桃赤
はぁ…っ、はぁ…っ、 夏が終わり秋にさし変わろうと葉が色づき始める 秋の涼しさは消え、まるで真冬のような寒さに苦しめられている時俺は今久しぶりに全力で走っている 理由は授業が終わった直後の通知 いつもは学校を出るくらいでくる通知に少し驚きながらも開いてみるとそれは兄からで授業が終わるのを見計らい送ったのだろう その内容は “さとみくんが早退して来た” と言う内容だった 思わずガタッと音を立てて立ち上がってしまい周囲のクラスメイトがこちらを見つめる 慌てて謝り近くにいた話したことのある子に掃除を頼み急いでカバンを持ち教室を出て全力で走った 途中で先生に注意をされ謝ったがやはり急いでしまうもので歩きとは言えない形で足を進めた 玄関で靴に履き替え、また全力で走る その速さは多分過去一の速さだろう 元陸上部で活躍した我ながら自慢の脚をこれ以上ないくらい動かした スマホを取り出して再びトークの内容を読み返す 早退…… 記憶を巻き戻しながらよく考えてみる 朝のさとみはいつも通りだった …いや、いつも通りじゃないな……いつもは2、3回起こせば起きてくるのに今日は時間がかかった それに何故か時計をチラチラと気にしながらグダグダのんびりして時間稼ぎのような仕草を何度もしていた ……………んー、、 今までの記憶が正しいとさとみは休みたい時はその行動をすることがある でも遅刻はあるが早退は一度もなかった 何があったのだろうか… そんなことを考えていればもう家が目の前で時間を確認すると学校を出て15分しか経っていなかった 歩けば30分はかかるのに… 出来るだけ早くと思い家の塀を飛び越えドアを開けた 「はぁ…っ、はぁ…っ、さと……み、は…?」 荒れた息を整えながらリビングに行きそう言うと兄のなーくんは驚いた顔をしていた 「…ぇ、は、早くない…?えっとさとみくんは部屋にいるよ」 「はぁ…っ、はぁ…そっか、わかった」 「もう息整ったの?!」 「兄弟の為だもん」 俺はなーくんの言葉にさとみの部屋に向かおうとしていた身体を振り向かせてなーくんの目を見ていった なーくんは眉を下げ、少し呆れた表情をしながらも笑っていた そんななーくんを背に俺はさとみの部屋へ向かった 階段を登り自分の部屋に鞄を置いて最近1人部屋になり、隣のさとみの部屋に足を進めた 久しぶりに急に走ったからか少し震えてる足に力を入れてドアをノックした 返事はなくて静かにドアを開けてみると新しいベッドの上に大きな塊があった 近づくと淡い桃色の髪が少し空いた窓からくる風で揺れていた 普段のカッコいいイケメンな顔ではなく可愛らしい顔ですやすや眠る弟に少しため息が出た ベッドに腰掛け頰を手の甲で軽く撫でると少し熱いのが感じた 目の下には薄らと隈が出来ている 「ゲームのやりすぎだバカ」 と小さく呟きそこらに散らばっている制服などを綺麗にハンガーへかけたり、ゲームを元の位置に戻したりとさとみの部屋を片付ける いっそ制限かけるか… なんて思ったりもするがそれはしない 誰だって息継ぎはしたいだろう 机の上に広がる勉強道具を眺めながらそう思った 近づいてノートを確認してみれば意外と綺麗な字で教科書の内容を自分なりに分かりやすくまとめて色ペンなども使いながら授業中の先生が言ったメモや自分が思ったことなどがびっしりと書かれていた 少し視界をずらせばワークがあって開いてみればそこにもぎっしりと書かれていた まずは自分で解き、間違った所に印をつけ、その解説などを見てメモを取りつつ赤ペンで間違ったところを直している ちゃんとやってるんだ… これは俺が教えた勉強法だ 俺は勉強が得意でさとみは苦手だった 中学時代によくさとみに勉強を教えていたが俺が受験生になってしまいあまり教える機会がなかった その時俺はさとみが何故勉強が出来ないのか考え、教えた方法がこれだ その後はさとみはどんどん成績が上がっていって俺の手も要らなくなった程に頭が良くなった その事に少し寂しさを感じたのを今でも覚えている それは今でも同じだから 棚から少しはみ出しているテストであろうプリント 端っこには100と書かれた赤い数字 ……………………勉強に嫉妬してるとか……やば… キモすぎ……… 「……兄、ちゃ…?」 「…っ、」 「おはようさとみ」 後ろから聞こえる声に驚き慌てて本を閉じ、さとみの方へ向く 近づいて額に手を当てれば気持ちよさそうに擦り寄ってきて可愛いなんて思ったりしたが口には出さない 出したら身に危険を感じるから 「熱あるね。何で無理なんてしたの」 「……だって兄ちゃんと一緒がいいから、」 「はぁ、お前なぁ…」 「嫌いになった…?」 熱がある所為か目をうるうるさせ俺を上目遣いで見つめる 「……なってないよ」 「間があるっ!」 「はいはい、ゆっくり休もうねぇ〜」 面倒事は嫌いな方で抱きついて来た子の頭を撫でて宥めると規則正しい寝息が聞こえてきた ベッドにゆっくり寝かせて離れようとするがガッチリと俺の袖を掴んでいた …………此奴……はぁ、まぁ…病人だし……兄弟だし………恋人……だ、し 掴んでる手をゆっくり自分の手に移動させ隣に寝転がる するとちょうど抱き枕を見つけたように抱きしめて来た ドクン…ドクン…と一定のリズムで刻まれた心音 さとみの元の体温と熱の暖かさが加わり俺の瞼は徐々に重くなっていき俺は意識を手放した その後見事に風邪をひいた俺はさとみ達に看病された
~ end ~
コメント
10件
ブクマ失礼します!
ブクマ失礼です🐐
ごめんなさい!!! 誤ブクマしちゃいました😢😢