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朝の教室は、ざわざわとした声に包まれていた。

____

え、ほんとに?

____

まじで?

____

やっぱり付き合ってんじゃん!

その言葉に断片が、耳に飛び込んできた瞬間、私は何かを察した。

足元が、急にふわっと浮いたような感覚になる。

席に着くと、前の方が誰かが笑っていた。

____

ねぇ、緑と橙って、ついに付き合い始めたんだって

隣の女子が友達に囁く。

私は、ペンを握りながら手を止めた。

あぁ、やっぱり

昨日、返事をしなかったメッセージ。

あの「ちょっと話したい」は、たぶん

_これのことだったんだ。

言葉にさせる前に、知ってしまった。

最悪のタイミングで。

目の前にいる緑は、いつも通り。

でも、少しだけ背筋がまっすぐで、表情がどこか柔らかく見えた。

幸せそうで、眩しくて、直視できなかった。

桃 。

「「……おめでとう

そう言えたら、少し離れ楽になるだろうか。

でも言えなかった。 声が、出なかった。

頬の内側を噛みしめて、私はノートにただペンを走らせていた。

書いてる内容なんて、頭には何ひとつ入ってこない。

いつの間にか、私だけは取り残されてたんだ。

気づいた時には、もう誰も待っていなかった。

放課後。廊下で緑とすれ違った。

緑 。

桃、昨日_

桃 。

あ、ごめん。

桃 。

ちょっと急いでるから

目を合わさずに言った言葉は、自分でもひどいと思った。

でも、今の私には、それが精一杯だった。

緑が、少しだけ立ち止まった気配がしたけれど、私はもう振り返らなかった。

前を向いたら、涙がこぼれ落ちそうで怖かったから。

好きって言えないまま、終わるんだ。

ずっとそばに居たのに、たった一言も届かなかった。

気づいたら、置いてかれてた。

それが、私の恋の終わりだった。

君が笑うたび、心臓が痛い

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