叶
でさ、この間…
叶兄の部屋から話し声が聞こえる。どうやら配信中らしい。
私はリビングで宿題をやっていたのだが、消しゴムをなくしてしまい、叶兄が借りていたのを思い出して、気軽に部屋へ向かった。
亜蓮
叶兄、消しゴ…
ノックもせずにドアを開けた瞬間、目の前にあるカメラとマイクに気づいて固まる。
叶
おっと…
叶
亜蓮?
叶兄が驚いた顔で振り向く
画面の向こうから、見慣れない無数のコメントが流れているのが見えた。
叶リスナー
誰!?
叶リスナー
この声…女か?
叶リスナー
家族バレ!?
叶リスナー
叶くんの家に人がいたんだ!
どうやら視聴者に思いっきり声を聞かれたらしい。
叶
亜蓮、今配信中!
叶
入ってくるなら言えよ!
叶兄が小声で言うけど、もう遅い。マイクをオフにするのがやっとだったみたい。
亜蓮
え、知らなかったし…
私は急いで部屋を出たけど、何か嫌な予感がしてならない。
その夜
リビングに集まった私たち兄妹の間に緊張が走った。
叶兄のスマホに、マネージャーらしき人から連絡が来ていたのだ。
マネ
叶さん、葛葉さん、それと妹さんも、明日の午後に事務所に来てください
亜蓮
えっ、私も!?
予想外の事態に驚く私に、葛葉兄はいつもの調子で笑う
葛葉
いいじゃん、なんか面白そうじゃね?
亜蓮
面白くないし!
そんな葛葉兄と叶兄を見ながら、私は胸の中でため息をついた。
一体何が起きるんだろう―