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朝の教室は、ざわざわとした声に包まれていた。
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その言葉に断片が、耳に飛び込んできた瞬間、私は何かを察した。
足元が、急にふわっと浮いたような感覚になる。
席に着くと、前の方が誰かが笑っていた。
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隣の女子が友達に囁く。
私は、ペンを握りながら手を止めた。
あぁ、やっぱり
昨日、返事をしなかったメッセージ。
あの「ちょっと話したい」は、たぶん
_これのことだったんだ。
言葉にさせる前に、知ってしまった。
最悪のタイミングで。
目の前にいる緑は、いつも通り。
でも、少しだけ背筋がまっすぐで、表情がどこか柔らかく見えた。
幸せそうで、眩しくて、直視できなかった。
桃 。
そう言えたら、少し離れ楽になるだろうか。
でも言えなかった。 声が、出なかった。
頬の内側を噛みしめて、私はノートにただペンを走らせていた。
書いてる内容なんて、頭には何ひとつ入ってこない。
いつの間にか、私だけは取り残されてたんだ。
気づいた時には、もう誰も待っていなかった。
放課後。廊下で緑とすれ違った。
緑 。
桃 。
桃 。
目を合わさずに言った言葉は、自分でもひどいと思った。
でも、今の私には、それが精一杯だった。
緑が、少しだけ立ち止まった気配がしたけれど、私はもう振り返らなかった。
前を向いたら、涙がこぼれ落ちそうで怖かったから。
好きって言えないまま、終わるんだ。
ずっとそばに居たのに、たった一言も届かなかった。
気づいたら、置いてかれてた。
それが、私の恋の終わりだった。