俺がゆうらと出会ったのは
10年前
中学生の頃だ。
真新しい制服に身を包んだゆうらが透き通るような声で
植剣 雪頼
と、俺の名前を呼んだあの日から
俺の心の中には彼女が住み着いている。
課長
課長
飲みに行こうと誘われた居酒屋で
課長がそう切り出した。
ゆうらの部屋はいつも
甘いレモンの香りがする。
久我 杞円
久我 杞円
俺がゆうらの家を訪ねたのは
ヤドリギの下でキスをした
クリスマスの翌日のことだ。
勝手口から台所を覗くと
年の離れたゆうらの姉が
お粥を炊いているところだった。
植剣 メグル
メグ姉は
ゆうらによく似た眼差しで、冷たくそう言った。
久我 杞円
植剣 メグル
植剣 メグル
メグ姉は土鍋に一つ卵を落として蓋をした。
植剣 メグル
植剣 メグル
植剣 メグル
植剣 メグル
植剣 メグル
俺はとっさにメグ姉の手首をつかんで
問いただす。
久我 杞円
植剣 メグル
よく見るとメグ姉の目は
赤く充血していた。
植剣 メグル
怒気をはらんだ低い声でメグ姉が言う。
植剣 メグル
植剣 メグル
植剣 メグル
植剣 メグル
植剣 メグル
メグ姉は昨夜から一睡もしていないと言った。
一晩中ゆうらの背中をさすっていたらしい。
赤く充血した目を半眼に閉じて
メグ姉が俺に土鍋を押しつけた。
久我 杞円
呼びかけると、彼女は薄く目を開いた。
熱のせいで白い頬が赤く染まっている。
久我 杞円
植剣 雪頼
その言葉に
胸の奥がチクッと痛む。
俺の存在はまだ、メグ姉には適わない。
久我 杞円
植剣 雪頼
植剣 雪頼
植剣 雪頼
ゆうらの声が揺れた。
まなじりから涙がこぼれる。
俺の存在は
まだ
メグ姉には適わない。
一瞬だけ奥歯を噛んで
俺は笑みを浮かべた。
久我 杞円
植剣 雪頼
久我 杞円
久我 杞円
久我 杞円
植剣 雪頼
欲しくない、とゆうらは首を振った。
俺はベッドに腰を下ろして
ゆうらを膝に抱く。
彼女の火照ったカラダは
しっとりと汗ばんでいた。
久我 杞円
久我 杞円
彼女はなにも答えず
俺の胸に額を押しつけた。
植剣 雪頼
久我 杞円
聞き返すと
ゆうらはまた首を振る。
久我 杞円
久我 杞円
植剣 雪頼
久我 杞円
ゆうらが濡れた瞳で俺を見上げた。
彼女のその唇に、そっと触れる。
昨晩とは違う熱い体温。
ゆうらは嫌がる様子もない。
病床の寝込みを襲うなんて
サイテーなことだと理解している。
理解はしていても
本能が言うことを聞かない。
俺はそのまま
彼女に深く口付けた。
舌先でその歯並びを確かめるように。
植剣 雪頼
久我 杞円
久我 杞円
植剣 雪頼
植剣 雪頼
植剣 雪頼
ゆうらが甘くささやいた瞬間
俺は
最後に残った理性の糸が切れる音を聞いた。
課長
課長はそう言って
一人でうなづいた。
課長
課長
久我 杞円
久我 杞円
俺は言葉を濁して
ジョッキに残ったビールを飲み干した。
久我 杞円
課長
課長
課長
久我 杞円
久我 杞円
課長がじろりと俺を睨む。
久我 杞円
久我 杞円
久我 杞円
課長
課長
久我 杞円
久我 杞円
久我 杞円
課長
久我 杞円
俺はやけくそで
久我 杞円
と、厨房に叫んだ。
久我 杞円
久我 杞円
久我 杞円
課長
課長
課長
課長
課長は励ますように俺の肩をたたいた。
課長
課長
久我 杞円
課長
課長
課長はもう一度俺の肩をたたいて
一人でうなづいた。
課長
課長
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