コメント
0件
この世界には、不思議な法則がある。
生まれた時から、どうやら「運命の人」というのが存在するらしい。
一人に一人。
生まれた時からすでに、定められているようで。
その相手が、何処に住んでいて誰なのかは分からない。
けれど、「運命の人」と定義されている人と出会うと、必然的、そして本能的に分かるそうだ。
でも、科学的な分析されたデータによると、自分に定められた「運命の人」に出会う事の出来る確率は、およそ0.000000000000017%
ほとんどの人が、「運命の人」に出会えずに終わるらしい。
もし、本当に「運命の人」が居るのならば、
僕の「運命の人」は、誰?
教室の一番後ろの端の席。
机に頬杖をついて、僕はただ窓の外を眺めていた。
綺麗な青色の空には、二羽の真っ白な鳥が交差して飛んでいる。
𝐽𝑢𝑛𝑔𝑘𝑜𝑜𝑘
𝑀𝑖𝑛𝑗𝑦𝑒
窓の外をぼんやりと眺めていたら、目の前に人がいた。
知らない人。
𝐽𝑢𝑛𝑔𝑘𝑜𝑜𝑘
𝑀𝑖𝑛𝑗𝑦𝑒
𝑀𝑖𝑛𝑗𝑦𝑒
𝐽𝑢𝑛𝑔𝑘𝑜𝑜𝑘
口下手で極度の人見知りの僕は、何も返せない。
下手に人と関わりを持つのも面倒だし、疲れるから。
初めての高校。
目に見えるものすべてが新しくて、 不安だ。
中学を卒業したら、普通に地元の高校に進学する予定だった。
けど、両親の経営していた会社が社員のミスにより、倒産してしまい。
僕は都会の馴染み深い故郷から、古臭いこじんまりとした田舎の高校に一人、放り出された。
知らない人、知らない環境。
それだけでも十分不安だというのに。
僕が今日から通い始めたこの古臭い校舎の学校は、よりによって地域でもある程度不良校として名の通った学校なのである。
前まで通っていた市立の学校。
綺麗でよく整備された新しく立派な校舎に、
整った制服で統一されていて、振る舞いが綺麗な上品な生徒。
でも、今は。
手入れも行き届いていない、汚く古い校舎に、
シャツを出したり、首元を開け放ったり。
タバコの箱がポケットから見えていて、統一感や清潔感が無い、生徒。
…凄く、惨めに感じる。
父さんと母さんは、大丈夫、また新しい環境で一からやり直そう。
そう笑って言うけれど。
生憎、僕は笑って今までの事を全て都合よく忘れることが出来るほど心が広くて、出来た人間じゃないんだ。
𝑀𝑖𝑛𝑗𝑦𝑒
𝑀𝑖𝑛𝑗𝑦𝑒
周りの生徒と比べると比較的まともそうで真面目そうなミンジェが前の席から振り向いて、僕の顔を覗き込んだ。
𝐽𝑢𝑛𝑔𝑘𝑜𝑜𝑘
𝑀𝑖𝑛𝑗𝑦𝑒
驚くのも、無理は無いと思う。
僕が前まで通っていた中学は、お金持ちの通う、いわゆるセレブな私立の学校として、国でも平均的に学力が高い事で有名だったからだ。
学力が高く、偏差値も高い私立の学校と、
学力は底辺で、田舎の荒れた不良校。
別に優越感に浸ろうとした訳でもないのに。
𝑀𝑖𝑛𝑗𝑦𝑒
𝐽𝑢𝑛𝑔𝑘𝑜𝑜𝑘
ザワ ザワ ザワ …
噂の波紋が教室中を駆け巡る。
この時、初めて僕は嫌な空気感を教室に感じたんだ。
𝐽𝑦𝑢𝑛
𝐽𝑢𝑛𝑔𝑘𝑜𝑜𝑘
𝐽𝑦𝑢𝑛
𝐽𝑦𝑢𝑛
𝐽𝑦𝑢𝑛
ザワ ザワ ザワ …
…目を付けられたか。
ポケットに手を突っ込み、タバコを咥え、首元は全開でシャツはズボンに入れていない。
そんな、典型的な不良というような奴が、僕の隣まで来た。
𝐽𝑢𝑛𝑔𝑘𝑜𝑜𝑘
ザワザワとしていた生徒が、どんどん集まって見物しに来る。
…見世物にされた気分だ。不快だ、とんでもなく。
𝑀𝑖𝑛𝑗𝑦𝑒
𝐽𝑦𝑢𝑛
𝐽𝑢𝑛𝑔𝑘𝑜𝑜𝑘
𝑀𝑖𝑛𝑗𝑦𝑒
𝑀𝑖𝑛𝑗𝑦𝑒
𝐽𝑦𝑢𝑛
どういう事…だ?
奴が僕にガラ悪く絡んできたのをただ見物していたミンジェが奴に話しかけただけで、奴は急に大人しくなった。
…ミンジェって…見かけによらず…もしかすると…結構な不良なのかもしれない。
𝑀𝑖𝑛𝑗𝑦𝑒
𝐽𝑢𝑛𝑔𝑘𝑜𝑜𝑘
見物人の間からヒソヒソと「ミンジェ 様」とか「ヤバイ」とかそのようなワードが聞こえてくる。
僕はたいして気にかけず、再び窓の外を眺める。
頭の隅に4人の懐かしく親しい親友の顔が思い浮かんだ。
ドギョ ム に ミンギュ、ジェヒョン に ウヌ…
あいつら…元気かなぁ…
凄く、惨めで仕方がない。
もし、両親の会社で働いていた社員が失敗していなければ…今頃は僕はまだ友達と綺麗な校舎で楽しく学校生活を送れていたのか。
そう考え始めると、本当に惨めで自分が可哀そうでたまらなくなる。
実のところ、僕は両親が嫌いだ。
呑気そうで、何があっても幸せと笑っていられる、仲睦まじい両親の様子を見ていると、腹が立つ。
そう、僕の両親は、「運命のつがい」同士である。
「運命のつがい」とは、生まれた時から定められている「運命の相手」を見つけて結婚した時の名称だ。
つまり、僕の父さんと母さんは運命の相手同士。
普通に生きていたらほとんどの人が自分の運命の人に出会えずに終わってゆくのに、両親は奇跡的に巡り合えたのだという。
父さんと母さんが言うには、「運命の相手」と一緒になれば、人生の苦が全て苦ではなくなるという事らしい。
だから、お前も早く「運命の相手」を見つけなさいと。
両親曰く、「運命の人」とすれ違ったときに、不思議な高揚感があり、ビビッと本能的、そして直観的に分かるそうだが、僕はイマイチ信じることが出来ずにいる。
そんな人とすれ違ったときに一瞬で分かるものなのか。
正直言えば、僕は運命など生ぬるい言葉など信じていない。
「運命の相手」など、いるわけが無いのだろうと思っている。
でも、もしも本当に「運命の人」というものが存在していて、もし出会うことが出来たなら、僕の生活も、色鮮やかに変化するのだろうか。
いつでもどこでも場所と時をわきまえず、ラブラブとする仲睦まじい両親の姿を見て、そう思うようになった。
もしも、僕も「運命のつがい」になることが出来たのならば…
僕も肩の力を抜いて、毎日を楽しく生きることが出来るのだろうか。
この世界は、本当に不思議で一杯だ。
僕は頬杖を突きながら、窓の外を眺めた。
真っ青な空には、一直線に飛行機雲がどこまでも伸びていた。
♡ → 100