃならないの

アズサ

お姉ちゃんは実の子みたいにお母さんの世話になってたでしょ！

アズサ

なのに、なんでそんなこと言うの！

ウイ

そんなの、勝手に親同士が再婚したんだから当然じゃん

ウイ

大体、なんで病気ババアばっかり優しくされるわけ？

ウイ

パパまでババアにつきっきりでさ。私の子と家族のだれも構ってくれないしつまんない！

アズサ

子供みたいなこと言わないで！大学も卒業した大人のくせに！

ウイ

私はずーっとパパの子供だもん！血の繋がらないあんたと違ってね！

ウイ

ここはパパの家なんだから早く出て行ってくれる？

アズサ

そのお父さんが私達を家族と認めてくれたの

アズサ

お姉ちゃんにそんなこと決める権利はないよ

ウイ

生意気言って！！パパは優しいから病人を放り出せないだけなのよ！

ウイ

その優しさに甘えないでくれる！？

アズサ

そうね。お父さんは優しいわ。連れ子の私とお姉ちゃんを分け隔てなく育ててくれた

アズサ

その娘であるお姉ちゃんとは大違いね

ウイ

ムカつく！ああいえばこういうんだから！！

ウイ

ていうか、あんたが来るまでは私が一人っ子でずっとパパに大事にされてきたんだからね！

ウイ

連れ子の分際でパパの関心を奪っていって…！

ウイ

あんたなんかにお姉ちゃんって呼ばれる筋合いはないのよ！

アズサ

子供みたいなヤキモチ妬かないでよ…

アズサ

お母さんが大変な時なんだから、こんな時くらい大人になってくれる？

アズサ

血の繋がったお父さんの為にも、ね

～数日後～

ジュン

アズサ、大変だ

ジュン

母さんが…今、息を引き取った！

アズサ

えっ！

ジュン

最後まで家族のことを気にかけていたよ…

アズサ

嘘、そんな…

ジュン

とにかく早く帰って来なさい

アズサ

うん！先生に事情話してくる！

アズサ

お姉ちゃんは！？

ジュン

あいつは、母さんが亡くなったばかりの頃に帰ってきた…

ジュン

母さんの死を知っても

ジュン

『ふーん。じゃあアズサもとうとう出ていくんだね。連れ子の私にも遺産入るかな？』

ジュン

とだけ…あんな血も涙もない人間に育ててしまって、父さんは恥ずかしい…！

アズサ

嘘、お姉ちゃん酷い、酷すぎるよ…

ジュン

すまない…ウイの処遇は後で考えるから、今は通夜の準備だ

ジュン

ウイは手伝うどころか、また遊びに出かけてしまったがな

アズサ

あんな人に手伝ってもらいたくもないよ！今帰るから！

～葬儀当日～

アズサ

お姉ちゃん、何考えてるの！

アズサ

お母さんの葬儀で、『血縁のない他人は家から出ていけ』って叫ぶなんて…

アズサ

みんなびっくりして見てたよ！非常識すぎるよ！

ウイ

うるさい！あんたが生意気なこと言ってくるから悪いんでしょ！

アズサ

その前にお姉ちゃんが葬儀の場で遺産の話なんかしてくるからじゃん！

ウイ

何が悪いの？遺産相続って大事な話じゃん

アズサ

葬儀の場で話すことじゃないでしょ！

アズサ

大体、お母さんのこと散々、血の繋がりのない他人とか言って見下してたくせに、

アズサ

その他人の遺産を強請るなんて恥ずかしくないの！？

ウイ

私は継母なんていらなかったのに、再婚のせいで苦労させられたのよ！

ウイ

償いとして、もらえるものはもらって当然じゃない

アズサ

お母さんの料理をいつも食べてたのは誰？

アズサ

高校生の頃、お母さんに毎日お弁当作ってもらってたのは誰？

アズサ

破いた服を直してもらったのは誰？欲しいプレゼント貰ってたのは誰？

アズサ

風邪ひいた時看病してもらってたのは誰！？

アズサ

散々お母さんの世話になってたくせに勝手なこと言わないでよ！！

ウイ

うるさい！こんな生意気な妹とももうお別れよ！

ウイ

前にも言ったけど、ここはパパの家なんだからね！

ウイ

ババアが死んだ今、あんた一人が血の繋がりのない異物なの

ウイ

さっさと出てってくれる？というか、出てけ！

ウイ

そしたら元通り、ここで私とパパの血の繋がった親子二人で暮らすんだから！

アズサ

そのお父さんが、お姉ちゃんと話したがってるよ

（【ジュン】が追加されました）

ジュン

ウイ、葬儀で言ったことは本気か？

ウイ

パパ、いい所に来たｗ今まで病人に遠慮して我慢してたんでしょ

ウイ

でももうその必要はないからさ、パパからもはっきり言ってやってよ

ウイ

血の繋がりのない子供は、パパの家から出て行けってさ

ジュン

血の繋がりのない子供は出ていくべきなんだな？

ウイ

決まってるじゃんｗｗ

ジュン

じゃあお前が出ていけ

ウイ

へ？

ウイ

ちょっと、何言ってるの？私はパパと血の繋がった子供じゃん！

ジュン

いや、お前は俺と血が繋がってない

ウイ

嘘つかないでよ！生まれたばかりの私を、パパが抱っこしてる写真だってあったもん！

ジュン

お前は、別れた前の妻が浮気して作った子供だ

ウイ

…え？嘘でしょ…

ジュン

本当だ

ジュン

ウイが生まれて間もない頃に、前の妻の浮気が発覚した

ジュン

ＤＮＡ鑑定をした結果、お前は俺の子じゃなかったんだ

ウイ

そんな…

ジュン

俺がお前を引き取ったのは、前の妻は男遊びが激しくて借金もしていて、

ジュン

おまけに精神的にも不安定で、

ジュン

どう見ても子供を育てられる状態になかったからだ

ジュン

罪のない赤ん坊に情が沸いて、見捨てられなかった

ジュン

血の繋がりはなかったが、ずっと育ててきて、懐いてくれて、

ジュン

本当の娘だと思うようになっていた

ジュン

それなのにお前は、母さんとアズサのことを

ジュン

血の繋がりがないからと見下し、挙句追い出そうとするんだな

ジュン

なら、自分が出ていくのが筋だろう

ウイ

ま、待ってよそんな！私知らなかったんだから仕方ないじゃん！

ウイ

それに私、戸籍上はパパの子供だし、

ウイ

家族だった期間も違うっていうか…

ジュン

言い訳はいい。母さんとアズサだって、お前が子供の頃からずっと一緒だっただろうが

ジュン

母さんやアズサへの暴言、葬儀でのあの行動…お前には本当に愛想が尽きたよ

ジュン

お前が言いだした通り、血縁のない他人は出て行ってもらう

ジュン

さぁ、出ていけ！ここは俺の家だ！！

ウイ

ちょっと待ってよ！そんな、いきなり出て行けって言われたって、生活できないよ！

ジュン

なんだ、まだ高校生のアズサには出て行けって言ったくせに、

ジュン

大学卒業した自分が言われたら困るのか？

ウイ

だって、私就職も決まってないのに…

ジュン

知らん。就活もせずに遊び歩いていたからだろう

ジュン

自業自得だ

ジュン

お前はもう大人なんだ。自立できる歳だろう。今まで甘やかしすぎた。さぁ、出ていけ

ウイ

そんな！ねぇ、遺産は！？

ジュン

まだそんなこと言うのか。連れ子に相続権はないんだよ

ウイ

嘘！！そんなの酷い！

ジュン

お前が少しでも母さんの看病をしていたら、お前にも遺産を残そうと話し合っていたんだがな…

ウイ

アズサは！？アズサだってパパと血が繋がってないよね！？

ウイ

アズサも出て行かなきゃいけないじゃん！

ジュン

生憎、アズサとは血が繋がってるんだ

ウイ

へ？

ジュン

アズサの亡くなった父親は、実は俺のはとこだったんだ

ジュン

だから、少しだが血の繋がりはあるんだよ

ウイ

何それそんなのあり！？

ジュン

まぁ、それ以上に心の繋がりが、俺達にはあるんだがな

ウイ

何よ心の繋がりって！

ジュン

そうそう、最近お前の本当の母親が、このあたりで

ジュン

莫大な借金を肩代わりしてくれる実の娘を探してるそうだ

ウイ

ひっ！

ウイ

やだやだやだ、助けて！！

ジュン

最初はあいつがやってきてもウイを守ってやろうと思っていたが、

ジュン

もうやめた。大人なんだ。自分一人でどうにかしなさい

ウイ

どうしてよぉおおおおおおおお！！

～一ヶ月後～

ウイ

助けてよアズサ！！

ウイ

借金塗れの実の母親にロックオンされちゃった！！

ウイ

どこから突き止めたのかあいつ、毎日私のアパートに来るの！！

ウイ

『血の繋がった親子なんだから私を助けろ！産んでやった恩を返せ！』

ウイ

『若いお前には私の代わりに夜の店で働いてもらう』って！

ウイ

あいつが毎日来て騒ぐせいで、アパートの他の住人の視線も冷たいし、

ウイ

大家さんには出て行ってほしいって言われたの！

ウイ

私だって引っ越したいけどお金がないから無理なんだよ！！

ウイ

ようやく決まったバイト先だって、あいつが凸してきたせいでクビになるし！

ウイ

あいつのせいで私の人生無茶苦茶よ！！

ウイ

パパに何度も連絡してるけど、ブロックされてるから既読つかないし！！

ウイ

だから、もうあんたしかいないの！お願い、パパを説得して！

ウイ

またあの家に一緒に暮らしたいのよ！！

アズサ

もう私達、あの家にはいないよ

ウイ

…え？

アズサ

あんたの母親が突撃してくる前に、引っ越したの

ウイ

えぇええええ！！どうして私に黙って引っ越しちゃうのよ！！

ウイ

私のこと見捨てるつもり！？

アズサ

うん

アズサ

お姉ちゃん、私やお母さんのことを血の繋がりのない他人だから出て行けって言ったよね

アズサ

その点、借金塗れのその人はお姉ちゃんと血の繋がった実の母親だよね

アズサ

だったらきっと分かり合えるよｗ

アズサ

お姉ちゃんの宣言通り、血の繋がった親子二人で暮らせば？

ウイ

そんなの絶対に嫌！！

ウイ

私、やっと目が覚めたの！家族っていうのは血の繋がりじゃないんだって…

ウイ

パパの言ってた『心の繋がり』の意味がやっとわかった！

ウイ

死んだお母さんが、どれほど私に優しくしてくれたか…

ウイ

血の繋がりなんかなくても、あの人こそが私のお母さんだったの！

アズサ

やめて。お母さんの死を侮辱したあんたが、お母さんの娘面しないで。他人なんでしょ

ウイ

そんなこと言わないでよ！私、自分がどれだけ酷かったかわかったの！

ウイ

反省するから、だからまた、家族としてやり直しましょう！

アズサ

今更そんなこと言われても、もう遅いんだよ

アズサ

今の家族は、私とお父さんの二人だけ

アズサ

少しだけど血の繋がった義理の親子二人で、助け合って生きていくから

ウイ

やめてよ、私のパパだったのに！！

ウイ

全部あんたのせい、あんたが来たせいよ！！パパまで奪っていって、許さないんだから！！

アズサ

やっぱり、本当はちっとも反省してないんだね。尚更一緒に暮らすわけにはいかないよ

アズサ

じゃあね、頑張ってねお姉ちゃん

アズサ

あ、お姉ちゃんじゃなかったね

アズサ

じゃあね、赤の他人さん

～後日談～

アズサ

その後、義姉だったウイさんは母親から逃げるため、

アズサ

借金して何とか引っ越したようです

アズサ

しかし、母親はすさまじい執念でウイさんを突き止め、

アズサ

ウイさんはその度に逃げるのを繰り返し、

アズサ

借金はその度に膨れ上がるのだそうです

アズサ

今はどこで何をしているのか知りません

アズサ

私はあれから、家のことを率先してやったり、

アズサ

バイト代を家に入れたりして、少しでも落ち込んだ父を支えようとしています

アズサ

父も何かと、そんな私を気遣ってくれます

アズサ

先日、父と一緒に母の墓参りに行き、墓前で手を合わせました

アズサ

やっと母を、穏やかな気持ちで見送れそうです

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タナカトシキ

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