灰谷兄弟 妹の災難

蘭にぃの荒すぎる運転に、 若干酔って頭がフラフラする。

酔いの冷めない身体を引き摺って、 何とか自室でラフな格好に着替えた。

私とお兄達は、わくわくるんるんで 焼肉屋に向かった。

店に到着して早20分、私たちは はちゃめちゃに焼肉を堪能していた。

わいわいと雑談しながらも、 焼けた肉を口の中に放り込んでいく。

その内会話の流れで、まあ自然と 私の学校について触れることになった。

まあこれは、私が小学校生活で得た 知見であり、経験則なのだけど。

それから既に注文していた肉を 食べ尽くし、蘭にぃが奪ってきた財布で 会計を済ませて家に帰った。

その後、朦朧とする意識の中 蘭にぃにキレイに体を洗われて、 湯船で肩まで30秒数えた。

その後は、自分でか蘭にぃだったか、 パジャマに着替えてから自室で寝た。

高校生の兄と中学生の妹だから 一緒にお風呂もまだセーフ。 年齢制限とかこれっぽっちもないよ！

ﾋﾟﾋﾟﾋﾟｯﾋﾟﾋﾟﾋﾟｯ

寝ていた体勢から体を動かし、 なんとか時計のアラームを切った タイミングで、お兄達が部屋にきた。

私が動きを止めると、 なにをやってるんだとばかりに 私に野次を飛ばすお兄達。

そのタイミングで、昨日寝ぼけた私が 蘭にぃと一緒にお風呂に入り あまつさえ体を洗ってもらった 事実を思い出した。

バタン

なにやら嵐でも過ぎ去ったような 倦怠感を朝から感じつつ、 テキパキと朝のルーティーンをこなした

頬の腫れは、少し大袈裟に ガーゼをあてて手当し、 いかにもな雰囲気をかもしだした。

ドタバタと玄関へ行き、一瞬振り返って 蘭にぃに指ハートと満面の笑みを 見せつける。後ろでガタガタっと音が 聞こえたのは気にしないでおこう。

竜にぃの声と同時にバイクが エンジン音をとどろかせ走り出す。

この人達の妹で幸せだなあ、と 思いつつ、竜にぃの背中にぎゅっと しがみついた。

竜にぃがバイクをとめた場所は、 住宅街の一角だった。少し奥に、 目につく大きな和風建築が見える。

竜にぃは、私に向かってニカッと 笑ってからバイクを飛ばして帰った。

そして程なくして、ドラケン君が マイキー君の家の戸を叩き、 中に入っていくのが見えた。

10分後

私はすっと交差点から出ていき、 ドラケン君とマイキー君の前を 自然に歩きだす。

気付かれなかったら自分から見つける モーションをすればいいだけなのだけど なぜか心臓がドキドキしてしまう。

あえて私はびく、と大きく肩を震わせ、 おずおずと振り返った。

目にうる、と涙をため震える演技をする するとマイキー君やドラケン君はかなり ショックを受けたようで、 おどおどと慌てだした。

心の中でガッツポーズしながら、 表情は悲しげなままで。私ってば女優！

まだ目に涙をうかべたまま、 にこ、と笑って2人にお礼を言う。

まあ厳密に言うと、 (うまくひっかかってくれて)ありがとう なのだから、私も腹黒いなぁ。

ごし、と涙をふいて改めて 2人に向き直る。

こうして私たちは通学路を 全力疾走したのだった。