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第1話 - あ

2023年09月15日

#恋愛

結城　真矢

シオン

おい、俺より先に食事をとるなと言っただろう！

シオン

なんで俺の分がレンチンなんだよ。

ハルヒ

ごめんなさい、あなた。

ハルヒ

今日は夜勤だったから、どうしても18時前に家を出なくちゃいけなくて。

ハルヒ

テーブルの上に用意しておいたんだけど…。

シオン

今日が夜勤？聞いてないぞ。

ハルヒ

予定表に書いておいたわよ。

ハルヒ

それに昨日も伝えておいたはずだけど…。

シオン

言い訳するなよ。

シオン

俺が許可したかどうか、何度もお伺いを立てるのが妻ってものだろ！

ハルヒ

そんな。

ハルヒ

あなたも「わかったって言ってたから、」

ハルヒ

大丈夫だと思っていたのに…。

シオン

お前はすぐ、そうやって俺のせいにする！

ハルヒ

そんなつもりはないわ。

シオン

言い訳するのも良くないぞ。

シオン

明日、帰ったら説教だな。

シオン

いいか。俺に怒られるのが嫌だからって

シオン

寄り道なんかしたら許さないぞ。

ハルヒ

はい、分かりました…。

～2日後～

シオン

ハルヒ、今日の弁当はなんだ。

シオン

昨日の夕飯の残り物が入ってたじゃないか！

ハルヒ

だって、から揚げが沢山余っていたから。

ハルヒ

あなたもから揚げが好きだから、

ハルヒ

喜んでくれるかと思って…。

シオン

お前、手抜きするのもいい加減にしろよ。

シオン

から揚げを弁当に入れるなら、朝作れ。

シオン

古いモノを食わされて、俺が食あたりになったらどうするんだよ！

ハルヒ

ごめんなさい、食あたりの事まで考えなかったわ。

ハルヒ

シオンの職場には冷蔵庫と電子レンジがあるって聞いたから

ハルヒ

そんなに心配はいらないと思ってたわ。

シオン

お前はアタマが悪いんだよ。

シオン

温めなおしても、食中毒になるときはあるんだ！

シオン

こんどからは、その日の朝に作った物しか弁当には入れるな！

ハルヒ

え？私も働いてるのに。

ハルヒ

朝からそんな、お弁当に時間はかけられないよ。

シオン

働いてても、家族全員分の弁当を作る主婦なんて、

シオン

当たり前に、そこら中にいるぞ？

シオン

おまえが自分に甘いだけだ。

ハルヒ

ごめんなさい…。

シオン

いいか？また手抜きしたら許さないぞ。

シオン

俺は、冷蔵庫の中もちゃんとチェックしているんだからな。

ハルヒ

そう…。

シオン

それから、もちろん冷凍食品も使うのは禁止だ。

シオン

冷凍庫に食材を詰め込まれたら、

シオン

俺が好きなアイスクリームが入れられなくなるからな！

シオン

わかったな？

ハルヒ

はい…。

～半年後～

シオン

ハルヒ、昨日、伯父さんから電話があったんだけどさ。

シオン

「お前たちは、まだ子供が出来ないのか？だって。」

シオン

お前、なんで妊娠しないの？

シオン

何か問題があるんじゃないのか？

ハルヒ

シオン、何を言ってるの。

ハルヒ

まだ結婚して1年経ってないのよ。

ハルヒ

それにあなたも帰りが遅いから、夜のほうも

ハルヒ

あんまりしてないでしょ。

ハルヒ

月1～2回程度の頻度で、そう簡単に子供が出来るワケないでしょ。

シオン

それはお前の努力不足が原因だ。

ハルヒ

え？なんで。

シオン

結婚してからダラシなくなったから、抱く気になれないって意味だよ！

ハルヒ

だらしなくなったって…。

ハルヒ

別に太ってなんかいないし、家でもほとんどゆっくりしないで

ハルヒ

ずっと家事をやってるわよ？

ハルヒ

シオンが、家をピカピカにしないとすぐ怒るから。

シオン

そういう事じゃない！

シオン

見た目が衰えたってことだよ。

シオン

家じゃ化粧もしないし、髪もいつも一本結び！

シオン

服もヨレヨレの室内着だし、そんな女のどこに魅力があるっていうんだよ。

ハルヒ

そりゃ、家にいるんだから、そんなモノでしょう。

ハルヒ

そういう姿を見たくないなら、一緒に住まなきゃ良いだけの話でしょう。

シオン

お前、何をいってんの。

シオン

自分が、俺に結婚してもらった身だという事を忘れたか？

ハルヒ

結婚してもらったってどういう事？

シオン

察しが悪いヤツだな！

シオン

〇カで冴えない、ただの看護師のお前と

シオン

大卒でエリートの俺が結婚してやったんだぞ！

シオン

旦那様である俺に、もっと忠誠を尽くせって事。

シオン

結婚してやったんだから、お前はもっと見た目も磨けよ。

シオン

お前は一生、俺のドレイなんだからな！

ハルヒ

なにをいってるの、シオン。

ハルヒ

私がアナタのドレイだなんて、本気で言ってるの？

シオン

本気だよ。それ以外に、お前を妻にしたメリットが何もないからな。

シオン

俺に抱いて欲しければ、家でも化粧してスカートもはけよ。

シオン

そうすれば子づくりに協力してやるさ。

ハルヒ

協力って…。私は別に…。

シオン

つべこべ言うな！

シオン

俺が、外に女を作っても良いのか？

ハルヒ

それは困るわ。

ハルヒ

外で女を作ったら、私を捨てる気でしょう？

シオン

ああ、その通りだよ。

シオン

子供もデキない、見た目もイマイチな妻なんか粗大ごみでしかないよな。

ハルヒ

ひどい言い方ね…。

ハルヒ

シオン、結婚する前はあんなに優しかったのに。

ハルヒ

どうして、そんな嫌な言い方ばかりするの？

シオン

それは、お前が妻としての努力が出来てないからだよ。

シオン

俺の妻でいたいのなら、今のレベルで満足してないでもっと頑張れよ。

ハルヒ

今のレベルって何。

ハルヒ

私は十分に努力してるつもりなのに。。

シオン

俺から言わせれば、お前はまだまだだよ。

シオン

俺の母さんは、仕事もしていたけど、

シオン

家はいつも片付いていたし、料理も上手だった。

シオン

おまけに見た目もお前と違って、ずっと美しかったよ。

ハルヒ

そう。私とちがって完璧な女性だった、と言いたいのね。

シオン

その通り。

シオン

お前も、おれの母さんを見習えば、すこしはマシになるぞ。

ハルヒ

分かったわ。

ハルヒ

参考にさせていただきます。

シオン

わかったなら、いいよ。

シオン

こんどからは気を付けろよ。

～半年後～

ルミコ

ハルヒさん、こんにちは。

ルミコ

お元気でやってるかしら。

ハルヒ

お義母さま！お久しぶりです。

ハルヒ

ええ、元気でやっています。

ルミコ

良かったわ。

ルミコ

あなた、シオンの事で何か困ってない？

ハルヒ

え、どうしてですか。

ルミコ

あの子、ワガママでしょう。

ルミコ

子供の頃から、気に入らない事があるとすぐキレるから

ルミコ

もしや貴女にもヒドイ態度を取っているんじゃないかと心配でね…

ハルヒ

いえ、そんなコトは…。

ハルヒ

ただ、私が色々と未熟なもので、よく叱られます…。

ルミコ

シオンは言葉がキツイから。

ルミコ

私も、あの子が思春期の頃は態度が酷くてよくケンカになってたわ。

ハルヒ

お義母さまが？そうなんですか…。

ルミコ

ウチは主人がずっと単身赴任だったから、

ルミコ

感情をぶつける相手が私しかいなかったから、

ルミコ

家でストレス解消をしていたんでしょうけどね。

ルミコ

でも、私だってガマン出来なかったんだから、

ルミコ

お嫁さんのあなたなら、なおさら嫌でしょう？

ハルヒ

はい、実は私もちょっと最近は怒られ過ぎてて

ハルヒ

家事に手が付けられなくなってるんです…。

ルミコ

なんですって。

ルミコ

そんな、困ってるなら早くに言ってくれたらよかったのに…。

ハルヒ

ごめんなさい、なかなかお義母さまにも言いづらくて。

ハルヒ

しかも、子供が出来ない事でもシオンさんに責められてて。

ルミコ

子供が出来ないのは、ハルヒさんのせいじゃないわ。

ルミコ

ストレスとかで妊娠しづらくなることもあるし、

ルミコ

なにより、女性の心身が万全じゃなかったら、妊娠なんて負担にしかならないわ。

ハルヒ

ありがとうございます。そういえば、

ハルヒ

お義母さまも昔、看護師さんだったんですよね。

ハルヒ

私は、体調が良くないので今は休職してるんですが…。

ルミコ

まあ、そうだったの。

ルミコ

シオンは、なんと言ってるの？

ハルヒ

その程度のストレスで休むなんて、甘いって。

ハルヒ

仕事が辛くて休んでいるんじゃなくて、夫婦生活が辛いから

ハルヒ

何も出来なくなっているんだっていても、理解してもらえません。

ルミコ

それは良くないわ。

ルミコ

あのね、ハルヒさん。落ち着いてね。

ハルヒ

はい。

ルミコ

あなた、しばらくご実家に帰ったほうがいいわ。

ルミコ

シオンと一緒にいたら、あなたがストレスで壊れてしまう。

ハルヒ

帰りたいのは山々なんですが。

ハルヒ

実はシオンさん、先月末からずっと家に帰ってきていないんです。

ルミコ

え？

ハルヒ

それに家に無言電話がかかってきたり、

ハルヒ

家でする前も、上着のポケットから避妊具が出てきたりして

ハルヒ

どうやら女性がいるっぽいんです。

ルミコ

なんですって。

ルミコ

それでハルヒさんはずっとガマンを…。

ハルヒ

誰にも言えませんでした。

ハルヒ

実家の両親に話したら、多分帰って来いって言われるでしょうけど

ハルヒ

そのまま離婚する事になりそうで。

ルミコ

泣き寝入りはよくないわ。

ルミコ

私に考えがあるの。

ルミコ

ハルヒさんは、実家に帰って心を休めた方がいいわ。

ハルヒ

お義母さま、私みたいなダメな嫁の為に、そんな気づかって下さって

ハルヒ

とても心強いです。

ルミコ

時間が少しかかるけど、シオンの浮気もモラハラも、

ルミコ

しっかり解決しないとね。

ハルヒ

はい。

ルミコ

それから、ハルヒさん。

ルミコ

あなたとシオンのやりとりのメールは、すべて画像コピーして

ルミコ

保存しておくのよ。モラハラの立派な証拠になるから。

ハルヒ

そうなんですか？

ハルヒ

なんか、見返すとまたドキドキするから、

ハルヒ

削除しようかと迷っていたんですけど…。

ルミコ

削除しちゃだめよ。大事な証拠だから。

ハルヒ

は、はい。

ルミコ

とにかく、ご実家で少しずつ、いろんな事を準備しておくことよ。

ルミコ

シオンの事は、私にまかせてね。

ハルヒ

ありがとうございます！

～3週間後～

シオン

おいハルヒ！久しぶりに帰ったぞ。

シオン

なのに、お前が家にいないのはどういう事だ？

シオン

まさか男でも作って家出した？

シオン

お前に限って、浮気なんかできないよなぁ。

シオン

そんなしなびた女に言い寄る男なんて、いる訳がないもんな。

ハルヒ

やっと私が家に居ない事に気付いたのね。

ハルヒ

あなたこそ、どこにいってたのかしら？

シオン

俺がどこで寝泊まりしようが勝手だろう。

シオン

金だって自分の分を使ってるんだから。

ハルヒ

生活費もいれてくれなかったくせに、よくいうわね。

ハルヒ

結婚してから、生活費も家賃も、全部私が出していたわよね。

シオン

ああ、そうだよ。

シオン

お前なんかに使う金がもったいないからな！

ハルヒ

そう。相変わらずね…私、気付いちゃったのよ。

シオン

は？何を？

ハルヒ

あなたなんか、もう要らないって事よ！

シオン

お前、なに〇カな事いってんの？

シオン

ハルヒは俺がいないと何も出来ない女だろ。

ハルヒ

ううん。全然。

ハルヒ

むしろ、あなたが居ない方が快適だって事に気付いたの

ハルヒ

それにシオン、あなた浮気してるでしょ。

シオン

へ？

シオン

いきなり何を言うかと思えば…。

ハルヒ

ごまかそうとしてもムダよ。

ハルヒ

ある人に協力をお願いして、証拠を集めたの。

シオン

え、ある人って？

ハルヒ

お義母さまよ！

シオン

母さんが？うそだろう、お前に協力するなんて！

ハルヒ

嘘じゃないわ。お義母さまは私の事を心配してくれて、

ハルヒ

私の代わりに探偵に調査を依頼してくれたり

ハルヒ

家の片づけもしてくれたのよ。

シオン

そ、そんなバカな。母さんが俺を裏切るなんて。

ハルヒ

裏切るもなにもないわ。あなた、私を今まで散々バカにしてきたでしょう。

ハルヒ

お義母さまは、正しい方の味方をしてくれただけよ。

シオン

で、でも証拠があるなんて、ウソだろう？

ハルヒ

いいえ。写真もきちんと撮られたものがあるわ。

ハルヒ

うれしそうに腕を組んでホテルに行ってる写真とか、

ハルヒ

〇スをしてる写真もあるわよ。

シオン

そ、そんな。

ハルヒ

相手の女性の住所と名前も分かってるの。

ハルヒ

あなたの職場の後輩のようね？

ハルヒ

この落とし前はきっちりつけさせてもらいますから。

シオン

まさか離婚するって事か？

ハルヒ

ただで離婚なんてしない。

ハルヒ

今まで黙っていたのは、あなたに地獄を見させるために

ハルヒ

準備をしていたからよ？

シオン

何をする気だ？

ハルヒ

さあ、それはこれからのお楽しみよ。

ハルヒ

浮気の事も、今までの事も絶対に許さないからね。

シオン

ハルヒ、待てよ。

シオン

お前は素直でカワイイ嫁だったよ。

シオン

なあ、生活費もあげるからやり直そう。

シオン

女とは別れるからさ。

シオン

頼むよ、ハルヒ…。

～後日談～

ハルヒ

シオンはその後、何だかんだとゴネて、離婚まで3カ月ほどかかりました。

ハルヒ

でも、シオンと直接話すのは嫌だったので

ハルヒ

すべて弁護士を通して交渉したのです。

ハルヒ

結果、女と元夫の両方に、慰謝料を払わせる事が出来ました。

ハルヒ

あの日、お義母さまに相談していなかったら、

ハルヒ

多分、いまも泣き寝入りしていたと思います。

ハルヒ

とても力になって下さったお義母さまには、とても感謝しています。

ハルヒ

義理の関係はもう切れてしまいましたが、

ハルヒ

時々は近況報告をしたり、いまも良い関係が続いています。

ハルヒ

次にご縁があった時は、相手の事を慎重に見極めて、

ハルヒ

本当の意味で誠実な人と一緒になりたいです。

ハルヒ

皆さまも、外面がいいだけの異性には気を付けましょうね！

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結城　真矢

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