テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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運命

第8話 - 運命　その捌

120

2022年03月16日

#歴史

#恋愛

#明治

#呪い

#一次創作

次の日の朝、

漆喰凛太郎

なに！？

漆喰凛太郎

花園誠一が…生きているだと！

漆喰凛太郎

どういうことだ、説明しろ！

如月芳綱

まあまあ、落ち着いてください。

如月芳綱

俺の友人、神宮寺雅秀がしっかりと説明してくれますから。

如月芳綱

な？雅秀。

神宮寺雅秀

うん。

神宮寺雅秀

雅秀と芳綱は

上司の漆喰凛太郎に【花園誠一生存説】を報告していた。

神宮寺雅秀

順に沿って説明いたします。

神宮寺雅秀

まず、僕がその説を立てたきっかけは。

神宮寺雅秀

お涼さんの友人の術師、時雨さんの履いていた下駄に見覚えがあったからです。

漆喰凛太郎

！、履き物？

神宮寺雅秀

はい。

神宮寺雅秀

あの人が履いていた下駄の紐が…。

神宮寺雅秀

茜さんの屋敷にあった下駄と同じ柄をしていたんです。

神宮寺雅秀

サイズが違うだけで模様の色も、木の色も全く同じのものでした。

漆喰凛太郎

！

神宮寺雅秀

さらに、

神宮寺雅秀

時雨さんの下駄の紐には蝶の柄がついました。

神宮寺雅秀

蝶模様には『夫婦円満』という意味があります。

神宮寺雅秀

だから僕は

神宮寺雅秀

時雨さんの履いている誠一さんのものだと考えました。

漆喰凛太郎

なるほど。

漆喰凛太郎

つまり、お前の言いたいことは

漆喰凛太郎

「花園誠一が火事で死んだのなら、彼が死ぬ直前に身につけていたものも燃えるはずだから」

漆喰凛太郎

「時雨が誠一の下駄を履いているのはおかしい、よって実は生きている」ということか。

神宮寺雅秀

その通りです。

如月芳綱

にしても、下駄に蝶の模様なんて珍しいな。

神宮寺雅秀

おそらく、茜さんが蝶好きだからその模様にしたんだと思う。

神宮寺雅秀

初めて会った時、彼女は蝶の絵が入った着物と髪飾りをつけていたから。

如月芳綱

なるほどな。

漆喰凛太郎

…。

漆喰凛太郎

しかし、

漆喰凛太郎

それが本当だとしたらなんでその下駄を時雨が履いてるんだ？

漆喰凛太郎

下駄の持ち主の花園誠一が生きてるなら、その誠一が履けばいい気がするのだが…

神宮寺雅秀

それに関しては恐らく、

神宮寺雅秀

花園誠一は

神宮寺雅秀

なんらかの理由で我々に存在を知られないよう隠れているのだと思います。

漆喰凛太郎

ほう…。

漆喰凛太郎

そのなんらかの理由とは一体なんだ？

神宮寺雅秀

それは僕にもわかりません。

神宮寺雅秀

しかし、

神宮寺雅秀

その答えはおそらく、お涼さんと時雨さんが知っているでしょう。

漆喰凛太郎

！、あの花園屋の若女将か。

如月芳綱

そうそう！

如月芳綱

アイツら、とっても怪しいんですよ。

如月芳綱

な？雅秀。

神宮寺雅秀

お前の思う怪しいとは違うけどな。

神宮寺雅秀

あの2人は恐らく表向き専用の顔を持っているのでしょう。

神宮寺雅秀

ここからは僕の稚拙な推測なので、あまりひけらかすことはできないのですが…。

漆喰凛太郎

構わん、話せ。

神宮寺雅秀

分かりました。

神宮寺雅秀

では、まず時雨さんからですが…

神宮寺雅秀

彼の本当の姿は術師ではありません。

漆喰凛太郎

！？

神宮寺雅秀

今から数時間前、

神宮寺雅秀

僕は彼らをびっくりさせるために突然手を叩いて大きな音を出しました。

神宮寺雅秀

するとその時

神宮寺雅秀

時雨さんはヨシ、お涼さんより大きな声で反応し、自分のかぶっている布を取ろうとしたんです。

神宮寺雅秀

手を叩く前、彼は顔の布を絶対に外してはいけないものだと言っていました。

神宮寺雅秀

それを“突然大きな音がしただけ”で外そうとするなんて、おかしいと思えませんか？

神宮寺雅秀

それも7年も修行を積んだ術師がです。

漆喰凛太郎

なるほどな…。

漆喰凛太郎

術師は我々には見えない恐ろしい化け物と対峙することもあると聞く、

漆喰凛太郎

手の音だけでその反応見せるとは術師らしくないな。

神宮寺雅秀

はい。

神宮寺雅秀

次にお涼さんについてですが、

神宮寺雅秀

お涼さんは僕らのことを事前に知っている可能性があります。

漆喰凛太郎

⁉︎

如月芳綱

はっ！？

如月芳綱

お、おい！雅秀！それは俺も初耳だぞ！

如月芳綱

それは本当なのか！？

神宮寺雅秀

ヨシ、

神宮寺雅秀

僕がお涼さんに抱きつかれたことを思い出して。

神宮寺雅秀

お涼さん、僕がヨシと一緒に帰ろとうとした時に「如月様！」って言ってヨシを止めたでしょ？

如月芳綱

！、お、おう。

神宮寺雅秀

…ヨシさ、

神宮寺雅秀

あの時、お涼さんには自分の名前を名乗ってないよね？

如月芳綱

！

如月芳綱

そ、そういえば…言ってないな

如月芳綱

！

如月芳綱

…待てよ、それなら、

如月芳綱

ッ、

如月芳綱

なんで知ってんだよあの女ッ！

神宮寺雅秀

不思議だよね。

神宮寺雅秀

僕もヨシも誰もお涼さんにヨシの名前を教えてないのに、

神宮寺雅秀

彼女はヨシの名前を知っていた。

如月芳綱

せ、背中が一気に冷たくなったぜ…。

如月芳綱

あの女…怪しすぎるじゃねぇか！

ガラッ！

漆喰様！

漆喰凛太郎

！

神宮寺雅秀

！

如月芳綱

！

（突然、戸が開いて警官が入ってきた）

漆喰様、大変です！

漆喰凛太郎

なんだ？

先ほど、聞き込み調査で分かったのですが

花園誠一の祖父が死ぬ直前に、

ある人物が彼に酒と食べ物を提供していたことが分かりました。

神宮寺雅秀

！

漆喰凛太郎

なに？

漆喰凛太郎

一体それは誰だ。

それが、

花園屋のお涼という若女将のようです。

神宮寺雅秀

！

如月芳綱

！

如月芳綱

お涼…。

如月芳綱

あの女、ますます怪しくなってきたな。

神宮寺雅秀

ああ。

神宮寺雅秀

これがもし、誠一の祖父が僕達の予想通りに毒で死んだとすれば…

如月芳綱

祖父を殺した犯人は…。

神宮寺雅秀

言うまでもなくお涼さんだね。

漆喰凛太郎

…。

漆喰凛太郎

至急、花園屋の事件についての会議を行う！

漆喰凛太郎

担当の者たちを集めよ！

はっ！かしこまりました！

数十分後、

漆喰凛太郎

2人とも、ご苦労であった。

漆喰凛太郎

また花園屋について分かったら教えてくれ。

如月芳綱

はっ！

神宮寺雅秀

かしこまりました。

漆喰凛太郎

うむ。

漆喰凛太郎

それじゃな。午後も頑張れよ。

神宮寺雅秀

はっ！

如月芳綱

はっ！

如月芳綱

やったな雅秀！

如月芳綱

お前の観察眼のおかげで花園誠一の祖父を殺した犯人を突き止めることが出来た！

如月芳綱

おまけに、花園誠一の生存説や毒殺説も上司に信じてもらえたし…

如月芳綱

お前のおかげでひとつの事件が解決しそうな勢いだぞ！

神宮寺雅秀

…うん。

神宮寺雅秀

とりあえず腹を切って死んだ考えを取り除くことはできたね。

神宮寺雅秀

（でも…なぜだろう？）

神宮寺雅秀

(まだまだ謎を解く必要がある気がする。)

如月芳綱

お、

如月芳綱

雨が降ってきたな。傘を持ってきておいて正解だった。

神宮寺雅秀

（さっき警官が言っていた酒と食べ物を提供したのは本当にお涼さんなのか？）

神宮寺雅秀

(そしてもし、お涼さんが本当に祖父を殺した犯人だとしたら彼女の動機は一体なんだ？)

神宮寺雅秀

(そしてなぜ、彼女は祖父を殺した後、祖父の腹を切って首につるすなんてことをしたんだ？)

如月芳綱

…い。

如月芳綱

おい！雅秀！

神宮寺雅秀

！

如月芳綱

何ボーッとしてんだ。

如月芳綱

雨が降ってきたから俺の傘に入れよ。ずぶ濡れになんぞ。

神宮寺雅秀

えっ？

神宮寺雅秀

！

神宮寺雅秀

あ、本当だ。雨が降ってる。

如月芳綱

遠くで雷も鳴ってるぞ、早く入れ。

神宮寺雅秀

うん。じゃあお邪魔するよ。

神宮寺雅秀

（なんだろう。少し、嫌な予感がする。）

一方その頃

【茜の家】

ガチャッ！

執事

お嬢様、お茶をお持ちしました。

執事

！

茜

…。

（茜が無言で編み物をしている）

茜

…あら、ありがとう。

茜

後もう少ししたらいただくわ、そこの台の上に置いておいて。

執事

…はい。

執事

それでは、私は自分の部屋におりますので

茜

ありがとう。

ガチャッ！

茜

…。

茜

（お酒のせいかしら頭が痛いわ。二日酔いってやつかしら？）

茜

（私ったら本当に馬鹿ね。）

茜

（お酒に酔って、隠していた墓参りのことも全部喋っちゃって）

茜

（1人の男性からの偽装の愛にまんまと騙されて…）

茜

（神宮寺さん、今頃何をしているのかしら）

茜

（やっぱり…お涼さんのところかしら。）

茜

…誠一さん。ﾎﾞｿｯ

茜

（叶うのなら、かわいそうにと言って私を抱きしめてほしいわ）

茜

（彼の愛は本物だった…神宮寺さんとは違って。）

執事

えっ、ちょっ…！

執事

いきなり入ってこないでください！

茜

！

茜

？…何かしら？

ガチャッ！

執事

お、お嬢様！

茜

どうしたの執事。

茜

誰かいらっしゃったの？

執事

いや、

執事

えっと…。

お涼

茜さん、そこにいたんですね。

茜

！…

茜

貴方は…

お涼

久しぶりですね、茜さん。

お涼

私の兄が死んでも、お元気そうですね。

茜

！…

お美枝

あ！茜お姉ちゃんだ！

お美枝

あたし、お美枝だよ！覚えてる？

茜

お美枝ちゃん…ええ、覚えてるわよ。久しぶりね。

お涼

お美枝、静かにしなさい。

お涼

お姉ちゃん、これから茜さんと真剣な話をするの。

お美枝

！…。

お美枝

は、はぁい…。

茜

（お美枝ちゃん…シュンとしてるわ。）

茜

（後で美味しいお菓子でも振舞ってあげよう。）

お涼

茜さん。

茜

！…

お涼

今日私は、茜音さんに話したいことがあって来たんです。

お涼

話、初めていいですか。

茜

！

茜

え、ええ…もちろん。

お涼

茜さん。

お涼

貴方、私の神宮寺様に好意を寄せられてるんですね。

茜

！…

茜

（“私の”？）

茜

や、

茜

やっぱり、恋人同士でいらっしゃるの？

お涼

！

茜

執事から聞いたわ。

茜

お涼さん、神宮寺さんととっても仲良いそうじゃないの。

お涼

…。

お涼

そうですか、

お涼

もう知っていたんですね。

茜

！

茜

（やっぱり、事実だったのね）

お涼

私と神宮寺様は生まれた時から親同士で結婚の約束をしておりました。

お涼

「お互いの歳が18を過ぎたら、結婚しよう」と

茜

！？

茜

（18、⁉︎）

茜

（てことは、今年じゃない！）

執事

！

お涼

約束をしたのは私達が5つの時だったので、今の神宮寺様は忘れておられますが

お涼

…私は、あの時の約束を忘れずに愛してるのです。

お涼

神宮寺様を。

茜

！、

茜

…そう。

お涼

はい。

お涼

なので、

お涼

私が一方的に神宮寺様を好いているのです。

お涼

ですが、

お涼

この私、お涼は、

お涼

貴方よりずっと前から神宮寺様をお慕いしていました。

お涼

あのハッキリとした目鼻立ちに、色の白い肌…見るだけで胸がときめき、あの人を考えない日はありません。

お涼

茜さん。

お涼

私の好きな人を呪いから守るためにも、

お涼

神宮寺様を諦めさせてもらえませんか。

茜

！…

茜

私が？

お涼

…貴方しかいらっしゃらないでしょ。

お涼

貴方は、神宮寺様に好かれているのですから、馬鹿なんですか？

執事

貴様！

執事

今お嬢様に向かって馬鹿と言ったのか！訂正しろ！

茜

やめて執事。

茜

お美枝ちゃんが怖がってるわ、黙ってて。

執事

！

お美枝

うぅ〜っ…。

執事

…。

お涼

…貴方は、私にとって本当に憎い。

お涼

貴方の呪いのせいでみんな死んだんですよ、祖父も、友人も。

お涼

そのくせ、私の欲しかった男を弄んで…

お涼

ッ、

ガタッ！

（お涼が勢いよく立ち上がる）

お涼

どれだけ私を苦しめたらお気に召すんですか！！

茜

！…

お涼

この際ハッキリ言わせていただくと。

お涼

私は貴方と兄が結婚する時から嫌な予感を感じていたんです！

お涼

貴方はいっつもよく分からない洋風の服を着て、髪もくくらずうざったい格好をしてばかり！

お涼

日本の礼儀も知らず、ぺちゃくちゃ話して、おしとやかさもない！

お涼

そんな女に…兄を渡す？

お涼

冗談じゃないと思いました！

お涼

貴方に惚れた兄の思考は理解できません！

執事

！…

お涼

そしてその結果…兄は

お涼

貴方のせいで火に焼かれて、

お涼

貴方は、もう普通の女ではありません！

お涼

1種の人殺しです！

お涼

貴方みたいな人殺しに、私の神宮寺様を渡すわけにはいきません！

お涼

もうこれ以上、その呪いで私達を苦しめるはやめてください！

お涼

母も、父も、兄も、祖父もいない今…私には…もう神宮寺様しかいないんです…！

茜

！…

茜

…。

お涼

それでは、私はこれで失礼します。

お涼

茜さん、さようなら。

ガチャッ

執事

！…。

執事

ッ、

執事

あの女、お嬢様に向かって何たる態度を！

執事

お嬢様は神宮寺から一方的に好意を寄せられているだけなのに！

執事

なぜあんな言葉をかけられなければならないんだ！

執事

あれが日本の誇るヤマトナデシコとは到底思えない！

執事

それともなんだ？日本の男はあんな立場を弁えない女が好きなのか？

茜

執事、やめて。

執事

頭に虫が沸いてるとしか思えない！

執事

神宮寺もさっきのお涼…いや、あの女も！お嬢様をどなたと心得ているんだ！

執事

身分を弁えることさえもできないくせに、何が大和魂だ！馬鹿馬鹿し…

茜

やめてって言ってるでしょ！！

執事

！

執事

お、

執事

お嬢様…っ？

茜

もういいから。

茜

…私、

茜

お涼さんの言う通りに神宮寺さんの結婚の申し込みを断るわ。

茜

そうすれば、お涼さんと神宮寺さんは幸せに暮らせるし…私も菫坂さんと邪魔なく結婚できる。

茜

私が断れば、みんな幸せ。ハッピーエンドよ。

茜

だからもう怒るのはやめて、聞きたくない。

執事

…。

茜

はー、なんだか眠たくなっちゃったわ。

茜

私、お部屋に行くわね。

執事

！、お嬢様…。

茜

気にしないで。

タッタッタッ

バタンッ！

茜

…。

茜

神宮寺さん、お幸せにね…。

「茜さん」

「貴方は…僕の希望の人です。」

「嘘偽りなく、貴方が欲しい。」

「貴方の笑顔のためなら、僕は何だってします」

「僕は最後まで、貴方を守り抜きたい。」

茜

…

茜

（あの言葉も、あの笑顔も）

茜

（全部嘘だったのね。）

茜

（少しだけときめいてしまった自分が恥ずかしいわ。）

茜

（もっと冷静になってしっかり考えればよかった）

茜

（冷静に考えれば、）

茜

（呪われた娘なんてあだ名をつけられた私を好きになる男なんているはずがないのに。）

茜

ッ、

ぽろぽろ（茜の目から涙が落ちる）

茜

…本当に

茜

馬鹿な女ね…私は。

茜

……本当の、本当に。

つづく

運命

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120

6件

更新ありがとうございます😭 神宮寺さんの推理シーンでは、何処ぞの子供(高校生)探偵を彷彿とさせるものを感じました…笑伏線回収とか、やっぱり狙って書いていらっしゃるのでしょうか… お涼さん……辛いのは凄く分かるけれども…うーん…複雑…！😅 続き楽しみに待ってます！

プロフィール

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