朝桐 海里
(椿ちゃんは、)
朝桐 海里
(俺を、選ばない__)
「海里さん!」
朝桐 海里
……ぇ、?
海里は俯いていた顔を上げた。
樋口 椿
はぁっはぁ……
樋口 椿
やっと、見つけた……ッ
目の前には息が上がった椿が立っている。
朝桐 海里
なっ、んで……
樋口 椿
探しましたよ、海里さん
朝桐 海里
…〜ッ!
どうしてここにいるのか、
それよりも俺を探してくれた事実が嬉しくて__
朝桐 海里
ぅ…ッ
海里の瞳にはボッと涙が溜まった。
樋口 椿
へっ!?
樋口 椿
え、えっと!ごごごめんなさい!
朝桐 海里
…つ、椿ちゃんは……わるくっ、ない
朝桐 海里
嬉しいんだっ、椿ちゃんが来てくれて__
樋口 椿
……
樋口 椿
そりゃ、来ますよ
樋口 椿
尊敬してて、大切な俺の先輩ですもん!
椿は太陽のような眩しい笑顔で笑った。
朝桐 海里
……ッ
朝桐 海里
俺……、椿ちゃんが好きだ
樋口 椿
は、
樋口 椿
っえ、ッ!?
口が止まらない。
気持ちが溢れていく。
朝桐 海里
秀星と運命だって、知ってるけどっ
朝桐 海里
好きで好きでたまらない
朝桐 海里
大好き…好きだよ椿ちゃん
朝桐 海里
ごめんね、好きになって__
朝桐 海里
運命の相手がいるのに__
樋口 椿
っ嬉しいです!!
朝桐 海里
えっ
樋口 椿
ありがとうございます!こんな俺を好きでいてくれて__
樋口 椿
へ、返事は今度します……けど
樋口 椿
今言えることは……
樋口 椿
俺、「運命」なんて信じてないです
朝桐 海里
……でも、2人は事実「運命の番」で
樋口 椿
…はい
樋口 椿
そうなのかもしれないです
…ズキッ
樋口 椿
Ω…の本能が言ってるんです
樋口 椿
「秀星と結ばれろ」って___
朝桐 海里
……なら
樋口 椿
でも、
樋口 椿
それは俺の「気持ち」じゃない
樋口 椿
運命なんてモノで俺の気持ちが決めつけられてたまるか……
朝桐 海里
椿ちゃん……
樋口 椿
運命の赤い糸__
樋口 椿
そんなものが実際あって
樋口 椿
俺の左手の小指に勝手に結ばれているのなら__
樋口 椿
ハサミを使って、
樋口 椿
それとも、歯で噛み切って__
樋口 椿
赤い糸なんて断ち切ってしまいます!
樋口 椿
その後、本当に好きな人の小指に結び直しちゃえば良いんですよ!
樋口 椿
俺の人生を赤い糸で縛られたくなんてない!
樋口 椿
俺"だけの"人生ですもん!!
樋口 椿
……っやば
樋口 椿
なんかめっちゃ語っちゃった……
朝桐 海里
……
海里はポカンと口を開けていたが、その後プッと吹き出した。
朝桐 海里
ふっ、あはははッ
朝桐 海里
赤い糸を結び直す…か!
朝桐 海里
そんな発想なかったな!
樋口 椿
……ふふ
樋口 椿
そうですかね?
朝桐 海里
っ、あはははっ
……そうか
俺は椿ちゃんを好きでいいんだ
朝桐 海里
ありがとね、認めてもらえた気がするよ
……なら、これからは容赦しない
朝桐 海里
相手が秀星でも負けない
朝桐 海里
今回こそは奪われたくない
朝桐 海里
俺の1番大切な人__
樋口 椿
へっ?
朝桐 海里
椿ちゃん
海里は椿の頬に触れ、そっと唇を重ねた。
樋口 椿
……っ、!?!?
朝桐 海里
好きだよ
朝桐 海里
俺に惚れて、赤い糸を結び直してね
樋口 椿
ぅ……〜〜〜ッ
樋口 椿
いい、い、いつも海里さんは勝手なんです!
樋口 椿
この前だって俺のファーストキスを奪って__
朝桐 海里
じゃ、今回はセカンドキスかな
朝桐 海里
今からサードキスも奪う?
樋口 椿
っ、
樋口 椿
い、やです__
椿はかぁっと顔を赤くさせた。
朝桐 海里
っ、かわい……ッ
いっぱいいっぱい期待をしてしまう
恋敵の秀星は俺のことなんかライバルとも思ってないのかもだけど__
でも、怖くはない
奪われる怖さよりも、椿ちゃんを俺のものにしたい気持ちの方が
強くなってしまった。