鯨|(お、終わった...)
ガッツリ顔見られた、、
ハンマ君と″出会わなければ″ 大丈夫だったのに。
私は後悔と自分の馬鹿さを噛み締めながら、とにかく走り続けた。
コンビニで買い物するの忘れたし...
.....いや、そう落ち込む事は無い鯨。
顔をちっとぉ見られただけだ!!!!
名前とか学校とかバレてなければ、一切関わりを持つ事は無いんだから。
大丈夫。未来を変えるにはまだ間に合う。
鯨|...ふぅ、
安堵のため息をして、さっき拾って貰われちゃった携帯電話をリュックの中にしまった。
もう携帯電話を手で持って移動するのは辞めようと決意した。
コンビニから大分離れた場所まで来た。
このままスーパー行って、私の波乱のおつかいは終わり。
せっかく家から近いコンビニで買えると思ったのに、予想外だった。
もうあのコンビニの近くは通らないでおこう。
ハンマ君がいつも来ている場所かもしれないし、、
私は疲労と緊張感の溜まった足裏に、痛みさえ覚えた。
すると、その瞬間、またあの感覚が私を襲った。
視界がグランと倒れ、私の意識は飛んで行った。
目をゆっくりと開ける。
...どうやら、未来に戻ったようだ。
辺りを見渡すと、そこは白く染まった病室だった。
そうだ。タイムリープしてる時の未来の私はどうなってるんだろう。
そう疑問を抱いたが、それよりも大きな疑問が生まれた。
それは少し暗くてよく見えなかったけど。
でも人の気配はあったから、スマホのライトを付けて人が居るかを確認した時だ。
鯨|.....は、半間君!!?
ハンマ|...やっと起きたかぁ
スマホのライトで照らされたハンマ君は、スマホを弄っていた。
ハンマ|...眩しいわそれ
鯨|あッ、ごめん...
そう言われ直ぐにライトを逸らした。
...やっぱり、いや、当たり前だけど
過去のハンマ君と未来のハンマ君では、違う人の様に見える。
髪型ってのもあるけど、未来のハンマ君は何か...
言葉に言えないような何かがある気がした。
ハンマ|調子は?
鯨|あッ、えっと...大丈夫です、、
どうやら、私がタイムリープしている間、体の方は″仮死状態″だと分かった。
そうなるとハンマ君からしたら体調不良で倒れて病院、という事か。
ハンマ|今日俺が迎えに行った時にお前が台所んとこで倒れててさぁ...
ハンマ|あ~、マジで心配したわ。丸一日起きねぇとか
鯨|ご、ごめん...
ハンマ|俺と今日遊ぶ予定だったのによ
...あ、そうだった、、
過去の事ばっかり考えてたら、今この現代の事を忘れてしまう。
鯨|今日はごめんね...今度。今度遊ぼう
ハンマ|え~、今からでもイイよ♡
ニコニコと笑う彼に、私は戸惑った。
鯨|い、今からって...何時だと思って...
ベッドの横の小さな木製のテーブルには、時計が置かれていた。
今の時刻は深夜の2時。
...てことは、ハンマ君、こんな時間まで起きててくれたの?
鯨|...こんな時間まで起きてたの?
ハンマ|鯨ちゃんが目ェ覚ますまでな♡
鯨|えッッ...そんなに...
ハンマ|いーよ。寝顔じっくり見れたし
鯨|ね、寝顔...
どうやらずっと寝顔を見られていた様だ。恥ずかしい...
かわいーから気にすんなって誤魔化された。
でも盗撮は辞めて欲しい。ほんとに...
ハンマ|...あのさァ、聞きてー事あんだけど。イイ?
すると急に、さっきのふわふわしたハンマ君とは雰囲気が変わった。
鯨|え、あ...うん。何?
次に言われる言葉が怖かった。
もしかして私、何かやらかした?
ハンマ|お前の家電の履歴に居たんだけど、『マンジロウ』って誰?
鯨|...へ?
嘘でしょ。ちゃんと履歴消したのに。
...いや、そうか。
私がタイムリープした瞬間、マンジロウ君から電話が掛かってきた。
だからその分の履歴は消せてない。
ハンマ|コイツさぁ、昨日も電話掛けてきたよなァ
鯨|そ、それは違くて...確かにマンジロウ君からだけど、掛けたのは違う子で...!!
ハンマ|そんなの信じられねーし。もしそうだとしても其奴の連絡先持ってんのがうぜェ
ハンマ|しかも朝っぱらから。朝5時からとかさぁ
...ダメだ。全然未来は変わってない。
前よりもずっと束縛が目立ってきてる。
鯨|ど、どうしても外せない用事で、私が先に電話したの
鯨|でもその時マンジロウ君出れなくて、多分掛け直してくれたんだと思う...
ハンマ|...どうしても外せねぇ用事って何?
ハンマ|俺の彼女なのに他の男優先すんの?
またハンマ君の言葉の圧にやられてしまう。
駄目だ。全然駄目だ。
もう1回、タイムリープ出来たら...
鯨|.....ご、ごめん、なさい...
私は謝るしか無かった。
唯々恐怖と押し付けられる様な鋭い感情に、震えるばかり。
するとそれに気付いたのか、ハンマ君は私の頭に手の平を添えて
私の頭はすっぽりとハンマ君の手の中に居た。
鯨|...え、ちょ、ハンマ君...?
シワひとつない綺麗なスーツの中に顔が埋まって、心臓が鳴り止まない。
え、今...私どんな状況、、??
数秒私を抱き締めた後、ハンマ君はそっと手を離し言った。
ハンマ|...俺さァ、お前の事監禁したいんだけど。ダメ?
それはもう予想外の言葉、いや、少しは分かっていた様な言葉だった。
鯨|かッ、監禁は...ちょっと、
流石にそれは不味い。
これでタイムリープが何らかの理由で出来なくなったら、
一生私はハンマ君に監禁されたままになってしまう。
ハンマ|昨日みたいに俺の居ねぇ所で倒れてたりしたら嫌だし
ハンマ|何より他の奴に何かされたりとかしたら危ねぇだろ
鯨|...や、別に、大丈夫だよ。私他の人とそんな関係になったりしないし...
とにかく、監禁ルートは免れなければ...!!!!
ハンマ|...ほんと?
鯨|...うん。絶対
するとハンマ君は少し黙ったけど、なんとか納得してくれた様だ。
ハンマ|...もし次他の奴と絡んだら、ソイツ殺すから
その言葉を聞いた瞬間、あ、これ全然納得して無いなと思った。
鯨|こ、殺しはだめ
ハンマ|.....極力我慢してやるわ♡
絶対殺すじゃん、、と思ったが、取り敢えず監禁は避けられた。
その安堵からか、猛烈な眠気が私を襲った。
ハンマ|あ、眠ぃ?
鯨|...うん、ごめん。ちょっと疲れてるかも
ハンマ|ちゃんと寝ろよォ、お前がカンペキに寝るまで見てるわ
鯨|...う、それだと寝れないんだけどな...
ハンマ|キンチョーして寝れねーって事?あは♡鯨ちゃんかわいーね
鯨|...うぬ、、
そしてその後、暫く頭を撫でられて、寝かし付けとやらをされている気分だった。
そして朝、7時に目覚めた。
特にハンマ君にも私にも変わった様子は無い。
結局昨日はハンマ君のせいで全然寝れなくて、結局4時ぐらいに寝た。
ショートスリーパーなの...? ハンマ君全然寝てないじゃん。
でも流石に眠かったのか、ハンマ君は私のベッドに頭を掛けて寝ていた。
これじゃ冷房の効いた部屋じゃ冷えてしまう。
そう思った私は、自分がきていた薄い布団を、ベッドに寄り掛かりながら寝るハンマ君に掛けてあげた。
...いや、普通監禁してこようとする人にこんな気遣わなくて良いのだろうけど。
でも見てるこっちが少し肌寒くなって来たから、仕方なくだ。
エアコンの設定を見ると、23度だった。
こりゃ冷えるわけだ...
鯨|(...お腹痛くなって来たかも、、)
お腹が冷えてしまったのか、急な腹痛に耐えきれなくなった。
トイレに行こうと思い、ハンマ君を起こさないようゆっくりと
スリッパを履いて行こうとした。
グイッ
何かに引っ張られたように、私の体は後ろに傾いた。
鯨|は、半間くん...
起こしてしまった.......
ハンマ|...おはよぉ、何処行くの?
鯨|お腹冷えちゃって...ちょっとトイレ
ハンマ|俺も一緒に行こっか♡
鯨|そッ、それは大丈夫...
「布団かけてくれたんだね」と陽気に笑った。
ていうかトイレまで着いてこようとしてる...
なんとか頑張って断り、ようやく1人でトイレに行ける。
だけどその頃には腹痛など無くなっていた。
トイレを済ませて再び病室に戻る。
すると看護師の人が居て、私の今の体の調子を聞きに来たようだ。
特に体に異常は無いと看護師さんに伝えた。
入院する程でも無いけど、仕事で無理はするなと言われた。
本当はタイムリープのせいなんだけどね...
その後ハンマ君に退院の手続きをして貰い、何とか病院の外へ出た。
鯨|ごめん、手間かけさせて...
ハンマ|いーよ別に。それより俺遊びたいなぁ~
太陽の反射で光るピアスを揺らし、彼はそう言った。
偶に見せる嫉妬的な物はアレだけど、普段は普通の彼氏だ。
...でも、カズトラの様子を見に行かなきゃ。
鯨|もう平気だけど、まだ体重いかな...明日でも良い?
私は嘘を付いた。
すると少し不満そうな顔をしたが、私の体の事を思ったのか
じゃあ明日な♡ と明るい声で言ってくれた。
家まで送ってくれると言われたけど、今直ぐカズトラの所に行きたかったから
上手く理由を付けて断った。
もうそろそろ言い訳も付かなくなりそうで、少し怖い。
そう蒸し暑い風に押されながらそう思った。
その後、病院の駐車場でハンマ君と別れた。
どうやらハンマ君は車で来ていた様だ。
ハンマ|帰り気を付けろよォ
鯨|うん。分かった、また明日
ハンマ|あは♡明日も迎えに行くわ♡
すると彼はまたニコっと笑い、ご機嫌そうに車に乗った。
私はエンジンの掛かった車に手を降って、何とも言えない気持ちだ。
ハンマ君の車が完全に見えなくなった後、私はスマホを鞄から取り出して画面を見る。
すると1件、メールが入っている事に気付いた。
『何かあったら直ぐ言えよ』
シンプルな一言だっけど、この1文だけでとても私の事を心配してくれている事が分かる。
鯨|(...あれ、何でこんな、)
ハンマ君の事、嫌だと思ってない?
いやいやいやいや...昨日なんて監禁されそうになったんだし。なわけない。
ふぅ、と1呼吸置いて、カズトラの入院している病院へ向かった。
どうやらカズトラの入院している病院は、さっき居た病院とそう遠くなかった。
徒歩20分程度。
少し頭痛がしたけれど、そんな事言ってる場合では無い。
鯨|...あの、すみません。羽宮さんの知り合いなんですけど...あ、ハイ。ありがとうございます
受け付けに立つ綺麗な人に知り合いだと言うと、部屋番号を伝えられた。
少しお辞儀をして、伝えられたその部屋へと足を運んだ。
鯨|.........
その部屋の前に立つと、何故か緊張が走った。
どうやら会話は何とか出来るようだが、まだ意識が脆いらしい。
私があの時、不注意だったから。
悔しさと後悔を噛み締めながら、思い切ってその部屋の扉を開いた。
鯨|.....カズトラ...
すると目の前には点滴で繋がれ、人工呼吸器をして眠っているカズトラが居た。
その姿を見た瞬間、涙が溢れて止まらない。
グッと拳を握り締めて、改めてカズトラの顔を見る。
意識はちゃんとあった。
息もしてる。
生きてる。
鯨|...ごめん...、カズトラ...
そうやって泣きながら縋ると、何やら動く気配がした。
カズトラ|.......鯨ぁ?
鯨|...へ?
喋っていたのは、カズトラだった。
ゆっくりで、脆くて、掠れているけど、しっかりカズトラが喋っている。
私の名前を呼んだ。
だから記憶障害の可能性はゼロになった。
良かった。良かった、、
鯨|ッ、カズトラ!!!
カズトラ|...お前、怪我してねぇよな、、?
鯨|うんッ、してないよ。全然してない
カズトラ|ははッ...俺のおかげじゃん
鯨|本当にごめん、謝っても許されない事だけど、本当にごめん。カズトラ...
カズトラ|...そんな謝んなよ、俺ありがとうが聞きてぇわ
人工呼吸器越しに、笑う顔が見えた。
良かった。笑ってる。
カズトラ|...は~、良かった。ちゃんと出来たんだな
するとカズトラは目を瞑って、何処か安心した様な顔をした。
鯨|...?
.....″ 出来た ″ って、何?
鯨|...カズトラ、出来たって..なんの事?
カズトラ|...................
するとカズトラは、目を伏せて少し黙りこくった。
鯨|え、...カズトラ? どうしたの?
カズトラ|.....タイムリープ
彼の口から出たのは、『タイムリープ』
どうして? 何でその単語がカズトラの口から出るの?
するとカズトラの口から、全く予想していなかった言葉が出た。
カズトラ|...俺がお前の事...線路に落とした
鯨|.....え?
その一瞬、脳に酸素が行かない様な空白の感覚を覚えた。
コメント
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続きが楽しみすぎてッッ\( ˙ロ˙ )/ 人ちゃんストーリー書くのうますぎね……長いのかけるの尊敬でしかない( * ॑꒳ ॑* )✨ 私も長いの書けるよう頑張ろ(( ✧︎(🕶)
えマジで結末予想できなすぎる .. どうなんだろ .. ( ガクブル )
あ…"!!続きめっちゃ気になる!!