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悠佑
悠佑
いるま
暇72
暇72
うめき声のする方へと視線を動かす
そこには
意識のないまま 床に転がって悶え苦しむいるまと
そんな彼を冷たく見下ろす
いふさんの姿があった
彼の左手には
鈍く光る蒼黒色の液体の入ったガラス瓶が 握られている
あれは………
毒か!?
悠佑
悠佑
抑揚のない声色で淡々と言い放つ悠佑さんを
俺は睨んだ
この人正気じゃねえ
悠佑
悠佑
悠佑
彼の口角が上がっていく
サイコパスめ
悠佑
少し間を置いて
今日一声を張り上げた彼は
信じられない言葉を口にした
悠佑
は?
何いってんの…?
運が良い?
死にかけてるのに?
悠佑
右手を空高く掲げ
悠佑
悠佑
上機嫌に尋ねる
彼の手には
いふさんが持っていた物と同じ類いの ガラス瓶があった
ただし
中の液体の色が違う
キラキラと輝く蘭玉色だ
暇72
悠佑
返答をした記憶はなかったのだが
彼はひとりでに正解発表を始めた
悠佑
悠佑
夢中でポーションの宣伝をする彼を横目に
俺は遠隔でいるまに治癒魔法をかける
気付かれないようひっそりと
だが
バチッ!!
?!
彼の身体は俺の魔法を受け付けなかった
弾かれた?
待て、この感覚…何処かで
そうだ!
魔法障壁だ
………ああ
なるほど
いるまの傍らに立ついふさんから
微かな魔力の動きを探知した俺は
唐突に理解した
くっっそあの青髪…
彼は非常に厄介なことをしてくれたようだ
彼は俺からの干渉を防ぐため
いるまの体を覆うように 魔法障壁を張っていたのである
読まれてたのかよ
これじゃ
いるまを助けらんねーじゃん
悠佑
悠佑
暇72
こっちにもバレてるし
悠佑
悠佑
悠佑
悠佑
悠佑
悠佑
暇72
「どうする?」って……
この人は明らかに
俺に「降参しろ」と言っている
正直
彼の言いなりになるのは癪(しゃく)だ
癪だ、が…
治癒魔法が効かないんじゃ
もう
選択肢は一つしかない
俺は今一度彼を睨み
暇72
ポツリとそう呟いて
腕を下ろす
悠佑さんは再びにっこりと笑い
俺に首輪をつけた
途端に
魔力が吸われていく感覚に襲われる
吸収魔法の付与が付いてんのか
これじゃ
まともな魔法は放てない
彼らは分かっているのだろう
俺の魔力総量が常人とは桁違いであり
俺が自分たちにとって
脅威となりうる存在だということを
悠佑
俺に首輪をつけ終わった彼は
俺の頭を撫でる
以前から彼は
俺たちの頭をよく撫でてくれていた
そのたびにちょっと嬉しくなっていたのだが
今
その嬉しさは
もはや何処にもなかった__
[ ]
いるま
暇72
唐突な呼称に
俺は体を跳ねさせる
椅子の上で胡座(あぐら)をかいたまま 顔を上げると
長髪のお兄さんが見おろしていた
ここで
「おすおすーどうも暇なつですー」
てな感じで
気の利いた返しが出来たら良かったのだが
人見知りの俺はどうしていいか分からず
唯固まるだけだった
目線をそらさなかっただけでも褒めてほしい
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何の前触れもなく急接近するお兄さんに
本日二度目の一驚を喫した俺は
思わず
読んでいた書物で顔を隠した
そんな俺の様子に対してだろうか
控えめな笑い声が耳を通過する
書物をほんの少しだけずらして
覗き見てみると
俺と目の高さを合わせ…
いや
より低くするために
汚れた床に座るお兄さんの姿が 目に入った
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申し訳なさそうに笑う彼
その物腰柔らかな雰囲気に
こちらが逆に申し訳なく感じてくる
いつまでも自己表現しないのは良くない
せめて態度で示そうと
俺は小さく首を振った
彼は安心したように息を吐き
俺の顔を覗き込んで
[ ]
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悠佑
のんびりとした口調で自己紹介した
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悠佑
悠佑
悠佑
悠佑
悠佑
そう言って彼は
ポケットに簡単に入りそうな小さなお菓子の袋を 手渡してきた
似てる
面倒見が良さそうなところ
頼りになりそうなところ
何より
この暖かく包みこんでくれそうな笑い方が
“あの人”にそっくりだった
あまりにも懐かしいその雰囲気に
俺は___
暇72
堪(こら)えていた何かが決壊した
悠佑
いるま
慌てふためくゆうすけさん
少し遠くで 俺たちのやり取りを見ていたいるまが
駆け寄ってくる
悠佑
悠佑
お菓子嫌いなくらいで泣かねーよ
子供扱いすんな
いるま
分かんない
てか、え?俺泣いてんの?
自分が涙を流しているという現実に
思考が追いついていない
いるま
俺の背をさすり
落ち着かせようとしてくれてるいるまの手が 優しい
……なにこれ、塩っぱ
とめどなく流れ続ける涙が口に入ったことで
俺はようやく
自分が泣いていることを自覚した
俺、こんなに涙腺緩かったっけ
暇72
自分の醜い嗚咽を皮切りに
俺は理性を飛ばす
無性に寂しくなった
何かに縋りたくて仕方がなかった
なんでもいい
何か、何かないか
腕を伸ばし、辺りを探る
____!
あった
正面に温かな“何か”を発見した俺は
一所懸命しがみついた
勢い余って椅子から転落するが そんなことはどうでもいい
温かい“何か”は俺を受け止め
俺の背中にそっと腕を回して
トン…トン…トン…
まるで赤ん坊を寝かしつけるように
一定のリズムを刻み始める
暇72
俺はその“何か”に顔をうずめ
声を大にして泣いた
多分一年分くらい泣いた
「おーおー、泣け泣け」
「いくらでも泣いたらええ」
そんな声が
聞こえたような気がした___