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#ご本人様には関係ありません
はるⒸ
355
青はゆっくりと目を開けた。
眩しい朝日がカーテンの隙間から差し込んでいて、
見慣れた天井がぼんやりと視界に映り込み、
その光景を認識した瞬間、青の頭の中は真っ白になった。
青
掠れた声が漏れる。
自分の部屋だった。
毎日見ていた机。
壁に掛けられた時計。
窓際に置かれた本棚。
何も変わっていない。
昨日までと同じ景色。
いや。
事故に遭う前から見慣れていた景色そのものだった。
青は慌てて起き上がる。
心臓が異様な速さで波打っている。
呼吸が浅く、喉が乾いている。
青
昨日、自分は確かに桃の前で倒れた。
期限も過ぎたはずだ。
条件も達成できていない。
桃も殺していない。
なのに、どうして。
青
呟いてみる。
けれど、その声は妙に現実的だった。
頰をつねると痛い。
机に触れると冷たい。
全部、本物だった。
青の背筋をぞわりと寒気が走る。
現実なのか。
夢なのか。
それすら分からない。
時計を見る。
いつもの登校時間だった。
青は弾かれたように立ち上がる。
制服を掴む。
息が乱れる。
頭の中は、一つのことでいっぱいだった。
桃に会いたい。
今すぐ。
今すぐ顔が見たい。
学校までの道を、青は全力で走った。
息が苦しい。
肺が痛い。
それでも止まれない。
信号が変わるのを待つ時間さえ、もどかしかった。
足がもつれそうになる。
転びそうになる。
それでも、ただひたすら走った。
教室の扉を勢いよく開けた。
ガラッ、と大きな音が響く。
クラスメイトたちが驚いたように振り返る。
けれど青はそんなこと気にも留めなかった。
視線は一直線だった。
いた、桃がいた。
いつもの席。
いつもの場所。
いつもの顔。
友達と話しながら笑っている。
生きている。
ちゃんと生きている。
その事実を認識した瞬間、青の目から涙が溢れた。
青
声が震えた。
考えるより先に体が動き、気づけば走っていた。
涙で視界が滲む。
胸が苦しい。
嬉しい。
嬉しい。
嬉しい。
桃に飛びつく。
はずだった。
青
青の体は、そのまま前へ進んだ。
桃に触れた感覚がない。
抱きついた感覚もない。
すべて。
何もない。
桃は友達と話し続けていた。
笑っている。
青の存在など、最初からなかったみたいに。
青
青は震える声で呼ぶ。
返事はない。
青
もう一度、少し大きな声で呼ぶ。
また返事はなかった。
桃は笑っている。
友達と言葉を交わしている。
青の方を一度も見ない。
そして青は、あることに気がついた。
桃の声が聞こえない。
周りの音は聞こえるのに、桃の声は聞こえない。
口元だけが動いている。
青の喉がひゅっ、と鳴った。
嫌な汗が流れる。
背筋が凍る。
青
桃に近づき、目の前まで行く。
手を伸ばすが、触れられない。
触れているはずなのに、何も感じない。
まるで空気に手を伸ばしているようだった。
青
青の顔から血の気が引く。
心臓が嫌な音を立てる。
呼吸が苦しい。
視界が揺れる。
青
声が震える。
目の前にいるのに。
こんなに近くにいるのに。
青
青
青
何度呼んでも。
何度手を伸ばしても。
桃の目に自分が映ることはなかった。
青の足がふらついた。
教室の景色がぐにゃりと歪む。
耳鳴りがする。
誰かの話し声が遠くなる。
怖い。
怖い。
怖い。
青
青
青
視界が大きく揺れた。
足元から世界が崩れる。
まるで床が消えたように。
青
最後まで呼べなかった。
強烈な目眩が青を襲う。
体から力が抜け、意識が闇に引きずり込まれる。
青が次に目を開けたとき。
そこには何もなかった。
空もない。
地面もない。
風もない。
ただ白い世界が、どこまでも広がっている。
青
青は、その景色を知っていた。
忘れるはずがない。
事故に遭ったあと。
初めて神様と会った場所。
生と死の狭間。
全ての始まりの場所だった。
青の喉が震えた。
視界が滲む。
理解してしまった。
理解したくなかったのに。
青
掠れた声がが漏れる。
青
笑おうとした。
上手く笑えなかった。
青
その瞬間。
張り詰めていたものが全部切れた。
青はその場に崩れ落ちた。
肩が震え、次々に涙が零れ落ちる。
青
桃に会いたかった。
もう一度だけ。
もう一度だけでよかった。
今度こそ。
ちゃんと伝えたかった。
好きだ、って。
利用なんかじゃなかったって。
最初はそうだったかもしれないけれど、
途中から違ったんだって。
言いたいことが山ほどある。
謝りたいことも。
伝えたいことも。
全部。
なのに。
終わってしまった。
青
名前を呼ぶ。
当然返事はない。
青
涙が止まらない。
会いたい。
会いたい。
会いたい。
そのときだった。
『 期限切れだ。』
聞き覚えのある声が響く。
青は顔を上げる。
そこには神様がいた。
最初に会った時と同じ姿。
同じ穏やかな表情。
同じ冷静な瞳。
神様は静かに青を見下ろしている。
『 なぜ彼を殺さなかった。』
青の肩が震える。
『 チャンスはいくらでもあっただろう。』
『 屋上 』
『 放課後 』
『 階段 』
『 君は何度でも実行できた。』
白い空間に声が響く。
『 なぜ殺さなかった。』
青は俯く。
涙がぽたりと落ちる。
答えはずっと前から分かっていた。
青
声が震える。
神様は何も言わない。
青は唇を噛んだ。
青
青
涙が溢れる。
青
青
青
声が崩れる。
青
青
涙が止まらない。
神様は静かに聞いている。
青は泣きながら顔を上げた。
ぐしゃぐしゃになりながら。
青
その言葉が零れ落ちる。
青
青
息が詰まる。
青
青
青は泣き崩れた。
青
白い世界に声が響く。
長い沈黙が訪れる。
神様はしばらく何も言わなかった。
やがて。
ふっ、と小さく笑った。
青が顔を上げる。
神様は初めて見る表情をしていた。
どこか優しそうで。
どこか嬉しそうで。
そして。
『 合格だ。』
青の思考が止まる。
青
神様は微笑む。
『 君は最後の条件を達成した。』
青
青は呆然と呟く。
青
神様は首を横に振った。
『 だからだ。』
青は意味がわからない。
神様はゆっくり言った。
『 最後の条件は試験だった。』
『 生きるために他人を犠牲にするか、』
『 それとも大切な人を守るか。』
神様の声は静かだった。
『 本当に生きる資格のある者は 』
『 自分の命のために誰かを殺したりしない。』
青の目が大きく見開かれる。
『 君は最後まで悩み、苦しみ、そして迷った。』
『 それでも殺さなかった。』
神様は優しく笑った。
『 だから合格だ。』
青の瞳から大粒の涙が零れる。
信じられなかった。
本当に。
本当に。
青
声が震える。
青
神様は頷く。
『 帰るといい。』
その言葉と同時に、
真っ白な世界が光に包まれた。
そして最後にもう一度だけ。
神様の声が響く。
『 彼は今も、君を待っているぞ。』
その瞬間。
青の世界は眩しい光に飲み込まれた。
𝐍𝐞𝐱𝐭…♡×2000
コメント
7件
神展開きたー!!!! 待ってました!続きも待ってますね💕︎︎ 最高
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