黄色い薔薇は咲かぬ日々 第18話
貴夾 寅彦
桜子!
与根宮 桜子
……ビクッ
与根宮 桜子
………?
与根宮 桜子
寅彦様?
振り返ると寅彦様はわたくしの腕をとっていた。
与根宮 桜子
…………
貴夾 寅彦
お前との挨拶を軽くすませたことを謝りに来たんだ
貴夾 寅彦
本当に申し訳ないと思ってる。
貴夾 寅彦
1人で出ていかせたことも……
与根宮 桜子
どうして謝るのですか?
貴夾 寅彦
…………
与根宮 桜子
貴方がわたくし以外の後宮の方と触れ合うのは当たり前のことです
与根宮 桜子
はやく……戻ってください
貴夾 寅彦
…………
貴夾 寅彦
ならどうして寂しそうな背中を見せたんだ?
貴夾 寅彦
今だって……こんなに泣き出しそうなのに
与根宮 桜子
…………
与根宮 桜子
わたくしは……婚約者候補に貴方が出た時
与根宮 桜子
お父様の前や大切な人の前でさえも悩んでいるふりをしていました
与根宮 桜子
でも心の中では貴夾寅彦様とわたくしは結婚すると決めていたのです
与根宮 桜子
なのに……心に霧ができて、自分がどう思ってるのか探ろうとしても
与根宮 桜子
今はもう、どこに私の寅彦様への思いがあるか見つけ出せないんです
与根宮 桜子
だから……今私がどう思ってるか自分でも分からない
与根宮 桜子
わたくしが今泣きそうな理由はわたくしにもわからないんです
与根宮 桜子
放っておいてください。
与根宮 桜子
失礼致します
貴夾 寅彦
どうしたら……桜子は……
後宮 篠村 寿々歌
…………
与根宮 桜子
馨さん
寅彦の秘書 兼古 馨
あ、奥様!
寅彦の秘書 兼古 馨
社長が帰ってきたそうですね
寅彦の秘書 兼古 馨
どうでしたか?
与根宮 桜子
………
与根宮 桜子
既に他の後宮の方が隣にいらっしゃって話はしませんでしたわ
与根宮 桜子
それ以外は特に
寅彦の秘書 兼古 馨
……?そうですか
寅彦の秘書 兼古 馨
そろそろお部屋に戻られますか?
与根宮 桜子
ええ。そうしようと思っています
与根宮 桜子
今日は案内をしてくれてどうもありがとうございます。
与根宮 桜子
とても充実した一日でした
寅彦の秘書 兼古 馨
…………
寅彦の秘書 兼古 馨
あの、奥様
与根宮 桜子
……?
寅彦の秘書 兼古 馨
私、奥様がここに来られた時実は奥様をあまりよく思っていなかったんです
寅彦の秘書 兼古 馨
私の経験上後宮の方は少し厳しい方が多かったもので……
寅彦の秘書 兼古 馨
でも実際に今日話しながら案内させてもらって、
寅彦の秘書 兼古 馨
つまらないことなど一切ないかのように熱心に耳を傾けて
寅彦の秘書 兼古 馨
自分より身分が低い人にも気を配る心構えがすごく素敵だなと思いました
寅彦の秘書 兼古 馨
……つまり、
寅彦の秘書 兼古 馨
私でよければいつでも力になりますので、是非頼って欲しいんです
寅彦の秘書 兼古 馨
奥様のためなら何でもさせていただきます
寅彦の秘書 兼古 馨
あと……親しみを持って私には敬語じゃなく喋って欲しいです
与根宮 桜子
…………
与根宮 桜子
ふふ、ありがとう
与根宮 桜子
馨さんのこと沢山頼って、敬語も崩させてもらうね
与根宮 桜子
呼び名はさん付けでも平気かしら?
寅彦の秘書 兼古 馨
それはもちろんです
寅彦の秘書 兼古 馨
奥様が呼び捨てで私の事呼ぶと社長にクビにされますので
与根宮 桜子
……?そうなの?
寅彦の秘書 兼古 馨
と……とにかくありがとうございます
寅彦の秘書 兼古 馨
改めてこれからよろしくお願い致します
与根宮 桜子
こちらこそよろしくね
NEXT.♡200







