太宰の憂鬱

【中島敦】

私が入水自殺中に出会い、拾ってきた虎の少年

彼もまた、武装探偵社の1人

全くの嘘だ

むしろ全く体調は良くない

それでも弱みを見せたくない

体の重さが朝の比でない

どうしてか、クラクラする

おぼつかない足で帰路に着く

家に着く頃には限界だった

玄関、中に入った瞬間足の力は抜け、そのまま地面につっ伏す

世界が回っているようだ

比喩などではなく、私の視界は今ぐるぐると回っている

堪らず吐いてしまう

動悸が間近で聞こえるような錯覚

必死に動こうとしたが、そんな気さえ一瞬でなくなり

冷や汗でびちょびちょのまま荒々しい自身の息遣いさえ遠のいた

口の中に毒を流し込む

首に縄をかける

寒い日関わらず、川に入る

今回は大量の薬品を口に入れ、無理やり飲み込んだ

1人苦しんでいると、ノックもなしに部屋の扉が空く

中也

【中原中也】

どうしてここにいるのか

記憶の中の15歳の姿に近しい

いいや、彼は15歳だ

これは夢だ

中也が焦った顔で私に駆け寄ってくる

どうしてそんな顔をしてくれるのか

背が低いくせに力持ちな此奴に横抱きされ

“僕”の意識は飛んだ

目を開けると同時に襲う頭痛

吐いたまま気絶したせいか、なんと懐かしい夢を見た

動悸は良くなったのか、頭痛は相変わらずだが体を起こした

時計を見る、唯一使えなくなった頭でわかったのは今が深夜2時ということ

あれから数時間気絶していたのか

と、自分自身に呆れる

涙があふれる

違う、これは頭が痛くて、苦しくて出た涙だから

ひとりが寂しくて、、、

辛くて出た涙じゃない

自分に言い聞かせる

内心そんな事を思いながらスマホを触る

痛みでおかしくなったのか

私は中也の連絡先を探していた

さっきあんな夢を見たせいだ

だから

それ以外に何も無い

堪らず家を出た

何故中也が夢の中で出てきたのか

地下鉄、人気のない階段を私が降りる度大きな足音が響く

ポートマフィアにいた頃、私はしょっちゅう自殺未遂をしていた

あの頃はところ構わず自傷行為を繰り返していた

ポートマフィアでは、私がいくら自殺未遂してもいつもすぐに駆けつけてくれた

何度も何度も繰り返していたのに

そんな中で失敗、やらかしをして一大事になったことも何度かある

その度に醜態をさらした

それでも

森さんも、中也も、夢野も、紅葉、芥川、銀、広津さんもいつも心配してくれた

甘えていたんだ

私は、、、

“僕は”

あの頃に戻りたいの？