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月雪花も君と

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月雪花も君と

2 - 思ひ初めしか

♥

242

2024年12月20日

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天馬宅

わぁ……✨️

適当に座ってくれ。

うん♪

怪我してるんだろ。見せてみろ。

ああ、分かったよ。

そう言うや否や、なんの躊躇いもなく上裸になった。

ばッッッッッ!?!?

え?

慌てて後ろを向き、その体を見ないよう努めた。

すまん!!今のはオレが悪かった!!

えっと…見てもいいよ?神主くんなら。

やめろッ!!!

え、えっと……お前、男なんだろう?せめて男になってくれんか…?

えっ

そ、それは……

は、恥ずかしいからちょっと…

どこに羞恥を感じるのか全く分からんのだが!?

うぅ…男の何の魅力も無い体なんか君に見せたくないよ…

いや、しかしだな…その姿じゃ治療するに出来ん、

いいよ、見ても。人間の男はこの体好きだろう?

好き……ではないとは言いきれんが!!

とにかく頼む!!

き…嫌いにならないでね。

ならんならん。

…分かったよ。

い、いいよ。

おお。

……あんまり変わってないが。

どこがさ。

髪が短くなって、胸が無くなっただけじゃないか。

「だけ」って…

…それより、これでもう脱いでいいのかい?

ああ。

…本当は見せたくないけど、

……はい。

……ほぅ、

正直、恥じらいながら脱ぐ様は女姿の時よりも……というのはここだけの秘密だ。

随分と派手にやったな。

妖の体は左半身が酷く抉れており、中々にグロい。

ああ…少しね。

じっとしてろよ。

巻物に書いてある通りに印を組み、術を唱えた。

ゼェ、ゼェ…これ、中々に体力を使うな…

も、もう大丈夫だよ!ありがとう。あとは自分で治せるよ。

ああ、そうしてくれ。

…も、もう戻っていいかな?

む、戻ってしまうのか?

だ、だってこの姿恥ずかしいし…

オレはそっちの方が好きだがなぁ

!!

…〜〜〜

(オレが好きならこの姿でいたいが、やっぱり恥ずかしいからどうしよう……みたいな顔してるな。)

…本当にこっちの方が好きなのかい?

ああ。

…そう。

(結局その姿でいるのか…)

…茶でも出そう。

あっ、それなら僕が…

一応怪我人なんだ。そこで休んでろ。

あ…うん。

("僕"…さっき"僕"って言ったか!?)

(クソ…妖のくせに…)

(……ちょっと、本当にちょっとだけ可愛い…っ)

待たせてすまな…

!?

ぐちゃぐちゃになった洗濯物が床に散らばっていた。

な、な……っ?!?!

あっ…ご、ごめんなさいっ!

いやいや、どうした?!

これ、外に干されてて…雨の匂いがしたから、取り込んで畳もうと…

で、でも僕、衣服を畳んだこと無くて…

ぐ、ぐちゃぐちゃにしちゃった…

ごめんなさい…嫌いになったかい…?

(……クソ、)

(ちょっと!!ちょっとだけ可愛い…っ)

はぁーーー…

あっ…ご、ごめ…

いい。お前なりの善意なんだろう。

ありがとう。気持ちだけで十分だ。

僕のこと、嫌いじゃない?

ああ。

じゃあ好き?

うーん…

ふふ、冗談さ。

お茶、ありがとう。

あ、ああ。これはオレが畳んでおくからそれ飲んで待ってろ。

うん。

神主くん、お名前なんて言うんだい?

ん?あぁ、天馬司だ。

えっと…字はこう書く。

天馬司……ふふ、いいお名前だねぇ

ねぇ、司くんって呼んでもいいかな?

好きにしてくれ。

ふふっ、司くん♡

(嬉しそうにしおって…)

…お前の名前は?

僕かい?

……ふふっ

類って言うんだ。字はこう書くよ。

ほぅ…類か。

いいな。綺麗な響きで。

ふふ、だろう?僕も気に入ってるんだ。

ふぅん…

翌日

Zzz...

……パチ

(ふわ……今何時だ?)

(む、類がいない……)

(……しかも、何か焦げ臭いような、)

ま、まさか…っ

類っ!!!

あっ、おはよう司くん♪

!?

机には酷く焦げた食材が並べられていた。

る、類……?こ、これは一体…

えへへ…泊めてもらったお礼に、朝餉を作ってみたんだ。

あ、朝餉…??!

人間の味覚が分からないから、美味しいかどうかは分からないんだけど…

(これは…少なくとも食欲はそそらん見た目だが…)

類の手をよく見てみると、たくさんの傷口がある。

…戴こう。

う、うん!

ど、どう…?

口に入れた妖の手料理は、思った通り苦かったが、ほんの少し甘かった。

正直に言うと、美味くは無いな。

う"っ…や、やっぱり…

うむ。

…美味しくないのに、怒らないんだね。

む?怒るだと?

食材を無駄にするな、とか…こんな不味いもの食わすな、とか…

……言われたことがあるのか?

言っておくが、オレはそんな事じゃ怒らん

類なりに頑張ってくれたんだろう?むしろ嬉しいな。

司くん…

うぅ……本当にごめんね。君はこんなに優しいのに…僕は君に、美味しいご飯1つすらも作ってあげられないよ…

だから気にせんでいいと…

…いや、教えてやろうか?

え?

オレも料理くらい出来るし、教えてやってもいいぞ。

ほ、本当かい?教えて欲しい!

ああ。とりあえず、味噌汁と卵焼きくらいから教えてやろう。

まず、卵を割るんだ。

こうやって、角で軽く叩いてヒビを入れ、指を上手く使って割る。

えっと、角で軽く…

グシャッ

あっ!

……まずは力加減だな。

ご、ごめん…!また無駄にしちゃった、

構わん。これもまだ使えるからな。

優しく、潰さないように意識してもう1回やってみろ。

わ、分かった。

…あっ、割れた!出来たよ司くん!

おぉ!やるじゃないか!

(しかし…卵を割るだけで1時間要するとは…)

(先は長そうだな……)

ここからどうするんだい?

とりあえず、まずは適当に調味料を入れる。……うむ、このくらいでいいだろう。

そうしたら、こうやって箸を回して卵をとくんだ。

これも、力加減に気を付けるんだぞ。

わ、分かった!

こうかい?

お、いいじゃないか。

ふふ、段々力加減が分かってきた気がするよ。

この次はどうするんだい?

一番の難関だぞ。卵焼き器に卵を注いで、焼いてから巻くんだ。

お、おぉ…!難しそうだね、

まず手本を見せるから、よく見ておけよ。

うん!

あっ、巻けた!!司くん、これどう?

おぉ、今までで一番綺麗じゃないか!

(通算53回目……が、頑張ったな、オレ…)

ふふっ、これで完成かい?

あぁ…あとは、食べやすい大きさに切って完成だな。

食べやすい…って、どのくらいかな?

む…そうだな。このくらいでいいんじゃないか?

ふふっ、分かったよ。このくらいで切ればいいんだね。

って、おい待て。包丁の持ち方おかしくないか?

えっ、おかしいの?

下からじゃなくて、上から握るんだ。

えっと、こう?

ああ。お前、そんな怖い持ち方で朝餉作ってたのか…

う…包丁の持ち方なんて知らなくて…

でも、教えてもらったからもう出来るよ!

(包丁の持ち方も知らない、衣服も畳めない…という事は、今まであまり人間と関わったことがないのか?)

(てっきり、男を虜にさせて喰らっているものだと思っていたが…)

司くん、出来たよ!

ああ、いいじゃないか。

ふふ、ちょっと食べてみて。

うむ。

…お、美味しい?

ん、だいぶ美味いぞ!頑張ったな。

本当?よ、良かった〜…!!

あっ、でもまた司くんに手伝ってもらっちゃった…

む、ダメなのか?

お礼がしたいのに…

別に要らんのだが…

僕に出来ること…出来ること…

あっ、嫌いな人間や憎い相手はいるかい?祟るよ!

やめろ!?

えっ、ダメ…?じ、じゃあ、身体で…

もっとやめろ!!

う、うぅ…でも、僕に出来るのはそのくらいしか…

大人しくしていてくれ…それが一番嬉しい。

そんな事でいいのかい?

ああ。

分かったよ。なら、大人しくしてるね。

翌日

夜明け前

ガタンッ

む…?

あっ、ごめん。起こしちゃったかい?

どこへ行くんだ?

出ていこうと思って。怪我も治ったし。

…行くのか?

え?だ、だって迷惑だろう?

別に……ここにはオレしかいないし、

大人しくしてるなら…ここに居ても構わんぞ。

え…ほ、本当に?寝惚けてるだけだよね?

発言には責任を持たなきゃダメだよ〜…

…お前、どうせ出て行っても毎日ここに来るだろ?

え?まぁ…君が許してくれるならね。

なら、住んでも住まなくても同じじゃないか

え?す、住む…?

オレは別に構わんぞ…

Zzz……

え?!ちょ、寝るの?!

うぅん……起きたら追い出されるかもしれないけど…

起きるまでは…もう少しだけ、ここに居ようかな。

ツヅク

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類くんかわいい、、、

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