桜太
ふーん、こんなとこあったんだ
笑孤
わっ
ボーッとしていて先生が来たことに気づかなかった
桜太
この海昔から来てたけど
桜太
家近かったしこんなとこで休まなかったわ
笑孤
はは
笑孤
…ありがと
桜太
ん?
笑孤
心配して来てくれたんでしょ
桜太
いっいや別に!?
笑孤
ふふ
笑孤
…あのね
笑孤
嶺音先輩は…中2のときからずっと大好きな彼氏がいて
笑孤
今も一緒に暮らしてるって…言ってたの
桜太
…悲しくて現実逃避ってことじゃねーの
笑孤
背けないでよ
笑孤
気づいてるでしょ違和感に
桜太
…
笑孤
嶺音先輩は本当にいつも楽しそうで
笑孤
彼氏が大好きで
笑孤
あの笑顔は誰がなんて言っても嘘の笑顔じゃなかった
笑孤
でも雨月先輩はずっと片思いしてた子が亡くなったって
笑孤
じゃあどうしてあんなに楽しそうなの?
桜太
…生きてるって思い込んでんじゃねーの
桜太
あんま深読みすんなって
先生も気づいてんだ
これ以上知らない方がいい
だからなにもわからないふりをしよう
笑孤
…っ
悪寒がしてからあたしだってわかってる
笑孤
そう…だよね
触れない方がいい
嶺音
夏芽ちゃん、だいじぶ?
嶺音先輩の目が
笑孤
はい!
これ以上突っ込むなって
笑孤
(これでいいのかな…)
知らなくていいって
桜太
わり、夏芽しんどそうだし帰るわ
もう触れないけど
笑孤
あ…うん、ありがとう
恐怖を感じる
笑孤
ありがとう…
桜太
おう
あたしも先生も
きっとわざと
あの話題には触れない
笑孤
(折角先生が心配してあたしを部屋に入れてくれたんだから)
笑孤
(充実しなきゃね)
笑孤
(もう忘れよう)
笑孤
笑孤
なんか先生の家って全体的に和室ですね
桜太
まあな
笑孤
似合いません
桜太
あ!?
桜太
うちの親父茶道家元だぞ
笑孤
親父は似合うのか
桜太
「は」ってなんだよ「は」って!
笑孤
へぇー
笑孤
じゃあお茶たてれんの?
桜太
まあ一応
笑孤
てか跡継がなくていいんだ
桜太
まあ俺が継ぎたくないっつったから
桜太
自由主義なんでね
笑孤
ふーん
桜太
弟が継ぐよ
笑孤
へぇー確かに雨月先輩は和服とか似合いそう
桜太
しばくぞ…
カシャカシャカシャ…
桜太
ん
笑孤
うわすげえ
笑孤
本格的
桜太
口悪ぃな
笑孤
お手前頂戴します
笑孤
笑孤
いただきます
スッと飲み口を正面からずらす
桜太
あれ、作法知ってんの?
笑孤
もちろん
笑孤
あたしだって金持ちんとこの子だし
笑孤
女優やってたし?
桜太
それ関係あるか?
笑孤
知らん
一口、抹茶を飲む
笑孤
笑孤
うん、うんまい!
桜太
結構なお手前で、とかだろ(笑)
桜太
そこはやらんのかい
笑孤
堅苦しいじゃん
桜太
さっきまでのどこ行ったよ
笑孤
ははっ
笑孤
茶道でもよく言うけどさ
笑孤
一期一会ってあんじゃん
桜太
うん
笑孤
今のこういう
笑孤
先生といられることが全部
笑孤
そうだと思うんだよね
笑孤
先生好きだよ
桜太
…っ
笑孤
笑孤
あれ?怒んないの?
笑孤
調子狂うんだけど──
笑孤
…んっ!?
一瞬間、なにが起きたのかわからなかった
先生が…あたしに
笑孤
せん…せ?
キスをした
桜太
バーカ
桜太
大人をからかっちゃだめだぞ
そんな照れ隠しをする先生が
愛しくてたまらなかった