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いるま
部屋の天井をぼんやりみながら
スマホを手に取った
通知が来てパッとスマホをみたら
「こさめ 配信開始」
そう書かれていた
いるま
そう、こさめという配信者はいつもこの時間に配信をしている
この時間になるとこの人は騒がしい
画面越しに届くのは、明るい声とアホっぽいノリ
いじられたり、バカにされたり、
それを笑い飛ばすテンション
でも、それがこの人の"居場所"だと思う
そういうテンションでいることで誰にも嫌われずにいられるからな
俺も一緒だ
嫌われないために本当の自分を隠して愛想良くする
そうすれば俺は嫌われない
いるま
イヤホンをつけて再生する
こさめ
こさめ
こさめ
今日も元気でうるさい声
こさめファン
こさめファン
こさめファン
コメント欄はいつも通りにぎやか
本人はそれを見て…
こさめ
こさめ
って笑ってる
いるま
でも、今日は少し違って見えた
俺はずっと黙って配信を見てただけのただの視聴者
コメントなんてした事ないしもちろん名前なんて覚えられてない
いつも通り配信を見に来てただけなのに
今日、ふと思った
いるま
ほんの少し声のトーンが落ちてる気がした
笑い声の後、少し空気が止まる瞬間
沈んだようなため息に近い「はは…」という声が聞こえた
いつもなら気づかないはずだが何故か気付いてしまった
配信が終わってスマホの画面が暗くなる
部屋の静けさが戻ってきて、俺は一度目を閉じた
いるま
いつもならスッと切って終わり、
勉強に戻るが…
あの声が引っかかってそれどころじゃなかった
あの一瞬の"無理してる声"
ずっとバカキャラでいることに疲れたような声
いるま
自分でも不思議だった
画面の向こうの誰かに
"本気で気付いてしまう"なんてな
Kos__0623
俺は自分でもびっくりした
DMなんて1回もした事ないのに
気になりすぎてDMを開いたんだからな
いるま
書いては消して、書いては消してを繰り返す
いるま
俺なんかが言う立場じゃないと思った
______でも
「誰か気付いてやれよ」と思った瞬間、
"俺が言わなきゃ"に変わっていた
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
1文字1文字、慎重に
でも、止められなくなって気付いたら送信していた
いるま
返信なんていらん
言わないと落ち着かなかっただけだから
「この人の"本当"に気付いてしまった時点で、」 「もう俺は"ただの視聴者"には戻れない」という事に、この時の俺はまだ気づいていない