テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

あったかい暖房の効いた部屋。

美味しいご飯と、 ふわふわのおふとん。

そして…

すみれ

レオ、おいで。

大好きな僕のご主人様。

レオ

にゃー。

足に擦り寄る僕をご主人様のすみれは優しく抱き上げ、こたつの中に入る。

すみれ

もうすっかり冬だね〜。

レオ

にゃ〜。

こたつとご主人様のぬくもりに 僕はうっとりと目を細めた。

すみれ

よしよし。

ご主人様は僕のことを 何でも分かってる。

こたつに入ったらまずは 右頬をなでなで、

そのあとは左頬。

顎の下は優しくゆっくり撫でる。

すみれ

かわいい〜、かわいいなぁ、レオは。

僕がゴロゴロと 喉を鳴らしたのを見て、 ご主人様は再び右頬をもふもふした。

あぁ、うれしい。

うれしいよ。ご主人様。

優しいご主人に甘やかされる 冬は格別だ。

ずっとこの時が続いたらいいのに…。

今から一年前、

僕はご主人様と出会った。

激しい雨と雷が鳴る夜に

びしょ濡れでお腹が ぺこぺこだった僕は

ご主人様に体を拭いてもらったり、 お風呂に入れてもらったりして

元気になると 僕のことを「レオ」と 呼ぶようになった。

それからずっと僕と ご主人様は一緒だ。

ご主人様が泣く姿も、喜ぶ姿も

ずっと隣で見てきた。

ご主人様の笑った顔が大好きだ。

スペシャルなご飯よりも、 新しいおふとんよりも

ご主人様の胸の中にいることが 1番幸せだ。

僕とご主人様はずっと一緒だ。

誰にも、邪魔させない。

すみれ

すみれ

いや、それは違います。

レオ

?…

ご主人様??

すみれ

私は事実をお話ししています。

すみれ

私は課長に第三会議室で服を脱げと脅された後、無理やり襲われそうになったんです。

すみれ

私は何一つ誘うようなことをしてません。

すみれ

はい、

すみれ

はい…お疲れ様でした。

ピッ!

すみれ

はぁ…最悪。

レオ

にゃ。

どうしたのご主人様?

すみれ

あ、レオ。

すみれ

ごめんね、起こしちゃったね。

すみれ

すみれ

会社の人と電話してただけだよ。

会社の人…?

すみれ

でも大丈夫、言うことは言ったから。

すみれ

明日には課長もちゃんと謝ってくれるよ。

レオ

…。

ご主人様…。

本当に平気なの?

僕、なんだか

嫌な予感がするよ…。

数日後

すみれ

ただいま…。

レオ

にゃにゃっ。

おかえり!ご主人様!

今日もお疲れ…えっ!

レオ

にゃ!

ご主人様、どうしたのその顔!

すみれ

…レオ。

すみれ

私、だめかもしれない。

すみれ

今日ね、会社のトイレでね。

すみれ

友達が、私の悪口を言ってたの。

すみれ

私が課長をたぶらかして、不倫しようと誘ったって!

すみれ

みんな私を見るたびに笑って、課長の奥様からはコーヒーかけられるし…。

すみれ

私は…課長に無理やり襲われそうになっただけなのに、私は被害者なのに!

すみれ

なんでみんな課長の味方をするの!?

すみれ

私、もうやだ!!会社行きたくない!

レオ

にゃー…。

ご主人様、かわいそう…。

そんな会社、辞めちゃいなよ。

すみれ

…でも、働かなきゃいけない。

すみれ

ここより配給のいい職場なかなかないし…レオのご飯もいつものカリカリしか用意できなくなるかもしれない。

レオ

にゃにゃっ。

僕のご飯のことなんて どうでもいいよ。

ご主人様が1番大事だよ。

ご主人様。

自分の心を壊さないで

僕と一緒に休んじゃおうよ、ね?

レオ

にゃー。

すみれ

うっ…。

すみれ

うわぁぁぁぁぁぁっ!!もう嫌ぁあっ!

レオ

にゃ、にゃ…。

レオ

レオ

…。

あぁ、

どうして僕はにゃーしか言えない猫に 生まれてしまったんだろう。

こんな声じゃ 僕の気持ちは届かないし、

こんな小さな手だと抱きしめて あげることもできない。

猫の僕には、ご主人様が泣く様子を 見ることしかできない。

ご主人様をこんなにも助けてあげたい気持ちでいっぱいなのに、

小さな僕には…何もできない。

それから、ご主人様は会社を休んだ。

辞めるかどうかはまだ 考えるみたいだけど、多分あの状態で 会社に戻ることは難しいだろう。

すみれ

…。

ご主人様は、暗くなった。

伸びた前髪も切らず、 ご飯も食べないで、

毎日嫌なことを思い出しては傷つき、

消えたい、と呟くようになった。

両親を事故で亡くして、 ひとりぼっちだったご主人様に とって会社は大切な場所だった。

ご主人様はあの会社で 6年も働いていて

入社の時から一緒だった友達をとても

大切に思っていた。

周りの人も始めは家族のように ご主人様を慕ってくれて

ご主人様もそれに応えようと 必死に仕事を覚えた。

一生懸命働き、友達を大切にして、

この僕をあったかく 包んでくれるご主人様が、

なんでこんなことに…。

レオ

にゃー…。

ねぇ、ご主人様…。

すみれ

死にたい。

レオ

!…

えっ…。

ご主人様!?だめ!

だめだよそんなこと言っちゃ!

死んじゃ嫌だよ!

レオ

にゃにゃにゃっ!にゃっ!

すみれ

…。

レオ

ご主人様は腫れた目で

僕の頭に手を伸ばした。

優しく撫でる手が、震えていた。

ごめんね、レオ…。

…。

それは、ある日の朝のことだった。

レオ

にゃにゃ!

ご主人様!おはよう!

ごめんね、 起きるの遅くなっちゃっ………

えっ。

すみれ

…。

ご主人様は、浮いていた。

レオ

にゃ…。

ご主人様…?

ご主人様?、どうしたの?

ねぇ、ご主人様!

レオ

にゃにゃ。

レオ

にゃ!

ご主人様!!!

嘘だ…。

嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!

死なないでって言ったのに。

僕に何も言わないで 死んじゃうなんて、

そんなの…悲しいよ。

僕、ご主人様と一緒ならどこでも 幸せだったんだよ?

なんで…なんで僕を置いて行ったの?

…僕が猫だから?頼れなかったから?

レナ

レオくん、新しいお部屋だよ…。

レナ

すみれちゃんはもういないけど…、これからよろしくね。

数日後、

僕はご主人様の従姉妹のレナに 引き取られることになった。

…ご主人様の遺書に そうあったらしい。

この子は幸せになってほしいって。

ごめんね、と 伝えておいてほしいって。

そんな言葉が沢山あったみたいで、

僕は本当にご主人様に 愛されていたんだな、と思った。

でも、

僕の幸せは、 ご主人様と一緒にいることだ!

だから、このままここで幸せに 暮らすなんて嫌だ!

レオ

にゃにゃ!

レナ

?…レオくん?どこ行くの?

ガラッ!

たったったっ (レオが外に飛び出す)

レナ

レオくん!?

会社の人

ねぇ田中さんのこと聞いた…?

会社の人

知ってる。自殺したんでしょ?

会社の人

怖いよね、なんか…周りからいじめられてたんだって。

会社の人

いや〜…

会社の人

でも、たかがいじめで自殺って…。

会社の人

素直にやめてくださいって言えば良かったのに。その辺新人社員は弱いよね〜。

会社の人

私が新人の頃はもっと酷かったんだから。

会社の人

あー…まぁね。

会社の人

周りの人も、軽いいじり?みたいな感じだったみたいだしね…アハハ。

会社の人

…。

会社の人

なぁ、

会社の人

やっぱり課長を誘ったっていう噂、デマだったんじゃね?

会社の人

お、お前もそう思う?

会社の人

だってお前、課長の顔見てみろよ…すっかり青ざめてるぞ。

課長

…。

会社の人

ほっ…ほんとだな。

会社の人

会社の人

どうしよう…俺、結構な人に広めちゃったんだけど。訴えられたりしねぇよな?

会社の人

マジかよ、最低じゃん。

…ここか。

会社の人

うぉっ!?

ブシャッ!

会社の人

い、痛てぇ!!

会社の人

な、何!?

会社の人

何の騒ぎ?

課長

どうしたお前ら。

会社の人

か、課長…猫です!

会社の人

猫に引っ掻かれました!

課長

ね、猫…?

レオ

…。

会社の人

え、可愛い〜。

会社の人

会社の人

じゃなくて、どっから入ってきたの!?

会社の人

はやく追い返しましょう!

会社の人

くっ…、いった…。

会社の人

うわ、すっごい血…大丈夫?

レオ

…。

レオ

ペロッ…(血を舐める)

レオ

レオ

レオ

その程度で痛いだと?ふざけるな。

レオ

ご主人様はもっと痛い思いをしたんだぞ。

課長

!?

会社の人

えっ!?

会社の人

はっ!?

会社の人

!?

会社の人

猫が、人に!

レオ

お前達が、僕とご主人様の幸せを奪ったんだ。

レオ

レオ

多くは言わない。

レオ

お前達には僕から復讐を受けてもらう。

レオ

おい皆!

に゛ゃー…。

フーッ!

…。

ヴヴヴ…。

レオ

今さっきの僕を見ただろう!

レオ

こいつらの血を舐めたら人間になれるぞ!

レオ

一斉に飛びかかれ!!

「「「シャーッ!」」」

「「「「「「うわぁぁぁ!!」」」」

 

速報です。

 

今日の昼頃、大手トイメーカー〇〇の社員10数名が何者かに引っ掻き傷をつけられるという事件が起こりました。

 

また、引っ掻き傷を負った多くの社員が「猫にやられた」と供述しておりますが、

 

車内の防犯カメラには何も映っておらず、専門家曰くなんらかの原因で幻覚が見えたのではないかとのことです。

 

続いてはお天気コーナーです。

♫〜

レオ

…。

レオ

レオ

ん?

白猫

にゃー…。

レオ

初めまして。

レオ

だれを待ってるの?

レオ

君は…僕に協力してくれた猫じゃないよね?

レオ

雨降ってるし、屋根あるところに入ったほうがいいよ。

白猫

にゃー、にゃーっ。

レオの足の上に 白猫がよじ登る。

レオ

レオ

こら、危ないよ。

レオが両手で猫を抱き上げる。

白猫

にゃにゃっ。

レオ

?…

レオ

あれ?この猫…。

レオ

レオ

!…

猫と目があった瞬間、 稲妻のように記憶が 脳内でフラッシュバックして

僕は思わず猫の目を凝視した。

レオ

…。

レオ

レオ

ご主人様…?

元猫だから、僕にはすぐ分かった。

手の平の白猫にはあの人と 同じ穏やかな光があった。

レオ

ご主人様…っ!

レオ

ご主人様!

白猫

にゃー!

レオ

レオ

あれ…伝わってない?

白猫

にゃ、にゃっ。

レオ

レオ

…僕のこと、忘れちゃったの?

白猫

にゃー。

レオ

…そっか。

レオ

悲しいな…けど、まぁいっか。

レオ

また新しく作ればいいんだから。

白猫

にゃ。

レオ

行こう、ご主人様。

それからしばらくして、

あったかい暖房の効いた部屋。

美味しいご飯と、 ふわふわのおふとん。

そして…。

レオ

すみれ、おいで。

大好きな私のご主人様。

すみれ

にゃー。

足に擦り寄る私をご主人様のレオは 優しく抱き上げ、こたつに入る。

レオ

もうすっかり冬だね〜。

こたつとご主人様のぬくもりに 私はうっとりと目を細めた。

レオ

よしよし。

私を撫でるご主人様の手は

とっても優しい。

すぐに眠ってしまいそう。

レオ

ねぇ、すみれ。

すみれ

にゃ?

どうしたの?ご主人様。

レオ

…。

レオ

…僕、すっごく幸せだよ。

レオ

僕がずっとすみれを守ってあげるからね。

すみれ

すみれ

にゃー。

私もだよ、ご主人様。

私ね、

ご主人様といると とっても落ち着くんだ。

まるでずっと長い間 一緒にいたみたいに、

ご主人様と一緒ならどこでも 幸せになれそうな気がするの。

すみれ

にゃにゃ。

ねぇ、ご主人様。

ずっと一緒にいようね。

この作品はいかがでしたか?

213

コメント

14

ユーザー

もう、物凄く…好きです…!! すみれちゃんとレオくんが、お互いを大切に想い合っているのが凄く伝わってきて、感動しました…!!優しい世界ですね。 すみれちゃんを苦しめた会社への復讐をするレオくん、とてもかっこよかったです…✨ 今度こそは、絶対幸せになってほしいです…!!! そして、アイコンの猫!!凄く可愛いですね💕 最高でした!!!!!

ユーザー

え、もうトゥンクしました……… レオくんがすみれちゃんをどれだけ大切にしていたかが よく分かります…… そして、すみれちゃんもレオくんを放って行くようなことはせず、ちゃんと次の飼い主さんを用意している、というところにも ご主人としての責任を感じているのが分かります…(;;) すみれちゃんが第2の人生を楽しく幸せに送れることを願っています…!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚