昼休み。
私は久しぶりに、クラスの女子・桃に話しかけられた。
桃 。
ねぇ、橙さん。
桃 。
最近、赤くんと仲良いよね?
橙 。
あ、うん……ちょっとだけ、一緒に勉強とかしてて
桃 。
ふーん……珍しいね、
桃 。
赤くんって、誰とでも距離保つ人かと思ってたから
そう言いながら、桃は笑った。
けれど、その目は少し探るようだった。
私が赤くんと親しくしていることに、周囲はもう気づき始めている。
放課後、教室で荷物をまとめていると、赤くんが静かに近づいてきた。
赤 。
……橙さん、さっきの子、誰?
橙 。
え? あぁ、桃さん。
橙 。
クラスの子だよ。少し話しただけ
赤 。
ふーん……あの子、あんまりいい子じゃないよ。
赤 。
君のこと、陰で悪く言ってた
橙 。
……え?
そんなふうに聞いたことはない。
むしろ、私に話しかけてくれる数少ない子の一人だったのに。
赤 。
気をつけた方がいい。
赤 。
君が誰かと仲良くしようとすると、きっと邪魔してくるから
橙 。
でも、そんな証拠……
赤 。
俺は見てた。
赤 。
君のために言ってるんだよ。俺は、君の味方だから
赤くんはそう言って、優しく微笑んだ。
その目は、真っ直ぐで、強くて_でも、どこか冷たい。
橙 。
……ありがとう。
橙 。
でも、私は自分でちゃんと判断するよ
そう言うと、赤くんは少しだけ微笑を崩したように見えた。
けれどすぐに、いつもの穏やかな顔に戻ってこういった。
赤 。
うん。君がそう言うなら、それでいい。
赤 。
……でも、君が傷ついたら、俺は許さないから
それが、誰に向けられた言葉なのか。
私は、そのとき考えないようにしてしまった。