僕は、狩りを終えた後、いつもの見慣れた杉林を歩いていた。ぼーっとしながら。
僕
あれ?
僕は一瞬、立ちすくんだ。
そこは、いつもの見慣れた杉林ではなく、広い野原だった。
そして、綺麗な桔梗の花畑が広がっていた。
僕
こんなところ、知らないぞ、
僕
すぐ引き返すんだ、
だが、来た道もわからず、僕は困っていた。
すると、一匹の白い狐が、僕の前を横切っていった。
僕
あの狐を追っていって、巣を見つけてやろう。
僕
そしたら、親狐が仕留められるぞ、
だが、追っても追っても、狐に追いつけはしない。
僕
あの狐早いな、
僕は、杉林からどんどん離れて行くのをよそに、どんどん走った。
狐を見失い、はっと顔を上げると、ひとつの小屋があった。
横の看板には、「染め物 桔梗屋」と書かれていた。
僕
「染め物 桔梗屋」?
僕
ははぁ、さっきの狐が化けたんだ、
不思議な狐
いらっしゃいまし、
僕
わっ、びっくりした、
ここは一旦、騙されたふりをしてやろう、と僕は思った。
僕
こんにちは、
不思議な狐
さぁさぁお上がり、今日はどんな御用で?
僕
少し、休ませてくれないかな?
不思議な狐
ええどうぞ!
不思議な狐
それより、何かお染めになりたい物はございませんか?
僕
いや、特に、
不思議な狐
この帽子とかどうでしょう?
不思議な狐
それとも、コートや、カバンだって、なんでも素敵な桔梗色に染まりますよ!
僕
いえ、
あまりにも積極的に話しかけてくるもんだから、ハンカチでも染めてもらおうと思った時、
不思議な狐
では、指をお染めになるのはどうでしょう?
僕
指だって?とんでもない!
不思議な狐
でも、指を染めることは、いいことですよ。私も、指を染めているんです。
そう言って、狐は、自分の両手の親指と人差し指をくっつけて、菱形の窓を作って見せた。
不思議な狐
ちょっと、中をご覧になってください。
僕
ええ、
僕は、あまり気が乗らなかった、
だが、渋々、窓の中を見た僕は、言葉を失った。
続きはまた次回!