テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
パンダをひとしきり追い回して、真希は肩で息をしながら木刀を収めた。 結局、朝練はろくにできないまま、空はすっかり明るくなってしまった。 真希:「……ったく、調子狂うぜ」 真希はわざと憂太を見ないようにして、足早に校舎へ向かう。 後ろから、「真希さーん、待ってよ」といういつもの、でも少しだけさっきの熱を帯びた声が追いかけてくる。 ——それから、授業中もずっと、耳元が熱かった。 教科書を読んでいても、黒板を見ていても、ふとした瞬間にあの指先の感触が蘇って、集中なんてできるわけがない。 放課後。 誰もいなくなった夕暮れの廊下を歩いていると、角のところで、壁に寄りかかっている人影があった。 真希:「……またお前かよ。待ち伏せか?」 真希が呆れたように声をかけると、憂太はふっと顔を上げて、朝よりも少しだけ大人びた表情で笑った。 憂太:「あはは、バレちゃった? ……真希さん、ちょっといいかな」 真希:「……あ? 何だよ。また寝癖か?」 朝のことを思い出して、真希が少し不機嫌そうに(でも頬を赤くして)言い返すと、憂太は一歩、真希との距離を詰めた。 オレンジ色の夕日が、彼の瞳を怪しく光らせる。 憂太:「……ううん。……あのね、真希さん」 憂太の声が、朝よりも低く、耳元に届く。 憂太:「……さっきの。寝癖、本当はついてなかったよ」 真希:「…………っ!?」 驚いて足を止めた真希。 そんな彼女を置いて、憂太は悪戯っぽく、でもどこか真剣な瞳で微笑んだ。 憂太:「……わざと触りたかっただけ。……じゃ、また明日ね」 彼はそのまま、驚きで固まった真希を置いて、軽やかな足取りで去っていった。 真希:「(……あいつ、……マジで、……っ)」 静まり返った廊下で、真希は真っ赤な顔をして自分の耳に手を当てる。 乙骨憂太という男の「ズルさ」に、心臓が今度こそ壊れそうだった。 (つづく)
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
3
255
83
13