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夜。
居間のソファでうたた寝していた私は、物音で目を覚ました。
時計を見ると、21時過ぎ。家には誰もいないはず。
母は夜勤で、父は出張中。
今日は1人の日だった。
橙 。
そう思って立ち上がり、カーテンをめくった瞬間、心臓が凍りついた。
_窓の向こう、ベランダに人影があった。
しかも、それは見覚えのある制服姿。
橙 。
私の口から、その名前が自然とこぼれた。
赤くんは、静かに窓をノックし、いつものように微笑んだ。
赤 。
赤 。
橙 。
赤 。
橙 。
震える声を押し殺すように、私は言葉を詰まらせた。
けれど彼はまるで悪びれる様子もなく、ガラス越しに私をじっと見つめてくる。
赤 。
赤 。
その瞳には、狂気も恐怖もなかった。
ただ、心の底から信じきった"優しさが"、真っ直ぐにこちらを向いていた。
赤 。
橙 。
私は震える手でカーテンを閉めた。
鼓動が早くなる。足が動かない。
でも、不思議と涙は出なかった。
なぜなら私は、うすうす気づいていたのだ。
_この人は、"一線"を越えようとしている。
そして私も、それを完全に拒めずにいることを。