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ハラム
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目の前に桜が広がっていた。 そこはとても不思議な場所で、一年中温かく、桜が咲き誇ってる素敵な場所だ。 目の前に、桜の花びらで綺麗に着色された小屋が見えた。 私が戸を叩くと、小屋の中から、杖をついたお婆さんが一人で出てきた。 お婆さんは私の所に来て、私をじーっと見た。 「あんたがカナエかい?」 やさしい声だった。 私は返事をすると、お婆さんは笑い、杖を動かしながらゆっくりと移動した。 小屋の後ろには、刀傷のような物がつけられている木の人形が5体いた。 その周りには咲き誇る桜。奥には、赤く染まってる山の山頂が水色の空と重なっていた。 この景色で忘れてたけど、もう秋だ。 お婆さんを見た。お婆さんは、杖を片手に持っていた。 まるで刀のように持ち、言い放った。 「花の呼吸 弐ノ型 御影梅」 その声が聞こえたとたん、カカカカカン!と木と木がぶつかる、拍子木のような綺麗な音が聞こえた。 木の人形は震えていた。 お婆さんは杖をもう一回つきはじめ、「どうだい?すごいだろう?」と言い私は膝から崩れ落ちた。 お婆さんは「おいで」と手を引いて、家に連れ込んだ。 家の中は囲炉裏があったおかげで温かく、囲炉裏の上でコトコトと味噌汁が作られていて、湯気がのぼっていた。 お婆さんはそれをすくい、お椀にうつし、私の前においてくれた。 お椀の中には大根と大根の葉が入っていて、お米がキラキラ光っていた。 いただきますと言ったらお婆さんは笑い「どうぞ」と言ってくれた。 味噌汁をすすると、鰹節のいい香りが鼻に抜けた。 味噌汁と一緒に流れ込んできた大根は口で溶け、大根の中にこもった熱が舌を刺激した。 葉っぱは、葉の方は汁を吸って柔らかかったが、茎はシャキシャキしてた。 米を口に入れると、汁を吸い、味付けがされていた。味噌汁は少ししょっぱいけど、米と食べると、ちょうどよかった。 多分最初は少し固めに米を炊き、味噌汁と一緒に煮ることでいい感じの柔らかさにしたのだろう。 どれも真似できない芸当だ。 強くて、料理もうまい。 私は呼吸を会得できるのだろうか? 不安と暖かさが一緒に胸いっぱい広がった。 お婆さんの名前は妙美(たえみ)と言うらしい。 妙美さんは昔、まだ小さい頃、親を鬼に殺され、当時の炎柱に救われたらしい。 鬼に復讐をしたい思いで鬼殺隊に入隊したらしい。 当時は最強の柱をやっていた。 首を切った鬼の数は数えきれない。 今は柱を引退後、育手をやっているらしい。 私と・・・いや、しのぶと同じだ。 私の考えとまるっきり違う。 私は自分自身の思いを伝えられなかった。 一週間がたっただろう。 私が庭で稽古をしていると、 鴉が木の人形の上にとまった。 手紙をくくりつけていた。 手紙をとると、鴉はどこかへ行ってしまった。 手紙を開くとしのぶからの手紙だった。 私は嬉しく、すぐに手紙を大事に閉まった。 すぐに返事を書いた。 1年後 私は、呼吸を1つだけ扱えるようになった。 肆ノ型の紅花衣だった。 私はすごく嬉しかった。まだ完全に使いこなせてないけど、 妙美さんはそんな私を笑って、見守ってくれた。 そういえばこの1年全く怒られた事がない。 妙美さんは優しいのだろう。 けれど、妙美さんは私に真剣を持たせてくれなく、ずーっと木刀だった。 それが気に食わなかった。 二ヶ月後 私は夕食の買い出しに出掛けた。 こっそり、妙美さんの日輪刀を背負って。 私だって呼吸使えるんだもの。 そろそろ真剣くらい・・・ 私は少し長く、買い出しに出掛けてしまい、夜になっていた。 鬼が出る時間帯だった。 早く帰らなきゃ。 私は小走りで帰った。 山のすぐ近くで、叫び声が聞こえた。 私はその音を頼りに、叫び声がする方向にむかった。 そこに、鬼に襲われている家族がいた。 鬼は一般的な人間の形をしていたが、目が1つしかなかった。 今こそ、呼吸を使って、襲われてる人と哀れな鬼を救うんだ。 私は鬼の前に立ち塞がった。 鬼はキョトンとした目で私を見てる。 今だ! 私は花柄の刀袋から刀を取り出し、呼吸を整えた。 「花の呼吸 肆ノ型 紅花衣」 次の瞬間 刀は綺麗な放物線を描いた。 制御しきれず、手から抜け落ちてしまったのだ。 刀が進む先にはあの家族が! 家族は目を閉じて子供を抱き抱えてる。 私はそれをただ見てることしかできなかった。 ビュン 鬼の方から鋭い音が聞こえた。 鬼を見ると、そこには妙美さんが、私の持っていた刀を持って鬼の首を切っていた。 妙美さんの花柄の寝巻きは、草屑だらけで、袖が切れていて、中から血がゆるゆると流れ出していた。 鬼の首はゴロゴロと傾斜を転がり、そして消えた。 妙美さんは渋い顔をしていた。 その後家族は私達にお礼を言って、そそくさと帰っていった。 妙美さんは刀袋を担ぎながら、家までの道のりを、顔を下に向けながら歩いていった。 家に着くと、妙美さんは刀を持ちながら、「来い」と低い声で言った。 裏に着くと、妙美さんは刀を袋から抜き出し、鞘を抜いた。 桃色の刃が、月光で、淡く光っている。 ビュンビュンと桃色が動いた。 裏にあった木の人形、5体全ての首が切れていた。 私は何をしてるのか分からなかった。 妙美さんは刀を鞘に戻すと、 私のところに歩いてきた。 バチン! 大きな音が耳の近くで鳴り、私の頬に熱い物が流れた。 私はよろめき、腰を抜かした。 「ふざけるな!」 妙美さんの怒鳴り声が聞こえた。 「お前!さっき何をした! 私が来てなかったら、家族は死んでたんだぞ!」 声がかすれながらも怒鳴った。 「おい!カナエ!お前鬼殺隊になりたいんだろ!」 私は恐る恐るうなずいた 「鬼殺隊はか弱い人を鬼から救う役目、義務がある!けれど、お前が!か弱い人を傷つけ、殺したりしてみろ!鬼と変わらんぞ!」 言葉が胸にグサグサと刺さった。 「弱いものがいるのは悪いことではない!だが!弱いものが無理に強がり、弱いものを傷つける!最低な行為だ!」 「だから!お前は強くならなくちゃならない!だから私の所で、修行してんだろうが!」 「見てみろ!」 妙美さんは切った人形を指差した。 「刀は人間より硬い木を平気で一刀両断できる!刀は人を守る反面、刀を扱う人によって、守る人を傷つける凶器になる!」 「私が数秒遅れてたら、お前は人を殺してたんだぞ!お前の手はもう少しで血で汚れる所だったんだぞ!」 「そんな手で妹の手を握る事が出来るのか!?」 しのぶの顔が頭に鮮明に蘇った。 私は泣いた。妙美さんは私に刀を押し付け、「この刀はお前にやる。いいか!覚えとけ!これが刀の重さだ。これが刀を持つ責任だ!」 私は、重い刀と妙美さんの思いを受け取った。 時がたち、私は背も伸び、呼吸を全て覚え、最終選別に向かった。 しのぶがいたら分かりやすいように、あの羽織を纏って。 藤襲山に到着すると、いっぱい人がいた。 男も女もたくさんいた。 この中の誰かが絶対に死ぬ。 しのぶを探したが、見当たらなかった。 もしかしたらこの最終選別じゃないかもしれない。 だけど、先に選別を行って そこで・・・ 首を振った。しのぶは生きてる!絶対に! 「姉さん!!!」 後ろから声が聞こえた。振り向くと・・・ 声を出す前に抱きついていた。 紫色の瞳に、小さい愛くるしい妹だ。 しのぶは私を見て、久しぶりと言った。 最終選別が始まると、しのぶと私は岩に隠れ、刀を置き、休んだ。 しのぶの刀を見た。 鞘が異様に大きい。 しのぶに刀を見せてほしいと頼み、刀を受け取った。 軽い。刀が軽すぎるのだ。 刀を回してみたら、鞘の中に、液体が入ってるような音がした。 しのぶに訳を聞くと しのぶも呼吸を習いに行ったが、体が小さく、刀を振る体に向いてないことを知り、我流の呼吸を編み出したそうだ。 刀を抜くと、刀の刃の部分がほとんどなく、刃先が先端にちょこんとついてるだけだった。 呼吸の名を蟲の呼吸。 刃先に毒を塗り、それを鬼に突き刺して殺す技だ。 鬼はかなり苦しんで死ぬだろう。 実際に見ると、まるで蝶のように、華麗に舞い、綺麗な躍りを見てるようだった。 最終選別が終わった。 しのぶと私は生き残った。 後は、長髪の、無表情な狐の面を着けてる少年。水の呼吸の使い手のようだ。(彼女は知らない。この水の呼吸の使い手の名前が冨岡義勇だってことを) 後は、背が少し大きく、勾玉を首につけている青年。(獪岳だった。)しか生き残らなかった。 フラフラ家に向かう道中、私は隊服を見た。 妙美さんにこれを見せて喜ばせてやろう。 そう思って家に向かった。 「ただいま戻りました。」 夜だったので、静かに戸を開けると、妙美さんが倒れていた。 「妙美さん!」 妙美さんを抱き抱えると、ぐったりと、重い。 力が全くなかった。 胸に耳を押し当てた。 無音だ。 すぐに医者を呼び、見てもらった。 寿命だった。 死後2日だった。 たった一人で、この世を去ったのだ。 私は言った。 「ねぇ私をほめてよ。」 「ねぇおかえりって言ってよ。」 「ねぇもっといっぱい料理教えてよ。」 その白く透き通った綺麗な肌は、もう何も言わない。 数日がたち、妙美さんが戻ってきた。 誰も引き取り手がいなかったそうだ。 私は遺品を整理しようと立ち上がり、妙美さんの机の引き出しを開けた。 中に手紙があった。 カナエヘ と書かれた紙を取り、中身を読んだ。 「カナエヘ」 「あなたがこの手紙を読んでる時はもう私はいないでしょう。」 「自分で分かっていました。もう、長くないことを。」 「初めて出会ったあの日、あなたが来たとき、鬼に殺された孫が帰ってきたみたいで嬉しかった。」 「私はあなたと一緒にご飯を食べると、今までおいしく感じなかった料理が、あなたと食べると魔法のようにおいしくなった。」 「あなたが初めて呼吸を発動したとき、どれほど嬉しかったか。」 「あなたが人を傷つけそうになった時どれほど悩んだか。」 「あなたに初めて叱ったとき、どれほど心配したか。」 「あなたが最終選別に行く時、どれほど安心したか。」 「決して一人で死んだなんて思わないでください。」 「私はあなたを見守ってますよ。」 「少しの間だけだけど」 「あなたと一緒にいれてよかった。」 「あなたの母親になれてよかった。」 「私は幸せでした。」 「ありがとう 妙美より」 最後の文字が霞んで見えない。 妙美さんの字が少しずつ歪んでいく。 妙美さんを抱き締め、泣き崩れた。 ありがとう妙美さん。 私は前に歩くよ。 手紙の裏に、小さなタンスの鍵が張り付けてあり、タンスを開けると、中からお金がたくさん出てきた。 このお金で、立派なお墓を建てた。 とてもとても立派なお墓だ。 何年も過ぎ、私は柱になっていた。 今でも必ず、妙美さんの命日にお墓参りに行っている。 今年はしのぶがついてきた。 しのぶも手をあわせた。 その後、買い出しに行く道のりで、一人の男がボロボロの女の子を連れて歩いていた。 捨て子かな? その女の子に近より話しかけた。 女の子は何も話さず、ただ空虚な目をしていた。 どうやら女の子は売られるらしい。 男は私をどかそうと手をのばしたが、しのぶが振り払い、お金をばらまいた。 女の子を買ったのだ。 あらあら買い出しのお金が。 しのぶは女の子と手を繋いでる私を引っ張って、走った。 蝶屋敷に着くと、アオイが女の子を不思議そうに見つめてお出迎えしてくれた。女の子は髪がボサボサで、しのぶがお風呂に入らせた。 私は名前を何にするか考えた。 う~ん 「パパ!妹の名前ね・・・」 昔の私の台詞が頭に流れた。 そっか そうだよね 名前が決まった。 まさか、家族を失った日に新しい家族が出来るなんてね。 しのぶが帰ってきた。 カナヲを見ると、さらさらの髪が綺麗で、いい匂いだった。 けれど、カナヲは許可をしないと、ご飯も食べないし、なにもしないらしい。 私は妙美さんの大事にしてた形見の銅貨を渡した。 もし、何か困ったらこれを投げて、決めなさい。 それを言ったらカナヲはうなずいた。 銅貨をギュッと握りしめた。 数ヶ月後に指令が来た。 ある町で、女の人だけが消息を絶ってるらしい。 そこで、鬼をおびき寄せるために、女の柱が行くらしい。 そして、私が選ばれた。 町に着くと、ツンと血のにおいがした。 私は走り、家を一つ一つ回った。 誰もいないのだ。 ボリボリ。 あの骨を噛み砕く音がきこえた。 私は音をたよりに、進んだ。 さらに音が大きくなる。 ボリボリ。 ボリボリ。 一軒の戸が開いていた。 中にいた。 鬼だ。まるで、頭から血を被ったような鬼だった。 「う~ん?」 鬼が振り向いた。 「あ!女の子だね!」 目を見開いた。 瞳に、上弦の陸と刻み込まれてるのだ。 十二鬼月だ。 鬼の中で最強の鬼の一人だ。 強い。 ポイと上弦の陸が持っていた物を私の方に投げた。 私の足にドンとあたった。 「あ!ごめんごめん!」 鬼が謝った。 私は投げられた物を見た。 大きさ的に分かってしまった。 人の頭だ。 そして、その頭が誰のかも。 橙色の髪、綺麗な形の顔。 私達の恩人だった。 あの頃の汗で固まった橙色の髪は赤い血にぬれて、固まっていた。 「よくも・・・」 怒りが収まらなかった。 「何?」 鬼は首を傾げる。 パチッと懐中時計を開いた。 夜明けまで後15分 少し粘れば。 「花の呼吸 肆ノ型 紅花衣」 刀をすぐに抜いて、鬼の首に振った。 ガキィ! !? 刀が止まった。 鬼が刀を?いや、帯刀してなかった。 扇だった。扇が刀を受け止めてるのだ。 「ふーん。花の呼吸だね!初めて見たよ!」 「弐ノ型 御影梅」 ガキキキキキキ!!!! 自分を中心にした連撃。これなら! 連撃を終えると、刀が扇子と重なっていた。 一撃も当たってないのだ。 「じゃあ俺も!」 扇を振った。 「血鬼術 蓮葉氷」 冷たい! 肺が凍りそうになった。 「ふーん、強いね!」 「五ノ型! 徒の芍薬!」 ガキキキキキキ 連撃だ。とにかく戦え! 「陸ノ型! 渦桃!」 首を狙った。 いける! しのぶ待ってて!今帰るから! スカッ! 空振って、横転した。 どうして?この刀の長さなら確実にあいつの首を・・・ 刀を見て察した。 折れてるのだ。刀が 刃先が上弦の陸の下に落ちてる。 扇で折られたのだ。 体感だけど、夜明けまで5分。 折れた刀で、生き残れるの? いや、生き残る。 これしかない。 妙美さんに切り札として、教えてもらった。あの技だ。 失明しようが関係ない! 何をしてでも、しのぶの元へ帰るんだ! 「花の呼吸 終ノ型 彼岸朱眼!」 目が赤く染まった。 相手の動きが遅い! 行ける! 「花の呼吸! 参ノ・・・」 ドン! 何か体にあたった。 私はそれを見た。 「西・・・」 ズバン! 肩に熱いものが走った。 ブシュウと音を立て、血が吹き出た。 扇に血がついてる。 負けた。 負けたんだ。 微かに聞こえた声 「あーもう、朝だねー。ごめんね!食べれないや!楽しかったよ!じゃあね」 手を振ってどこかに消えた。 クソ・・・ しのぶ カナヲ ごめんね 「・・・ん」 「・・・さん!」 「姉さん!!!」 目を開けた。 彼岸朱眼のせいで少ししか見えない。 霞がかった世界で、美しく輝く、紫の宝石。 声を振り絞った。 「しのぶ・・・」 もう、しのぶに別れを言う時間がない。 最後にしのぶに伝えた。 「しのぶ 鬼殺隊をやめなさい。」 「あなたは頑張っているけど、多分しのぶは・・・」 言えなかった。勝てないなんて。 「普通の女の子の幸せを手に入れて、お婆さんになるまで生きてほしいのよ。」 「もう、十分だから。」 しのぶの声が遠くきこえた。 「嫌だ!絶対にやめない!姉さんの仇は必ずとる!言って!どんな鬼なの?どいつにやられたの!?」 「姉さん!!!早く教えてよ!」 「こんなことされて、普通に生きていけない!」 「姉さん!」 悲鳴嶼さんに叫んだ言葉と全く一緒だ。 私は鬼の特徴を伝えた。 そして、誰の声も聞こえなくなった。 目の前が真っ暗に・・・ 目が覚めると、花が咲き誇ってる場所に立っていた。 ここは? 「カナエ」 「カナエちゃん」 振り返った。 そこには西宮さんと妙美さんがいた。 私は二人に抱きついた。 そっか私は死んだんだ。 妙美さんは 「よくやった。」 と、頭を撫で、抱き締めてくれた。 「遅いよ。」 私は抱き締めた。 西宮さんの方に行き、お礼を言った。 もし西宮さんがいなかったら、今の自分達はいないかも知れなかった。 「大きくなったね。」 と、かわいらしい手を私の頭に置いた。 次の瞬間 「おばーちゃーん!」 女の子の大きな声がきこえた。 あぁやっと出会えたんだね。 「分かってるよー!」 妙美さんは嬉しそうな顔をして言った。 妙美さんは「またね」 と、額に接吻をして、声の方に歩いていった。 私は涙にじませ言った。 「ありがとう、お母さん」 西宮さんは、私にいろいろ質問してきた。 これまでの事。 しのぶの事。 西宮さんとまたお話が出来るなんて夢にも思わなかった。 どのくらい時間が経ったのだろうか。 「そろそろだね。」 西宮さんは立ち上がり、「じゃあね。」と、歩いてった。 どこに行くの? 西宮さんは指をさした。 その先には・・・ ありがとう西宮さん。私達を救ってくれてありがとう。 走ってきた。 私のお宝だ。 「姉さん!」 蝶が私達を包んだ。 あの頃の あの部屋で失った時間を取り戻すかのように 私達の服はあの日の服に戻っていた。 それは私達をあの頃に、あの清純だった頃に戻すように。 「カナエー しのぶー」 父と母の懐かしい声。 その声の方向に進んでった。 手を繋ぎ、走った。 胡蝶蘭が咲き誇っている。 白、桃色の胡蝶蘭だ。 幸福を呼ぶ蝶が舞い、私達を祝福した。 胡蝶蘭の花言葉 純潔と幸福を呼ぶ。 私たちは心を踊らせ、無邪気に二人に抱きついた。 「ただいま」 「おかえりなさい」 私達は倒れ込み、胡蝶蘭の中に、ゆっくりと消えていった。 忘れていた。胡蝶蘭のもうひとつの花言葉 純粋な愛。 あなた達にたったひとつ、伝えたいもの。 言葉。 しのぶ、カナヲあなた達を愛しています。 花びらが伝えたいもの 完