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rara🎼
nmmn注意⚠️ キャラ崩壊注意⚠️ 誤字脱字注意⚠️ 殺し屋パロ
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#1 赫の笑みと銃声の夜
夜の喧騒が、カフェの大きなガラス窓をかすかに震わせていた。
街灯の明かりがぼんやりと揺れ、外では誰かが笑い、誰かが急ぎ足で通り過ぎていく。
だがその中で、《Hima》と控えめに灯る看板の下だけは、不自然なほどの静寂が支配していた。
都会の片隅にぽつんと佇むそのカフェ。
洒落た音楽も流れてはいたが、どこか異質で、あまりに静かだった。
静かすぎて、まるで誰かが“沈黙”を演出しているかのように思えるほどに。
カウンターの奥。
シンプルなシャツにエプロンを締めた青年が、客のカップにミルクを注いでいた。
優しげな笑みを浮かべるその顔には、どこか柔らかな人懐こさがあった。
——だが、彼の指先。
ミルクポットを傾けるその手だけが、異質だった。
指の動きは静かで精密、まるで獲物を仕留める瞬間の獣のようだった。
彼の名は、なつ。
この店の“店長”であり、同時に──赫という裏の顔を持つ男。
# 赫
声は低く穏やかだったが、誰に向けたものでもなかった。
それは独り言のようでいて、どこかで誰かを試すような、問いかけにも似ていた。
カフェの中には、数人の客がいた。
誰一人、名前も素性も知らない。
互いに干渉せず、静かに飲み、静かに店を出る。
最後の一人が席を立ち、軽く会釈すると、無言のまま外へ消えていった。
その直後、扉がやわらかな音を立てて閉まる。
カチャリ。
なつ──いや赫はカウンターの下へ手を伸ばし、そこから一丁の拳銃を取り出した。
銀に鈍く光る、完璧に手入れされたそれは、あまりにも自然に、彼の手に馴染んでいた。
銃口を見つめ、赫は小さく目を細める。
# 赫
# 赫
その声の奥には、感情も葛藤もなかった。
ただ、任務としての重さだけが、静かに響いていた。
その頃。
街の灯りが届かないビルの屋上。
無機質なコンクリートの上に、黒いスーツの影がひとつ浮かび上がる。
男は無言で歩みを進め、小さなアタッシュケースを左手に提げていた。
整った顔立ち、無表情。感情の一切を押し殺したようなその存在は、誰の記憶にも残らないようにできていた。
彼の裏の呼び名は──桃。
本名は、らん。
けれど、この生業では、必要のない名前だった。
屋上には、先客がいた。
男は腰を下ろし、スケッチブックを膝に置いて、何かを描いている。
鉛筆の芯が紙をかすめる音。
そして、にやりと口角を歪めたその男が、言った。
# 翠
# 翠
# 翠
──翠。
本名は、すち。
彼は依頼のあと、標的の“死に様”を必ずスケッチする。
それは執着ではなく、崇拝にも似た芸術行為だった。
桃は深いため息を吐き、額にかかる髪を乱暴にかき上げる。
# 桃
# 桃
# 翠
# 翠
# 翠
# 翠
スケッチブックに視線を戻しながら、翠は笑った。
その目は、絵ではなく“死”そのものを愛しているように見えた。
赫、桃、翠——逃亡者の三人。
彼らは互いに深く干渉せず、ただ依頼をこなし、生き延びることだけを目的としていた。
だが、誰の胸の奥にもあったのは、いつか来る“あの日の続き”。
あの夜に始まった選択の結末を、どこかで待ち続けている自分だった。
別の街角。
控えめな一軒家の明かりが、カーテン越しに揺れている。
その室内で、ひとりの青年が、勉強机に向かっていた少年にペンを走らせていた。
白シャツに黒のネクタイ、きちんと整えられた身なり。
彼の名は、こさめ──裏の名は、瑞。
冷静で、口調は穏やか。
しかしその眼差しだけは、常に“次”を見ていた。
時計の針が、約束の時間を指す。
瑞は静かに立ち上がると、何も言わずに書類を片づけた。
部屋の奥、鍵のかかったクローゼット。
その中には、解剖図。
各種毒物。
遺体の写真資料。
そして──次の依頼の詳細。
# 瑞
その言葉には、殺意の熱さではなく、計算された冷たさが滲んでいた。
夜の保育園。
子どもたちの笑い声が消えたあとの静寂が、建物の隅々にまで染みていた。
最後に残った一人の男が、教室の中を歩いていた。
机を整え、小さな絵を壁に貼り直し──その姿は、まるで“善良な保育士”そのものだった。
茈──いるま。
彼の笑顔はやさしく、けれど目の奥に光はない。
誰かの心に寄り添うようでいて、常に冷めた距離を保っていた。
ロッカーの奥に忍ばせた携帯が、無音で震える。
画面には、たった一言。
《対象:桃。今夜、観測開始。》
いるまは微笑んだ。
それは、仕事を受けるときの、いつもの笑み。
# 茈
# 茈
静かに、自分の感情を殺した声だった。
地下の一室。
照明の届かない空間の中で、無数の報告書と翻訳資料が散乱していた。
その中心。
黈──みことが、静かに椅子に座っている。
彼の口からは、いくつもの言語が流れていた。
それは詩のようでいて、呪いにも似た音の刃。
# 黈
# 黈
淡々と、感情のない口調で告げながら、みことはナイフを指先で器用に転がしていた。
その刃だけが、彼の感情を映す鏡だった。
そして——それら全てを、ただ記録する視線がある。
誰でもない。
組織の「監視者」だ。
映像はすべて、一つの端末へと集められていた。
そこに表示された新たな指令。
《六色、全員抹消対象へ移行。》
六人が生き延びたという事実は、組織にとって“罪”でしかなかった。
次に狙われるのは、過去ではない。
“今”だった。
赫の笑み。
桃と翠のやり取り。
瑞の冷徹な眼差し。
茈の優しい殺意。
黈の静かな言葉の刃。
それぞれの夜が、静かに——だが確実に、重なり始めていた。
そして。
最初の銃声が、闇を裂いた。
その音こそが、六色の再会の合図だった。
#1・了
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡20
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