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グレイスが部屋を出て行ったあと。
ステラ
静寂が部屋に戻る中。
ステラは、グレイスの席の前に出されたティーカップを手に取ると、余ったその中身をゆっくりと喉に流し始めた。
やはり警戒していたのか、グレイスは出されたそのカップに念のため一切口はつけていなかったが、しかし。
今となっては、その判断は正しかったと言える。
なぜならその紅茶には、ステラの仕込んだ毒が入っていたのだから。
ステラ
と、半分まで飲み干したところで、突如隣にいたカルセインがぱっと彼女の手からカップを取り上げ、彼は残りの紅茶を飲み干してしまう。
ステラ
ステラ
カルセイン
カルセイン
カルセイン
ステラ
彼が口をつけたのは、間違いなくステラが口づけた場所。
幼稚な悪戯にステラはため息をついたものの、そんな彼女を前に、カルセインは満足げににっと口角を上げて笑ってみせるだけだ。
ステラが再び深いため息をつく。
カルセイン
カルセイン
カルセイン
ステラ
ステラ
カルセイン
カルセイン
ステラ
ステラ
ステラ
ステラ
カルセイン
カルセイン
カルセイン
ステラ
シオン
シオン
シオン
ステラ
カルセイン
カルセイン
カルセイン
ステラ
ステラ
ステラ
ステラ
ステラ
ステラ
ロゼリア・ガルシオン。
彼女は公爵家の長女であり、ガルシオンの「2番目」の子供であり。
あの最有力候補者、レグルス・ガルシオンに次ぐ、継承戦の有力候補者だ。
…しかし。
ステラ
ステラ
その時、ステラがちらりと扉の外に目を向けた。
すぐさまカルセインが走り出し、ドアの向こうの人物を部屋の中に投げ飛ばす。
メイ
カルセインに投げ飛ばされ、床を転がり、ステラの前へと姿を現した人物。
…それは、グレイスの侍女であるメイ・リリアンヌだった。
メイ
ステラ
ステラ
ステラ
メイ
ステラ
ステラ
メイ
メイ
ステラ
ステラ
ステラ
ステラ
メイ
ステラ
ステラ
ステラ
ステラ
メイ
メイ
はっ、はっ、はっ、と、彼女の呼吸が早まる音が聞こえる。
…だがしかし、次の瞬間。
メイ
メイ
ステラ
しばらくして聞こえてきたのは、じゃり、と、ステラがメイの前に金貨の入った小袋を投げ捨てた音だった。
メイ
メイ
ステラ
ステラ
ステラ
ステラ
メイ
メイ
ステラ
ステラ
メイ
メイ
メイはそう言って一度だけ頭を下げると、ばたばたと部屋を出ていった。
静寂の戻った部屋に、ステラが小さく息をつく音が響き渡る。
シオン
シオン
シオン
ステラ
ステラ
ステラ
ステラ
カルセイン
カルセイン
ステラ
ステラ
カルセイン
カルセイン
ステラ
ステラ
シオン
…シオンはたまに、妹である彼女が恐ろしく感じる時があった。
十四歳という幼い年齢の割には、大人も顔負けする落ち着き払った態度と完璧な所作。
何を考えているのかわからない上に、魔術の類かと思われるほど優れた先見の明を持ち、
温情かと思えばそれは踏み台の一つにしか過ぎず、目的のためなら手段も問わない冷徹さ。
彼女が継承戦の最弱候補者に関わらず、この歳まで生き残れてきたのは、何もシオンやカルセインのおかげではない。
飛び抜けた高い知力と残忍さを伏せ持つガルシオンの血を、間違いなく彼女が誰よりも濃く受け継ついでいるからだ。
ステラ
ステラ
ステラ
ジーク
彼女はそう静かに呟くと、部屋の隅に倒れる、栗毛色の髪の男に向かって目を向ける。
そこには、手は縛られ、脚は折られ、肩や腹など体のあちこちからは大量に血が滴り落ちている…
グレイスの元婚約者であり、ステラの「2人目の間者」である、ジーク・ブラッドベッツの姿があった。
ステラ
ステラ
ぱらぱらと砕けた石が粉となり、天井から降り注ぐ、崩落した地下監獄。
…そこには、1人の男が立っていた。
ロゼット
男の名は、ロゼット・ガルシオン。
歴代最多となる九人の妻を娶り、その間に生まれた十一人の子供を持つ、
正真正銘、現ガルシオン公爵家の当主だ。
ロゼット
今はもう没落してしまったが、彼は名門【医術】のアクロイド伯爵家の出身であり、
二人の兄と一人の弟、妹を手にかけ、当主となった、かつての継承戦の生き残りでもある。
しかし、彼は今も昔も一貫として、当主の座に興味はない。
…本当に全部、どうでもいいのだ。
彼女を失ったあの日から、彼は何もかも興味を失った。
ロゼット
ロゼット
アビス
ロゼットは、地下監獄の中央にいつまでも佇む彼女の幻影、黒髪の幼子に手を伸ばす。
それは、片割れのヘルと共にグレイスに連れられ、先日地下監獄を去ったはずのアビス・ガルシオンの姿だった
ロゼット
ロゼット
アビス
ロゼットは苛立ちに任せるまま、彼女の首をへし折ろうと、アビスに向かって手を伸ばす。
…しかし。
次の瞬間。
ロゼット
突如、ぱき、と。
彼女の姿は、一瞬にしてぱらぱらと砂と化してしまった。
ロゼット
ロゼット
ロゼット
ロゼット
静かな地下監獄に、ロゼットの声がぽそりと小さく響き渡る。
その声に答える者は、もはやこの世に存在しなかった。