月見。
月見。
月見。
累計いいね数 30000↑ 「守りたい」 ♡1000↑ 「世界一の。」 ♡4000↑ 「すれ違い後の嫌がらせ」 ♡2000↑
月見。
月見。
月見。
月見。
注意!! ・地雷さんは今すぐUターン! ・あにき愛されでまろにきが付き合ってます ・あにきが少し病んでます ・nmmn ・ご本人様方とは何も関係のないフィクションです ・口調&キャラ崩壊あり ・通報❌
月見。
ピンポーン、とチャイムの音が家の中で鳴っている。
鳴らしたチャイムに対して、声どころか物音一つ聞こえてこない。それ以上待ち切れず、俺はドンドンとドアを叩いた。
ないこ
-hotoke-
初兎
制止の声を上げる初兎ちゃんの方を見ると、その手はドアノブにかかっていた。
初兎
初兎ちゃんがゆっくりとドアを開ける。一番最初に目に付いたのは、靴の無い玄関だった。
りうら
-hotoke-
ないこ
不安げな顔をする子供組の前を歩き、家の中に入る。正直、俺だってとても冷静ではいられなかった。
分かれて家の中を探す。洗面所、お風呂、リビング、キッチン・・・。
ゴトッ。
ないこ
2階への階段を上っていると、あにきの部屋の方から物音がした。
ないこ
あにきかと思って部屋に飛び込んだ俺は、思わず言葉を失った。
部屋の中にいたのはまろだった。目を見開き固まったまま、その視線はまろの手に握られた1枚の紙に注がれていた。
まろの足元に落ちているのはあにきのスマホだ。さっきのはこれが落ちた音だったのだろうか。
ないこ
どうしたの。緊迫感に気圧され、その言葉は出て来なかった。
If
無言で紙をこちらに向けてくる。そこに書かれている文字を読んで、俺は目を見張った。
俺はもういれいすに、お前らと一緒にはいられない。今までありがとな。俺は消えるけど、どうか探さないで。
ないこ
動揺で声が震える。一緒にいられない?消える?何を言ってるんだ。
紙に書かれたあにきの字は、いつものあにきの字とはかけ離れていた。震えた手で書いたかのようにガタガタで、一部の文字は滲んでいた。
・・・泣いてたのか?
If
ないこ
紙を俺に押し付け、まろは俺の声を聞くことなく部屋を飛び出して行ってしまった。
すぐにバタンとドアが閉まる大きな音が聞こえてくる。探しに行ったんだ、あにきを。
初兎
-hotoke-
子供組の3人が部屋に入ってくる。俺は唾を飲み込み、実は、と紙を掲げた。
音楽活動は難しい。一部の人がどれだけ褒めてくれようと、多くの人に、世界に認めてもらうことは容易じゃない。
人の心に響く歌を歌いたい。誰かの支えになりたい。誰かを救えたら。そんな淡い希望を抱え、俺は音楽と向き合ってきた。
心が折れそうになった時、いつも勇気をくれたのはまろだった。多くのファンが見ている中で堂々とあにきっずだと発言をしたり、照れ臭くなるほどに俺の歌声を誉めたり。まろの存在がなければ、俺は今いれいすに存在しなかった。
いれいすは俺の最高の、唯一の居場所だった。
迷惑
いらない
邪魔
けれどもし俺の存在がいれいすの、あいつらの迷惑になっていたとしたら?
声が出なくなった時1番に考えたのは、いれいすのことだった。
歌を歌えない、声が出ない。そんな最早歌い手とも呼べない俺に、いれいすの居場所は無い。あってはいけない。
声が出なくなった俺なんて存在する意味も無い。きっとあいつらだって、こんな俺は用済みだろう。
それなら切り捨てられる前に、自分から姿を消す方がマシだった。
あいつらに冷たい目を向けられることが、俺にとって何よりの地獄だから。
If
街の中を走る。息が切れ始める体力のない自分の体に苛ついた。
あにきの寝室で、落ちていたスマホを拾ってあの紙を見た時、一瞬何も考えられなくなった。力が抜けた手の中からスマホが滑り落ちたが、それを気に留める余裕すらなかった。
ただ目の前に書かれていた言葉が、理解出来なくて。
一緒にいられないって、俺は消えるけどって、何一つ意味分かんないよ。
仲間なのに。恋人なのに。どうして相談の一つや二つ、してくれんかったん?
そんな気持ちが湧き上がってきて、自分の中でその言葉を否定する。違う。あにきが悪いんじゃない。
調子が悪そうなことに気付いていたはずなのに、お互いが忙しいからとか、俺の勘違いかもしれないからと理由を付けて、俺はあにきに深く踏み込まなかった。
その間に、あにきが苦しんでいたかもしれないのに。
If
疲労で重くなる脚に鞭打って走る。今頃、一人で泣いてるかもしれない。そんな時に、休んでられるか。
あにきは何処へ行ってしまったんだろうか。あの文の内容的にも、早く見つけないとやばい気がする。
If
そこで、頭の中にとある場所が思い浮かんだ。
もしかしたら。俺は体の向きを変え、一目散に走り出した。
どんよりとした暗い空から雨が落ちて来る。それがまるで、あにきが泣いていることを表すかのようで。
彼の手を掴んで、その涙を拭う為に。ただ走った。
悠佑
目の前に広がる景色に、ぽつりと心の中で声を漏らす。ここに来たのはいつ振りだろうか。
目の前に広がるのは、何処までも続いているかの様な広い海。
いつもはもっと青く透けて輝いているのだが、今日はこの曇り空もあって海も何処か気分が悪そうだ。
ここは思い出の場所だった。苦しい思い出と、幸せな思い出が入り混じった大切な場所。
一度だけ、ここに来たことがあった。
いれいすに入る前、活動に悩んでいた時。色々な悩みや憂鬱が溜まって、苦しい現実から逃げる様にここに来た。
逃げられない胸の痛みや辛さを消したくて、俺一人なんて居ても居なくてもこの世界は変わらないと思って、この海に身を投げようと思った。
そんな時、水の中から。苦しい暗い世界から俺を引っ張り上げたのは、他でもないまろだった。
いれいす結成よりも前から知り合っていたまろ。恋人になれたのはいれいす結成後だったが、俺は多分その頃からまろに惹かれていて、たくさん救われていた。
だからここは、いれいすの中で俺とまろしか知らない場所で。
でもきっと、まろはこの場所のことなんて忘れてるだろう。あの頃はまだ付き合ってもなかったし、俺にとってどんなに大切な場所であろうと、まろにとってはただの海の一つだ。
だから、ここが丁度良い。
誰も俺を見つけることは無いし、思い出の場所で居なくなれるなら、それも良い。
悠佑
水滴が頭に落ちてきた。空を見上げればどんよりとした暗い空から雨が降ってきて、地面を濡らしていく。
まるで傷付いた空がとうとう泣き始めてしまったかの様で、どうしようもなく胸が痛む。
髪も服も濡れて、肌に張り付く。その感覚は決して好きではないが、今更そんなこと気にしようとも思わなかった。
雨に打たれて、ぼんやりと考える。もう俺には居場所なんて無い。帰る場所も、居ていい場所も無いから。
それならいっそ、この雨に溶けて消えてしまいたい。
悠佑
希望を持って試した訳じゃないが、やっぱり声は出なかった。
・・・ああ、ここに来て正解だった。
ゆっくりと歩を進める。靴と靴下は脱いで、砂浜に揃えて置いた。
既に雨で濡れていたから、海に入っても特別その冷たさに驚くことは無かった。そもそも声が出なくなった時から、もう生きた心地がしていなかったのだから。
何も考えず歩いて、気付けば腰まで水に浸かっていた。もっと時間がかかると思っていたが、途中から急に深くなっていて、案外すぐに全身が沈んでしまいそうだった。
あと、何歩歩けば。
このまま進んでしまえば、すぐに楽になるんだろう。
最期って、案外呆気ないな。いや、俺にはこんな最後がお似合いか。
一人自嘲めいた笑みを溢し、俺はまた一歩前へと踏み出した。
───筈、だった。
悠佑
俺はその場から、一ミリたりとも進んでいなかった。否、進めなかった。
足を動かそうとする。が、俺の足はまるで言うことを聞かなかった。
悠佑
なんで。動け、動けよ俺の足。
ここに来て、怖いなんて。死にたくないなんて。消えたくないなんて。許される訳がない。俺の居場所なんてもう何処にも無いのに。分かってる筈なのに。
自分勝手な自分が、弱い自分が嫌になる。ぶわっと涙が溢れて、雨と混ざって落ちて行く。
早く消えてしまいたい。居なくなりたい。
・・・本当に?
“好きだよ、悠佑”
こんな時に、頭に思い浮かぶのは君のこと。
悠佑
一緒に居たい。ずっと隣に居たかった。
仲間から、大切な恋人から。全てから逃げたのは自分だ。だって、こんな俺はもういらない筈だから。
でも、
悠佑
許されない。分かってる。こんなのわがままだってこと。
もう、戻れないのに。これ以上進む勇気も、俺には無かった。
前にも後ろにも進めない。止まってしまった俺を、誰が見つけてくれるだろう。
天気は最悪だ。どんどん雨脚は強くなり、見渡しは悪い。こんな時に外に出てる人なんていない。ここに来る人自体、早々いないのに。
それでもどうか、この願いが叶うなら。
頭に思い浮かぶサファイアの眼。優しいその手に、触れられたなら。声が、届くのなら。
悠佑
悠佑
バシャッ!!
力強い何かに引っ張られ、後ろを振り向いた。
If
悠佑
なんで。声は出ないのに、口が動いた。目の前の光景が信じられなくて。
夢かと思った。けれど腕を掴むその冷えた手に微かに残る温もりが、彼の存在を証明している。
どのくらい走っていたのだろう。息を切らしているまろは、俺の腕を掴んだままその視線を俺から逸らそうとしなかった。まるで逃がさないとでも言うかのように。
If
悠佑
突然の大声にビクッと肩を揺らした。まろは一瞬言葉に詰まった後、なんで。と今度は弱々しい声で呟いた。
If
さっきより優しく。けれどしっかりと腕を引っ張られ、俺の体はまろの腕の中へ。
If
その声が潤んでいることに、また涙が溢れる。どうして、どうしてまろが謝るんだ。全部俺のせいなのに。勝手に逃げ出して、勝手に消えようとして、迷惑ばっかりかけてる俺なのに。
If
そっと体を離し、また目を合わせて。
If
真っ直ぐな視線に、口を開いた。それでも声はやっぱり出なくて、無力な自分が嫌で唇を噛んで俯いた。
If
ああ、知られたくない。言わないで。
If
そんな訳ないと笑い飛ばせたら、どれだけ良かっただろうか。
頷いて、そのまま顔を上げずにいた。まろがどんな表情をするのかなんて見たくなかったし、次彼の口から発せられる言葉が怖くて、目を瞑った。
まろは、出会った頃からずっと俺の歌声が好きだと言ってくれた。
俺はもう、歌えない。まろの名前も呼べなければ、好きだと言ってくれた歌声も聞かせられない。
If
悠佑
まろはこういう時、いつも鋭い。首を縦にも横にも振ることなく俯いたままの俺を、まろはどう思うのだろう。
If
静かに名前を呼ばれ、覚悟を決める。もう何を言われても受け止めるしかない。それが、俺がどんなに傷付く言葉だろうと。
その時、まろの手が俺の頬に触れた。突然の温もりに驚いていると、顔を上げられその目と目が合う。
冷たい唇が、確かに触れ合った。
悠佑
If
まろの凛とした声が鼓膜を揺らした。
If
If
悠佑
どうして。
何もかも自分勝手なのに。声も出ないし、勝手に消えようとして一人で怖気付いて。最低な奴だと、お前なんて仲間でも恋人でもないと、もう顔も見たくないと言われても、おかしくないのに。
どうしてそんなに、深く愛してくれるの。
こんなに優しい大好きな彼に、何も返せないなんて。
悠佑
返したい。言いたい。その名前を、呼びたい。
悠佑
伝え切れない感謝と、これ以上無い愛を、どうか。
悠佑
If
掠れた声は、確かにその耳に届いたらしい。
If
伝えたい。この気持ちを。
悠佑
If
ごめんって言ったらきっと、そんな言葉が聞きたいんじゃないって怒るんだろう。
だから言わない。それよりも今、伝えたい言葉があった。
悠佑
悠佑
If
その目から涙がとめどなく溢れ出す。いつの間にか雨は上がっていて、雲の隙間から日差しが降り注ぎ、その涙がキラキラと輝いた。
If
悠佑
涙でぐしゃぐしゃになった顔で二人で笑い合って、雨と海でびしょびしょになった体で抱き締め合った。
声が枯れるまで、君への愛を紡ごう。
帰りたい。君の隣に。みんなが待つあの場所に。
君に話したいことが、伝えたいことが、まだまだ沢山あるから。
この先もどうか、隣で君に伝えさせて。
コメント
16件
勉強サボって見てたら泣いてしまい親にスマホしてることバレたぁっ!神作!
TERRORの作品で初めて泣きました…書き方も凄く上手くて、読み進めていくうちに涙が目に溜まってくのが直ぐに分かりました…最高でした! 応援してます!頑張ってください!