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貴方side

近くにあった茂みに邪魔な自転車を乗り捨て、公園の女子トイレに駆け込み鍵を掛ける

途中まではいつも通りの道を自転車で走っていた

家とバイト先の中間位にある街灯の少ない道に差し掛かった辺りから、後ろを着いてくる自分以外のタイヤの音に最初は珍しいと思った

そんな日もあるかと特に気にしてはいなかったのだが、その自転車は近くに寄ったり離れたりと後を着いてくるのに気付いた

決定的だったのは近付かれた時に聞こえる何処か荒い息に背筋が凍る

なんとか急いで漕ぐものの状況は変わらず、本格的に怖くなった私は公園のトイレに籠城する事に決めた

トイレに入って鍵を閉めてからも、中に入って来るんじゃないかとか上から入られるかもしれないという不安に指先の震えが止まらない

成る可くバレないように息を潜めて周りの音に警戒していれば、軽快に鳴るスマホの音に心臓が止まる

○○

(ちょっとやめてよこんな時に…っ!!)

誰からかも確認せずに電話を切って、通知音も無音にして再度息を潜める

バクバクと鳴る心臓が口から出て来てしまいそうだ

ジャリ…

段々と大きくなるジャリの音に思わずしゃがみ込んでは、咄嗟にトーク履歴の1番上にあった人へ位置情報を送る

涙がポロポロと零れ始め、しゃくりあげそうな喉を必死に抑え込んだ

○○

(お願い...早く来て.......!)

樹音

○○!!

ゆっくりと扉を開けてみればそこには誰もおらず、小走りでトイレの外へと逃げ出す

樹音

っ…○○!

○○

っ…お兄ちゃんっ…お兄ちゃん!!

樹音

ちょっ…と!…○○、大丈夫、もう大丈夫だから

そう言って強く抱き締めてくれる樹音兄ちゃんの腕の中で、久し振りに私は大泣きした

続く

ゆあまいファミリー

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