好 き っ て 言 っ て や る も ん か

2限目が終わって業間休み。

教科書を整理していると、

前の席のトサカ頭が 振り返った。

黒尾は唇を尖らせて拗ねる。

これは昨日のこと───

こんな巨人を 低身長の私の前の席にした、

担任は絶対に許さない。

喧嘩をする私と黒尾に、

教室では生徒と先生の 笑う声が広がったのだった。

バチバチと 私と黒尾の間に火花が散る。

ふと我に返ると 距離が近くて、

私はプイッとそっぽを向いた。

と、黒尾の大きな手が 私の首に触れた。

突然のことにビクッと肩が跳ね、 声まで出てしまう。

黒尾が咄嗟に手を離す。

耳から頬まで じわりと熱くなる。

黒尾の耳も赤くなっていて、 今朝みたいな沈黙が始まる。

今はその沈黙を 破ってくれる人もいない。

普段なら黒尾相手に こんな事で照れたりしない。

「気安く触ってんな」って 言い返してたハズだ。

今日は何だか様子がおかしい。

私も、黒尾も。