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花梨
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…(´;ω;`)この子助けたい(アホか)
「兄が死んだ爆発を、この目で見てるんです」
空気が静まり返る。
高木刑事が、気まずそうに視線を落とした。蘭も園子も、何を言えばいいか分からない顔をしている。
そんな中。
佐藤刑事が静かに口を開いた。
佐藤刑事
深緒の肩が、ほんの少し揺れる。
佐藤刑事
責めるでも、興味本位でもない。ただ、確認するみたいな声だった。
そこからは、はっきりとは覚えていない。お墓と反対方向の電車へ飛び乗った。
電話の向こうに問いかけても、反応は無い。心臓がうるさい。 嫌だ。 嫌だ。 嫌だ。
3年前の11月7日。
研二の命日。 深緒は、花を抱えて駅へ向かっていた。墓参りへ行く途中。
その時スマホが震えた。
『お兄ちゃん』
画面に表示された名前を見て、少しだけ顔が綻んだ。通話を取る。
松田深緒
松田深緒
雑音が聞こえた。ざわざわした空気。遠くで怒鳴る声。無線。 一瞬で、何かがおかしいと思った。
松田深緒
松田陣平
聞きなれた声は、少しだけ掠れていた。
周囲がうるさい。深緒は眉を寄せた。
松田深緒
松田陣平
一瞬。意味が分からなかった。
松田深緒
松田陣平
心臓が、どくりと音を立てる。
松田深緒
嫌な予感がした。背筋を、冷たいものが走る。
松田深緒
陣平は答えない。その沈黙が、何より怖かった。
松田深緒
松田陣平
松田深緒
息が浅くなる。
松田深緒
ぴたり、と。電話の向こうが静かになった。
松田深緒
返事がない。
松田深緒
松田陣平
松田深緒
数秒後。電話越しに、小さく息を吐く音。
それから、観念したように陣平が場所を告げた。
現地につくと。目に入ったのは、 赤色灯。 規制線。 騒ぐ警察官。 遠くに見える観覧車。
松田深緒
警察官
松田深緒
警察官
警察官
押し返される。その時。
電話越しに、規則的な電子音が耳に届いた。
ピッ、ピッ、ピッ…
松田深緒
爆弾のタイマーだ。
松田深緒
松田陣平
松田陣平
松田深緒
血の気が引いた。
松田深緒
松田深緒
松田陣平
陣平は答えない。
ピッ、ピッ、ピッ…と、電子音が代わりに答えた。
しばらくして、
松田陣平
低い声が聞こえた。
松田陣平
松田深緒
電話越しに、陣平が舌打ちした。
松田陣平
松田深緒
松田陣平
初めて聞くくらい、強い声だった。 深緒は息を呑む。
松田深緒
松田陣平
松田陣平
松田陣平
松田深緒
来るなと言われても、深緒は走るのをやめなかった。
松田深緒
規制線を振り切る。 警察官の怒鳴り声。 全部無視して走った。 荒い息。 転びそうになりながら、必死に前を見る。 観覧車が近づいてきた。
その瞬間。 さっきとは打って変わって、弱々しい声が電話から聞こえてきた。
松田陣平
松田陣平
松田深緒
松田陣平
ピーー
バァァァーン!!!
爆音が、世界を引き裂いた。熱風が叩きつけられる。
松田深緒
衝撃で身体がよろめく。耳が、キーンと鳴っていた。
燃え上がる炎。黒煙。崩れていく観覧車。
松田深緒
理解した瞬間。全身から血の気が引いた。
松田深緒
嘘だ…
松田深緒
警察官
腕を掴まれる。
松田深緒
全力で振り払った。燃えている。観覧車が。
松田深緒
喉が裂ける。息ができない。
違う。違う。お兄ちゃんが、あんなところにいるはずない。
きっともう降りてる。きっと電話が切れただけ。きっと、どこかで笑ってる。
そう思わないと、立っていられなかった。
視界が滲む。警察官達が一斉に走っていく。
警察官
警察官
怒号が飛び交う。でも、深緒には関係なかった。 そんなこと、どうでもよかった。
松田深緒
足がもつれる。それでも、観覧車へ向かおうとする。
その時。目の前から、1人の刑事が走ってきた。
目暮警部
松田深緒
深緒は、叫ぶように聞いた。
松田深緒
目暮警部
松田深緒
涙で、うまく息ができない。
目暮警部
目暮警部
泣き叫ぶ深緒が、松田陣平と重なる。
松田深緒
松田深緒
目暮の顔が、苦しそうに歪む。その顔だけで、全部分かった。
目暮警部
世界が止まる。
松田深緒
目暮警部
目暮警部
目暮警部
その瞬間。深緒の中で、何かが切れた。
松田深緒
震える声。
松田深緒
目暮の胸ぐらを掴む。周囲がざわついた。
警察官
松田深緒
涙が止まらない。
松田深緒
目暮警部
松田深緒
目暮警部
目暮警部
目暮警部
松田深緒
掴んだ手が震える。目暮は、何も言えなかった。
松田深緒
声が掠れる。
松田深緒
松田深緒
目暮警部
燃え上がる観覧車。黒煙。赤色灯。サイレン。全部がぐちゃぐちゃに混ざる。 その中心で。深緒だけが、壊れたみたいに泣いていた。