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夢見
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1 キノコ 「優ちゃんには、お兄ちゃんがいたんだよ。お風呂に入るのを嫌がったからキノコになっちゃったんだ」 そう言って父はよく、幼かった私にアルバムを見せていた。アルバムのあるページからはキノコの写真が何枚か入っていた。 今思えば、お風呂に入る事を嫌がっていた私を入れさせるためについていた嘘だったのだけれど、幼い頃の私はその事を本気にしていた。 「ねぇ、おにいちゃんは今どこにいるの?」あるとき父にそう聞くと、父は、「お庭だよ」と答えていた。 当時の私はその事が怖くて怖くてたまらなかった。何故あんなにも信じていたのか、今となってはよく思い出せない。 私は久しぶりにアルバムを開いて、その訳を知った。
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2 呪いは我が身に返る とある不思議な場所。そこではどんな願いも叶えてくれるという。 いわゆるパワースポットだ。 彼女がどうしても行きたいというので、僕は渋々ながら車を出してあげた。 僕は彼女と別れたかった。だから僕は軽い気持ちで彼女の死を願った。 帰りの車の中で、僕は彼女にどんな願いをしたのか聞いてみた。 彼女は、僕とずっと一緒にいたいと、そう願ったらしい。 目の前には大きなトラックが向かってきている。 どうやら効果は絶大なようだ。
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3 ききまちがい ある日、私は街角で占い師の老人に出会った。 その占い師はその人がいつ、どんな死に方をするのかを占うと言うのだ。私は興味本位で自分の死因を聞いてみることにした。 すると老人は禍々しい手つきで何やら魔具を弄り、ブツブツと呪文のような言葉を唱え始めた。 そして、か細くしわがれた声で二言ぼそりと呟いた。どうやら私は三年後の七月七日に溺れて死ぬらしい。その時の私はその事を本気にしておらず、大して気にもしていなかった──。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 月日は流れ、私が死ぬとされる日がやって来た。さして気にしていなかった私だが、改めて意識し始めると途端に不安が募り始めた。一応念の為、万が一ということもあるし、何もしないよりはマシだろうと考えて、私はあらゆる可能性を考慮し、対策を講じることにした。 その日は一切の飲み物を口に入れず(水分は果汁多めの果物を取ることにした)、風呂に入らないのはもちろんのこと、水場の近くには近づかないようにした。恐れるべきは「液体」で、それ以外で死ぬことはない。まあこれもその占いが当たっていると言う前提なんだけど⋯⋯。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 私は今、家の外に出て、歩いて移動している。 本当は外を出歩くのは危険なのだが、どうしても外せない用事ができてしまっていた。 命には変えられないと思うだろうが、生き延びるのを仮定するのであれば外すことはできない、そんな用事であった。 でも実際はどうなのだろうか? 向かう先の近くに川があるが、近づくつもりは毛頭ない。車に乗る予定もないから、運転手が突然気絶して、制御不能になり川に突っ込む、なんて事もない。車に轢かれて吹っ飛んだ先が川だった、とかの方がまだ可能性としてありそうだ。もっともその場合、死因は別になりそうだが。 ⋯⋯ん? まてよ⋯⋯⋯⋯そうか、やばい! その可能性があった! やっぱり外に出るんじゃなかった。
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3 例の彼女 季節は冬、十二月だ。今年ももう直ぐ終わり。僕こと加藤央井かとうおうせいは今年で二十八歳になった。今は焼肉屋でアルバイトをしている。この歳で一度も正社員として就職した事がないのは我ながら悲しい。果たしてこの歳で就活を試みたとして雇ってくれる会社はあるのだろうか? 以前はしっかりと就活をしていたが、ことごとく落ちまくった。全く、どこの会社も見る目がないのだ。最近は半ば諦めている。このままいけばお先真っ暗。金はあまり貯まらず、つまらない日々を過ごしている。 そんな中での最近の楽しみは、新しく入った女の子──若崎わかさきさんと話をすること。彼女はとても可愛らしい。ちゃんと聞いたことがないからわからないが、見た目若いから今は大学生だと思う。(それとも僕と同じかな?) そして今日はバイトの忘年会にきている。しかも今日はなんと二十五日、クリスマスだ。店長が独り身だから、わざわざこの日を狙ってやっているらしい。まぁ僕には関係ないんだけどね(泣) 「こんばんは」僕は例の彼女に声をかけた。 『あ、こんばんは』 「若崎さんも来てたんですね」 『はい。そういう加藤さんも来てたんですね』 「まあ、暇ですし」 悲しい事に嘘ではない。トホホ……。 『じゃあ、加藤さんは今付き合ってる方はいないんですね』 「……まあ、そうですね」 どういう意味だろう。いや、そういう意味なのか? こんな質問をするってことは、これは期待していいのかな? 『そういえば加藤さんって今おいくつですか?』彼女が上目遣いで訊いてきた。 僕はその時、なんだか正直に答えるのは恥ずかしかった。「……二十八です」 『へ~、私と十違いますね』若崎さんはニコッと笑った。ぐっ……かわいい。 ということはあれかな、若崎さんは十八歳か。大学生かな? 僕と若崎さんがそんな感じの雑談をしていると、時間になり忘年会が始まった。 「えー皆様、今日はお集まりいただきありがとうございます。それではこれより忘年会を開催いたします」 チーフによる開会宣言の後、店長の挨拶が終わり乾杯へと移った。 「料理は後にして、先に飲み物頼みましょう。みなさんそれぞれ言ってってください」チーフが皆に向けて言った。「俺はビールを。鷹目たかのめさん達は何飲みます?」 「俺もビール」 『私も同じのを』 「俺は、下戸げこだから烏龍茶で」 注文が終わり、各人のもとに飲み物が行き渡った。いよいよ終わりが始まる。 「みなさんコップを持ちましたか。それでは店長お願いします」 「うむ。では……乾杯!」 「カンパーイ!」 来年は良い年になれるかな?
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4 渡しモノ 深夜に目が醒めるなんてことはどんな人でも一度はあるのではないだろうか? ましてやそのタイミングで電話なんてかかってきたら尚さらのことだ。かく言う僕も、今まさにその状況に置かれていて、電話の主は同級生であり親友の木村だった。当然のことながら僕は木村に何の用かと聞いた。 『ちょっと外に出てきてくれるか?』 木村のその弱々しく掠れた声に僕は違和感を覚えた。電話では話せない内容なのか、理由を聞いても返事は無く、どうやら木村は僕の家の前にいるらしいので仕方なく僕は家の外に出ることにした。 家の前にいた木村は『ついてきてくれ』と言うと、一人夜道を歩き出した。突然の事で言われるがままに僕は木村についていった。道中、木村に何処へ行くのか、これから何をするのか訊いてみた。しかし木村は、 『見つけて欲しいものがある』 と言うのみで、何を見つけるのか、何処へ向かうのかは言わなかった。その普段の木村と違う異様な不気味さと夜の雰囲気に、僕はそれ以上何も聞けずにいた。 数分歩き続け、少しずつだが僕は冷静さを取り戻した。そして、それに伴って違和感が呼び起こされた。頭の隅で何かが引っかかっていた。おかしい。言ってしまえばこの状況自体が既に不可解なのだが、そうではなく、木村が何処かへ向かい出してから、何かが引っかかっている。 しばらく歩き続けると木村は森の中へと向う細い一本道に入っていった。途中、顔に蜘蛛の巣が引っかかたりしながらも、僕は木村の姿を追った。 「なあ木村。いつまで歩くんだよ」 『もう少し、あの崖の側だ』 前を向いたまま、木村は答える。 と、その時、不意に気づく違和感の正体。 「あ、そうか。───静かすぎるんだ」 直後、木村は歩みを止めた。 『あそこだ』 木村は指を差す。 彼が向ける視線の先、そこには何と────木村がいた。
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6 温もり 冬の便座はどうにも冷たい。夏の生温いべたっとした便座に比べればマシだ、と言うやつがいるかもしれないが、やはり独り身である僕としては、どちらかとしては温もりの方を求めてしまうのだ。 しかしこの展開は予想していなかったし、そこまでも求めていなかった。「やばい」と思った時にはもうすでに遅かった。なぜなら便座に腰を下ろし始めてしまっていたからだ。尻が便座に触れた瞬間、あれ? と思った。直後、僕はその意味を理解し、別の意味で震え上がった。
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7 呪われたベッドの噂 (夏のホラー2019参加作品) 病院といえばその筋の噂の一つや二つはあるもの。どうやら今僕が入院しているこの病院にもそのような噂があるようです。 実は僕は六日前に自転車に乗っていた時、車と事故って脚の骨を折ってしまったのです。折れているのだからしょうがありません。入院です。命に別状はありませんでしたが、それでも酷い怪我だったのでベッドの上から動くことはできませんでした。 実に退屈です。病院内を探検できたらよかったのですけど、生憎のこの骨折ではどうしようもありません。もとよりこの骨折がなければ入院することもなかったのですから、どのみち同じことです。 「退屈だなぁ⋯⋯」 そう思っていたその時、ふと、オカルト好きな後輩が以前言っていたことを思い出したのです。 『先輩知ってますか? 犀華せいか病院にあるこんな噂話を――。なんでも三階の一番西にある大部屋の、入って右の窓側のベッドに入院すると、一週間以内に死ぬそうなんですよ。どうやらそのベッドの上で死んだ患者の霊がまだいるらしくて、呪われてしまうんだとか、なんとか⋯⋯』 はっきりとは覚えてないが確かそんなことを言っていたと思います。そして確認してみると、どうやらその呪いのベッドは僕のちょうど右隣のベッドなのです。そこには一人の女性患者が既に使っていました。僕と同じ、脚の骨折のようです。聞いたところによると彼女は僕より一日早く入院していたのだとか。つまりその噂話が本当なら、明日には彼女は死んでしまうのです。 僕はどうしたものかと考えました。 正直言ってあまり噂話を信じていません。なのでこのまま黙って観察することにしました。 そして七日が過ぎた次の日、つまり彼女が入院して八日目です。彼女はいたって普通に過ごしていました。やはり噂話は嘘だったようです。 僕はたまらず隣の彼女にその噂を話してしまいました。 「知ってましたよ。ですけど私、窓から外の景色を見たいんです」 そう彼女は言いました。 「怖くないんですか。あ、呪いとか信じないタイプなんですね」 すると彼女はこう言ったのです。 「いえいえ。信じてますよ。ですから病院にお願いして隣のベッドと交換してもらったんです」
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