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第1話 - あ

2023年09月09日

#恋愛

結城　真矢

チナツ

ちょっとコハル、いつになったら出ていくの？

チナツ

もう、その家は私が暮らす事に決まったんだから、

チナツ

荷物をまとめて、とっとと出て行ってよ。

コハル

そんなに急かさないでよ。

コハル

子供の転校手続きもまだ終わっていないし、

コハル

10年以上も暮らした家なんだから

コハル

荷物もたくさん残っているのよ？簡単に出ていけるワケないでしょ。

チナツ

言い訳ばっかりしちゃってさ。

チナツ

アンタがアキオさんに未練たっぷりなのは、ミエミエなのよね。

コハル

そんな事はないわ。

コハル

ちゃんと、離婚届けにもサインしたのよ。

チナツ

フン、どうだか。

チナツ

アキオさんは、私と再婚するためにアンタと別れたんだからね。

チナツ

アンタは男に捨てられたの！

チナツ

誰にも愛されてないって、自覚するのが怖いんでしょww

コハル

ひどい言い方ね。

チナツ

本当の事でしょ？

チナツ

アンタのいい所は、実家がお金持ちってコトだけだもんね。

チナツ

アキオさんも、アンタがお金を持ってなかったら

チナツ

最初から結婚なんかしなかったって言ってたわよ。

チナツ

子供も、顔がコハルにそっくりでブサイクだって言ってたし。

コハル

夫までそんな事を言ってたの。

コハル

しかも息子のフユトの事までそんな風に。

コハル

フユトはブサイクなんかじゃないわよ。

コハル

勉強だって先生にほめられるくらい、良く出来るんだから。

チナツ

あ～、はいはい。

チナツ

親のひいき目ってコトよね。

チナツ

現実が見えてなくて可哀そうww

コハル

私のことならともかく、息子を侮辱すると許さないわよ。

チナツ

へー。アンタになにが出来るの？

チナツ

世間知らずの専業主婦のクセにさ。

チナツ

私は優秀なキャリアウーマンだからさ、

チナツ

アンタの夫もあっさり略奪できたし

チナツ

仕事も、今度から社長夫人としてアキオさんを支えていくのよ♪

コハル

社長夫人？

チナツ

そうよ！だってアキオさんは社長でしょう。

コハル

まあ、今はね。

コハル

でも言っておくけど、会長は私の父よ。

コハル

彼が社長になれたのは、私と結婚したからだけど。

チナツ

だから何？

チナツ

アキオさんが会社に必要な人だって事は明白でしょ。

コハル

それはどうかな…。

チナツ

アンタ、悔しいからって私たちを脅そうとしてるでしょww

チナツ

でも、アンタなんて全然怖くないわ！

チナツ

彼も、そのうち支店も増やして会社を大きくしていくんだって

チナツ

張り切っていたわよ。

コハル

そう…。

チナツ

アンタには、慰謝料と養育費は一括で払ってやったんだってね。

コハル

一応、受け取ったわ。

コハル

だから離婚届にサインしたんだけど。

チナツ

だったら、もうガタガタ言わないで、

チナツ

だまってその家を明け渡しなさいよね！

コハル

言われなくても出て行くわ。

コハル

あと1週間以内にね。

チナツ

そう、ありがとう♪

チナツ

やっと、その豪邸が私のモノになるのね～。

チナツ

セレブ生活が楽しみだわ。

コハル

あっそう。

チナツ

フフ、負け惜しみのひとつくらい、聞いてあげてもいいわよ？

コハル

言わないわよ、そんな下らないコト。

チナツ

あら、そう。強がっちゃってさ。

チナツ

そうよね、アンタは昔から気が弱くて、ケンカも出来ない腰抜けだもんね！

チナツ

そんなアンタには社会の底辺がお似合いよww

コハル

言いたい事はそれだけ？

コハル

用が済んだなら、もう切るわよ

コハル

引っ越しで忙しいんだから！

チナツ

はいはーい。それじゃ、お引越しがんばってね～。

～3日後～

アキオ

おい、コハル。

アキオ

リビングのテレビがなくなってるぞ。

アキオ

それに電子レンジとか、AIロボットも無くなってる！

アキオ

おまけに冷蔵庫や食器棚まで…。

アキオ

いったい何のつもりだ？高額な家具や家電ばかり持ち出しやがって！

アキオ

慰謝料をくれてやったんだから、家のモノは置いて行けよ。

コハル

何を言っているの。

コハル

今あなたがいったモノは、全部私が購入したものよ。

コハル

離婚するときに話し合ったでしょう？

コハル

「家具や家電は、購入したほうが引き取るってコトで。」

アキオ

そりゃそうだけど、必要なモノが無くなったら、

アキオ

俺とチナツが困るだろうが！

アキオ

お前はその程度の事も想像出来ないのかよ！

アキオ

本当に、最後の最後まで、お前は使えない奴だな！

コハル

あなたも、最後の最後までモラハラね。

コハル

離婚した時の約束も、全然理解してくれてなかったようだし。

アキオ

お前が都合よく解釈してただけだろう。

アキオ

10年も使ってきた家電まで持っていくとは思わなかったぞ。

コハル

あなたが、自分に都合の悪いことを忘れているだけでしょ。

アキオ

あれ？おまけにリビングのLED電器がないぞ！

アキオ

お前、LED電器まで持って行ったのか？

アキオ

いやがらせか？

コハル

そんな訳ないでしょ。必要だから持って行ったのよ。

アキオ

なんだって？電器くらい置いて行けよ。

コハル

それくらい買えるでしょ？

コハル

あなたは社長なんだから。

アキオ

ふざけるな！

アキオ

不便すぎてかなわないよ。

アキオ

持ち出したものはこっちに返せ！

コハル

そんな事を言われてもね。

コハル

もう新居に運んじゃったし、私とフユトも家電が必要だからね。

コハル

大事な一人息子がミジメな思いをしてもいいの？

アキオ

そんなの、お前が実家に援助してもらえばいいだろうが。

アキオ

フユトだって、養育費を払ってやったんだから。

アキオ

これ以上文句を言われる筋合いはない！

コハル

お金を払えば良いって問題じゃないと思うわ。

コハル

あなたの浮気が原因で離婚になったのよ。

コハル

せめて一人息子が生活に困らないように、最大限配慮するのが

コハル

生き別れた親の、思いやりってものじゃないの？

アキオ

なんだんだ、お前は。

アキオ

フユトのことを話に持ち出せば、俺が黙ると思ってるんだろ。

アキオ

俺が浮気したのだって、お前が妻としての魅力が無いからだよ！

コハル

え？

コハル

浮気が私のせい？なに言ってんの。

コハル

アナタが下半身を制御出来なかったせいでしょ？

コハル

私に向かって魅力がないとか言っちゃって、あなたこそ大丈夫？

アキオ

あ？なにがだよ。

アキオ

今さらお前に気を使う必要もないだろ。もう別れたんだし。

コハル

そうね。でも家電はこの際だから新しいモノを買ったらどう？

コハル

社長なんだから。

コハル

それに、会社の会長が私の父だという事も忘れないほうがいいわ。

アキオ

チっ！もういいよ。

アキオ

お前らには二度と関わらねえよ！

コハル

私も、そのほうがいいわ。

コハル

どうぞお元気で。

～1年後～

アキオ

コハル、いったいお前はどういうつもりだ！

コハル

いきなり何かしら？

コハル

もう二度と関わらないって言ったわよね？

コハル

なのに、なんで自分から連絡をよこすの？

アキオ

お前が余計な事をしたからだろう！

アキオ

昨日、いきなり社長を解任するって言われたんだよ。

アキオ

役員会議でな！

コハル

まあ、やっと解任ね。

コハル

1年も待ってあげたのよ。

アキオ

え？どういう事だ。

コハル

だって、会長は私の父よ？

コハル

娘の元夫が、ずっと社長でいられるワケがないでしょう。

コハル

いきなり社長を解任したら、周りに迷惑が掛かるから

コハル

解任する時期を見はからっていただけよ！

アキオ

お前、ふざけんな！

アキオ

父親とグルになって俺をハメやがって。

アキオ

会社を私物化していいと思ってんのか！

コハル

私物化しているのはアナタたちのほうでしょう？

コハル

私も父も、知っているんだからね。

アキオ

へ？

アキオ

知っているって、一体何を…。

コハル

とぼけないでくれる？

コハル

あなた、社長という立場を利用して、

コハル

若い女性社員を無理やり誘ったり、

コハル

〇クハラを繰り返して、みんなから嫌われているのに

コハル

自分で気づいていなかったの？

アキオ

な、何のことを言ってるんだ。

アキオ

さっぱり身に覚えが無いんだが…。

コハル

女性への嫌がらせだけじゃないわ。

コハル

男性の部下に対しても、ひどい〇ワハラ行為をしていたそうね。

コハル

会長である父のもとに、陳情書が届いたそうよ。

コハル

父もビックリして、調査を進めていたの。

アキオ

なんだと…。

コハル

父はすごく呆れていたわ。

コハル

だって、私と結婚していた頃からずっと

コハル

部下たちに〇ラスメント行為をしていたって事が分かったから…！

アキオ

そんなバカな、でっち上げだ！

アキオ

俺は何も悪くない。

コハル

いいえ、証拠はたくさん揃っているわ。

コハル

あなただけじゃない。

コハル

チナツも、ずいぶんと部下をイジめていたようだしね。

コハル

なんでチナツなんかを会社に入れたのよ。

コハル

父の会社がメチャクチャにされちゃうじゃない。

アキオ

そりゃ、チナツは仕事が出来ると思ったから…。

コハル

冗談じゃないわよ。チナツは仕事が出来るどころか、

コハル

仕事をまったくしないで、部下に押し付けてばかりだったと

コハル

調査報告書に書いてあったわ。

アキオ

調査報告書？なんでお前がそんなモノを見られるんだ！

アキオ

だってお前は、会社とはなんの関係もないだろう！

コハル

そうね、たしかに社員ではないけど。

コハル

調査報告書をまとめたのは私だからね。

アキオ

へ？

アキオ

どういう事…？

コハル

実は私、調査会社の社長になったの♪

アキオ

はあ？ウソだろう。

コハル

ウソじゃないわ。

コハル

父に正式に依頼されて、社内を色々調べさせてもらったわ。

コハル

あなたの部下たちも、よく協力してくれたわよ。

コハル

「はやく社長とチナツさんをクビにしてください

って」

コハル

みなさん必死で情報を提供してくれたわよ…。

アキオ

なんだって、じゃあ、俺とチナツは皆から裏切られたって事かよ。

コハル

それは違うわね！

コハル

あなたが、部下や私たちを大事にしてくれていれば

コハル

こんな事にはならなかったのよ。

アキオ

なんだって。

アキオ

ただの主婦だったお前が、ここまでの事をするなんて…！

コハル

本当に私を軽く見てたのね。

コハル

私、起業する為に、結婚してた頃から一生懸命勉強してたんだから。

コハル

あなたはチナツに夢中だったから、私の様子に気付いてなかったもんね。

アキオ

お前は、無能だと思ってた…。

コハル

どうせ何も出来ない専業主婦だと思ってたんでしょう？

コハル

無能な私にしてやられた気分はどう？

アキオ

…お前、こんな事してタダで済むと思うなよ。

コハル

そうね、タダでは引き下がらないわ。

アキオ

え？

コハル

その会社、今度から私が引き受けますから。

アキオ

はあ？

コハル

つまり私が社長になるのよ。

コハル

私の調査会社も合併させるカタチでね。

アキオ

う、うそだろう。

コハル

あ、それから、今あなた達が住んでる家だけど。

コハル

それも名義は私の父なんだから、ちゃんと返してね。

コハル

今までは、お情けで住ませてあげてたけど、

コハル

もうあなた達が住んでいる理由がなくなるわけだしね。

アキオ

そんな。

アキオ

会社も奪われて、家も追い出されたら、行くところが無くなっちまうよ。

コハル

少しは貯金くらいあるでしょう。

アキオ

ないよ！そんなもの。

アキオ

全部遊ぶためにつかっちゃった…。

コハル

あら残念。でもそれは自分が悪いんだよねぇ。

コハル

まあ、アルバイトでもやって稼いだら？

コハル

私たちには関係ないけどね。

アキオ

そんな！おまえ、冷たすぎるだろ。

アキオ

なあ、このままじゃ路頭に迷っちまうよ。助けてくれよ。

コハル

知りませんよ。

コハル

チナツと二人で頑張れば？

コハル

もう、私やフユトに関わらないでちょうだいね。さようなら。

アキオ

まって、コハル。助けてくれ。

アキオ

貧乏はいやだ～。。。

～後日談～

コハル

それから数週間後、アキオは正式に社長の座を解任され、退職していきました。

コハル

会社の新社長には、宣言どおり私が就任しました。

コハル

結婚前も働いていた会社なので、古株の役員達は暖かく迎え入れてくれましたよ。

コハル

チナツは、もちろんアキオと一緒に辞めさせました。

コハル

二人の〇ラスメント行為は本当にヒドイものだったので、

コハル

社内では誰も引き止める人はいませんでした。

コハル

家も、すぐ明け渡してもらいましたよ。

コハル

私は心機一転、フユトとともに昔住んでいた家に戻り、

コハル

二人で静かな暮らしを取り戻すことが出来たのです。

コハル

これからは社長として、母として

コハル

たくましく生きて行こうと思います！

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結城　真矢

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