瑠姫
あい
龍人
もしも忘れなければ
龍人
鬼ヶ島の中央に円尾坂
龍人
坂の上の刑場にはさらし首
龍人
短き血染めの髪 風に吹かれ
龍人
さらりさらり横に流れてく
龍人
いかなる罪を犯した首であろうか?
何も知らぬ旅の僧が人に問う
何も知らぬ旅の僧が人に問う
龍人
喪服屋の主人とその友人を
鋏で刺した男だと言う
鋏で刺した男だと言う
龍人
かように美麗な男子(おとこご)が
なにゆえ人を殺めたか
なにゆえ人を殺めたか
龍人
野ざらしの首は何も語らない
嗚呼鬼ヶ島さらし首
嗚呼鬼ヶ島さらし首
龍人
咎人の供養も愚僧(そう)の務め
あくる日も訪れた円尾坂の上
あくる日も訪れた円尾坂の上
龍人
首の前に先客 童(わらし)が一人
彼はいかなる者であろうか
彼はいかなる者であろうか
龍人
僧の問いに童は答えた
黒野檀裕斗
この首を切り落としたのは自分だ
龍人
と
龍人
罪深き男だが憐れでもある
共に手を合わせ経を唱えた
共に手を合わせ経を唱えた
龍人
男は腕の良い仕立て屋で
雅(みやび)な着物を織ったという
雅(みやび)な着物を織ったという
龍人
されどもう鋏を持つ腕もない
龍人
嗚呼 円尾坂 さらし首
龍人
どんなに綺麗な着物でも
胴がなければ着られない
胴がなければ着られない
龍人
野ざらしの男は何も語らない
嗚呼 鬼ヶ島さらし首
嗚呼 円尾坂さらし首
嗚呼 鬼ヶ島さらし首
嗚呼 円尾坂さらし首