恋は奇跡

たぶん、一生。

恋なんてあたしには、無理。

そう思ってた。

だって、桜の花びらがつかまらないから。

幸せは、不器用な私の手からいつだって逃げてゆくから。

花びらの伝説、知ってる？

それは、恋の奇跡。

舞い散る花びらを、地面に着く前に掴み取ることができたら。

好きな人との恋が叶って、幸せになれるんだって。

あたしは、廣田ほのか。

高校に入ったばかりの、新1年生。

あたしは、ひとりごとが多い。

一生懸命になるとつい、頭の中にあることが口をついて出ちゃうんだよね。

ここは、あたしの高校の正門に続いてる道。

今は登校前の早朝だ。

うちの街で1番の桜スポットだから、ここが1番花びらを掴むチャンスが多い。

高校の近くだから、ひとりで手を振り回してる姿を人に見られると恥ずかしい。

だから、早起きして2時間前に学校に来たんだ。

今ならまだ、生徒は登校していない。

今日こそは、掴んでみせる。

そろそろマジで恋を叶えたいんです。神様おねがい。

あたしは、必死だった。

春のうちに。必ず、春のうちに奇跡を掴まなければ。

今は、桜の花びらが絶賛舞い散り中。桜の開花時期はもう時期終わってしまう。

完全に葉桜になってしまう前に、ぜひとも。ぜひとも！！

花びらをこの手に掴みたいのだっ

そろそろ1時間くらい、あたしは格闘してる。成果はゼロ。ほとんど涙目。

なんでこんなに難しいんだろう。

毎年チャレンジしているのに、1枚もゲットできたことがないんだ。

唐突に呆れたような声が降ってきた。

バカ？バカって言われた？

振り向くと、あたしのすぐ後ろにやたら背の高い人が立っていた。

うちの高校の制服だ。かなり着崩してる。

髪も茶髪。長めでくしゃっとしてる。ポケットに両手突っ込んで、相当態度悪い。

あたしと同じ新入生じゃなさそう。先輩？

で、でもどう見ても、不良みたいなんですけど……（怖）

綺麗な……顔。つまりイケメン。

カッコイイかもしれない。目つき悪いけど。

今、この人がバカって言ったの？聞き間違い？

あたし、不良に目を付けられちゃったんでしょーか。

イケメンは無言だ。

冷たい表情は氷のようだ。冷え切った心が表れてる。（と思う）

かなり怖い。

別にあたしは、この人に興味ないし。（怖いだけで）

この人もあたしに興味ない筈だし。

聞き間違えたんだろう、たぶん、うん。

あたしは無言でイケメンに背を向けた。

時間がない。桜のシーズンが終わってしまう。

こんな人の相手をしてる場合じゃない。

今年こそ花びらを……恋の奇跡を、この手で掴みたい！！

あたしはまた花びらを追いかけて、必死で手を振り回した。

沢山降ってるのに、1枚も取れない。なんでこんなに難しいんだろう。みんな掴んでるように見えるのに。

いきなり後ろからガシッとあたしの方が掴まれた。

ドキッとする。全身がこわばる。

因縁つけられてる？まさか、殴られる……？？

イケメンがあたしの方を押しのけて前に出た。

何をするの？と思ってる隙に、イケメンが左手を宙にあげた。

今、何した？

目にも止まらぬ早業とはこのこと。

彼は振り返り、あたしの目の前に手のひらを伸ばした。

そして、手を開いた。

この人超人？

あっという間に掴んじゃった。

すごい。奇跡だ。

私にはいつまでも掴めないの？

花びらを、恋を……

イケメンが開いた手をそっと握りしめた。

そのままくるっとあたしに背を向けて、歩き出す。

行っちゃう！！

左手は無造作に握ったまま、体の横で揺れている。

あたしは後ろから必死で叫んだ。

イケメンが立ち止まった。あたしの声、聞こえてる？

図々しいかな？

で、でもどうせこの人自分が欲しくて掴んだんじゃないし、あたしを思いっきりバカにしてくれちゃったわけだし。

その花びらくれたっていいんじゃない？

あたしは震える手をぎゅっと握った。

一気に言った。

イケメンはゆっくり振り返った。

低い声。冷たい目であたしを見てる。

あたしは黙ってしまった。

今言わなきゃ言わないの？

でも、今言わないといつまでも花びらが掴めない気がする。

好きな人に……会えない気が、する。

ついに言ってしまった。

辺りがしん、と静み返る。

イケメンがあたしの方に歩き出した。

あたしの顎が不意に掴まれて、顔を上向きにさせられる。

イケメンとの距離、5cmくらい。

ま、まさかキスされる？

いや、そんなわけない！あたし色気ないし！！

今回はここで終わりです！

ありがとうございました！

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次はハート100個で続き描きます！

ありがとうございました！！！